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He is ホモサマ??

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 ジャスティンは、シュウを連れてエレベーターに乗った。木の実は見世物じゃないけれど、でも、シュウの条件を飲まないわけにはいかない。

「シュウ、見るだけだぞ。
 多分、今、シャンパンを飲みすぎて酔って寝てるんだ。
 寝顔を見たら、即、帰ってほしい、頼む…」

 シュウは微笑むだけで返事はしなかった。
 自分の嫉妬のような気持ちをジャスティンに悟られたくはない、でも、ゲイだったはずの男を数日で我が物ににした魔女のようなその女には、抗えないほどの興味があった。

 ジャスティンは玄関に着くと、シュウに静かにしろと目で合図する。リビングからテレビの音が響いてくる。

 頼むから熟睡しててくれよ…

 ジャスティンがリビングに入ると、ソファに寝ているはずの木の実の姿がない。

「あれ?」

 ジャスティンの後ろを歩いていたシュウもリビングを見回した。ジャスティンはシュウの存在も忘れ、奥にあるゲストルームを覗いて見る。

「いない…」

 シュウは何も言わずに、狼狽するジャスティンを見ていた。
 そんなにその女がこの場所に居ないだけで、人生の終わりのような顔になるのか?
 家の中をウロウロ捜し回るジャスティンの事は無視をして、シュウはリビングにあるベランダから東京の夜景を見ようと外に出た。
 そして、シュウは腰が抜けるほど驚いてしまう。
 そのジャスティンを虜にしている女の子は、53階にある冷たい強い風が吹きすさぶベランダの長細いスペースで、毛布にくるまって寝ていたから。

「ジャス、ジャス」

 シュウは中に居るジャスティンを呼んだ。
 ジャスティンはシュウが驚いている様子に嫌な予感がして、心臓があり得ないほどに高鳴り出す。

「その子、ここにいる。
 多分、寝てる。
 死んではないと思うけど…」

 ジャスティンはシュウの口から出た死ぬという言葉だけに反応して、もう目の前が真っ暗になっていた。ヨロヨロとベランダまでたどり着くと、人工芝生を少しだけ敷き詰めているベランダの隅に木の実は倒れていた。

「い、息、してるよな…?」

 シュウは完全に腑抜け野郎に成り下がったジャスティンを見ながら、その女の子の肩をトントンと叩く。

「そんな所で寝たら風邪引くよ」

 シュウはそう言って、今度は木の実のほっぺを軽く叩いた。すると、恐ろしいほどの勢いで木の実の目が開いた。
シュウを見ているのか、真上のベランダの天井を見ているのか、全く焦点が合っていない。
 シュウはその女の子の綺麗な瞳をずっと見ていた。素顔に近い顔なのに、肌が透き通るほどに白い。3秒ほど目を見開いた木の実は、恍惚の表情を浮かべまた目を閉じた。

「ねえ、起きなきゃヤバいと思うよ」

 その言葉にもう一度目を開けた木の実は、知らない男がいる事に初めて気づいた。

「あ、あの…
 あなたは、どなた様ですか…?」

 シュウは可笑しくて、後ろに立っているジャスティンを見てからこう言った。

「僕?
 僕は、ジャスティンの彼氏だよ」

 木の実の思考回路はショートしていた。初めて味わった苺入りの美味しいシャンパンを飲み過ぎた事と、ジャスティンからの甘いキスで、物事を考える気力が何も残っていない。
 でも、今、目の前にいる知らない男は、確実にイケメン男子だ。色黒の顔に短髪の黒髪、目元は切れ長のスッキリとした瞳。何の匂いか分からないけれど、凄くいい匂いがする。
 男の人がつける香水なのかな…?
 木の実は朦朧とした頭の中で、そんなどうでもいい事を真剣に考えていた。
 すると、誰かが木の実の体をスッと持ち上げた。大好きな柔らかい毛布もしかっり木の実の体に巻き付けたまま。

「あ、ジャスティン…」

木の実はジャスティンの首元に顔をうずめると、安らぎと落ち着きに満たされてまた睡魔が襲ってくる。

「な、なんか、お客さまみたい…
 カレシさんって言う人が、ここに…来てる……」

 木の実は閉じてしまう瞼を必死に開けながら、ジャスティンにそう報告した。

「誰も来てないよ…
 木の実は夢を見てるんだ。
 ベッドに連れて行くから、もうそこで寝た方がいい」

 ジャスティンはベランダに立っているシュウを睨みつけると、木の実を抱いてゲストルームに向かった。

 シュウはそんなジャスティンを切ない気持ちで見ていた。
 女の子がイケイケタイイプなら、ジャスティンの今の気持ちは興味本位の一過性のものだと思っていた。でも、あれは、女の子の全てに惚れている。
 俺を睨むジャスの目は、完全に雄の目だ。
 自分の物だという絶対的な印をつけた、捕食動物と同じ目をしていたから。


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