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He is コイビト??
①
しおりを挟むジャスティンは、大通りの中にある駐車場に車を停めて、木の実の帰りを待った。19時になったら車から出て店の近くで待っていようと思っていたら、木の実は19時ピッタリに店から出て来た。ジャスティンを捜してキョロキョロしている。
「木の実!」
ジャスティンがそう呼ぶと、木の実は最高の笑顔でジャスティンの元へ走って来る。
「どうしたの?
何かいい事があった?」
ジャスティンがそう聞くと、木の実はピョンピョン跳ねながらうんうん頷いている。
「ジャスティン、今日はもう不動産屋に行かなくてよくなった」
ジャスティンは目を細めながら、木の実の腕を掴んで落ち着かせる。
「なんで?」
木の実はジャスティンの腕を組んで体をピタリと付けてくる。
「ジャスティンは、きっと、私にとって、幸せを運んで来る王子様」
「なんだよ、それ」
「住む所が決まったの~~
モナンジュの奥様の実家のマンションに住まわせてくれるって。
家賃もめちゃくちゃ安くしてくれて、あ、でも、奥様のご両親とお友達になることが条件なんだけど、そんなの条件出さなくても私はすぐにお友達になるのにね。
あ~、嬉しい~~
ジャスティン、本当にありがとう~~」
ジャスティンはあまり喜べなかった。
「で、引っ越しはいつ?」
木の実はニコニコ顔で、ジャスティンの腕をまた組んでくる。
「今度の火曜日にすることになった。
その日は私の休日だし、そのマンションはいつでも入れるんだって」
「火曜日…?」
ジャスティンは目の前が真っ暗になった。
火曜日に木の実は俺の家から居なくなる…?
「ジャスティン、大丈夫?」
木の実は元気がないジャスティンが気になってしょうがない。
引っ越し先を勝手に決めたのを怒っているのかな…
今日は、不動産屋に一緒に行く予定だったし。
「大丈夫だよ…
それより、これからどうしようか…?」
ジャスティンはそう答えるけれど、明らかに声が小さいし目が伏し目がちだった。
「ジャスティンがよかったら、その引っ越し先まで行きたいな。
中に入る事はできないけど、外から見てみたい。
場所もどんな所か把握していたいし」
ジャスティンは切ない顔でふうっとため息をついた。
やっぱり、私が勝手に引っ越し先を決めた事を怒ってるんだ。
「ジャスティン、ごめんなさい…
今日、一緒に不動産屋に行こうって約束してたのに、勝手に私が決めてきたから、それで怒ってるんでしょう?
でも、本当にいい話で、これ以上の物件はないって思ったの…」
「違うよ…
全然、そんなんじゃないんだ。
うん、本当にいい話だと思う、だから、今からドライブがてらそこに行こう。
こっちこそごめんな、本当にそんなんじゃないんだ…」
木の実はジャスティンが元気がないと自分まで落ち込んでしまう。
いつも穏やかで温厚で、でもちょっとだけ意地悪なジャスティンが、ここ数日間、空気のように木の実の近くにいてくれた事を改めて考えた。そして、何となくジャスティンの感情が自分にリンクする時がある。そんな不思議なつながりを、木の実は胸の奥で感じ取っていた。
ジャスティンは運転しながら、自分の情けない状況にうんざりしていた。
木の実は引っ越し先を探していて、決まったらそこに引っ越しをする。
そういう事情は最初から分かっているはずなのに、何でこんなに心が落ち込むんだ…
火曜日って、もうすぐじゃないか…
あ~、マジでヤバい…
心に大きな重しがのったように何だか息苦しくてたまらない。
「ほら、着いたよ。
住所でいったらこのマンションかな」
ジャスティンがそう言う間もなく、木の実は車から飛び出した。木の実が興奮するのも分かる。そのマンションは建物自体はそんなに大きくはないけれど、濃い茶色の外観は正面玄関から左側にかけて深い緑色のツタが絡まっていてお洒落な建物だった。
「す、素敵…
あのね、間取りも結構広くて、だから、ジャスティンが遊びに来ても全然大丈夫なんだ」
ジャスティンは木の実のその言葉で息ができなくなる。
「俺が遊びに来てもいいの…?」
「え…?
来てくれないの…?」
ジャスティンはハッとした。
そうだよな…
俺と木の実はまだ何も始まっていないんだ…
始めるために、俺がしなきゃならない事がある。
俺は木の実と一緒にいたい。
でも、そうするには、まずはおつき合いを始めないといけないのか…
おつき合いを始めるには…?
そうか、今夜、俺は木の実に告白するぞ。
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