19 / 48
He is ホモサマ??
④
しおりを挟むジャスティンは頭を抱えながらエレベーターに乗った。シュウがここに来るなんて想定外だ。基本、シュウとは外でしか会わない。
でも、このマンションに2回ほど泊めた事はある。その時はお互い飲みすぎて、ここへ帰って来るのがやっとだったから。男同士のカップルってそんなもんだと、ジャスティンは思っていた。必要以上にベタベタしない。
特にシュウは大人しくクールな性格だったため、ジャスティンはそこに惹かれていた。
「よ、どうした? こんな時間に」
この男同士のカップルは、見た目はシュウがリード役に見えるだろう。
金髪で綺麗な顔のジャスティンは一見可愛らしい性格に見られがちだけれど、中身は完全に俺様男子だった。そして、シュウももちろん性格は男だ。でも、クールさの内側にはナイーブな要素も持っている。
エントランスのソファに座りスマホをいじっていたシュウは、ジャスティンの声を聞いて立ち上がった。
「どうしたはこっちだよ。映司と謙人の話じゃ、女の子にのぼせ上がってるそうじゃないか」
ジャスティンは、うんざりした顔をする。
「今日、店に映司と謙人が来て、俺を見て、何だかにやつくからさ…
こっちが聞かなくても、ベラベラ喋ってくれたよ」
あ、もしかして、映司はあの交差点で俺が木の実の元へ走って行くのを見てたのかもしれない。
そりゃ、トップニュースだわ…
「で? それって本当の話なのか…?」
ジャスティンもシュウの隣に腰かけた。もう夜中の1時を過ぎている。エントランスには、もちろん誰もいない。
「シュウ、本当にマジでごめん…
その映司達の話なんだけど、多分、ほとんど合ってる…」
シュウは動揺を見せずに静かに聞いた。
「俺自身、今、ものすごく戸惑ってて、でも、はっきり言えるのは、その女の子に夢中になってる。
ヤバいよな…
しばらく、俺達のこの付き合いは保留にしてもらいたいんだ。
今の状態で何かを決めるのは早急だと思うし、俺自身の中での変化が一過性のものなのか、元々あったものなのか、単純な事だけど一番にそれを見極めたい」
「お前、今まで、女の子を抱いた事あるのか?」
ジャスティンは鼻で笑った。
「それが実はあるんだ。高校生の時だけどね。でも、その時に俺は女の子には興味を持てないって思った」
シュウはジャスティンの目をジッと見ていた。
俺の知っているジャスティンは絶対に嘘をつく男じゃない。
でも、今のジャスティンは、シュウも知らない不思議な表情を浮かべていた。
「分かった…
でも、条件がある。
その女の子を俺にも紹介してほしい。
今、家にいるんだろ?
俺にも見せてよ、そのジャスティンをメロメロにした女の子をさ」
ジャスティンは、しばらく返事ができなかった。シュウは信頼のおける最高にいい奴だ。映司や謙人に木の実を紹介するのとは、全然話が違う。
でも、ジャスティンの胸の奥はザワザワと騒ぎ始め、それもこれも何もかも初めての経験でどう対処していいのか分からない。
「嫌だって言ったら?」
「何でだよ」
シュウはそんなジャスティンが可笑しくて、ちょっと笑った。
「ねえ、俺はゲイだぞ。
その女の子がめちゃくちゃ可愛くても、俺はジャスティン以外は愛せない」
ジャスティンは小さくため息をついた。
「俺も三日前までそうだった。
人生何が起こるか分からない事を、身に沁みて感じてる。
シュウだって、そんな時が来るかもしれないだろ?」
「それは今じゃないよ。そんな、俺までその子にメロメロになるなんてあり得ない」
ジャスティンは、それでも胸のざわつきは治まらない。
「そうだよな…
それは分かってるんだけど。
あいつが……
あいつが、シュウに惚れたりしないよな…?」
シュウは目を丸くして、大きな声で笑った。
「ジャスティン、お前ヤバいな。
まるで、恋する乙女な男の子だよ、それじゃ。
俺に惚れるかどうかはそれは何とも言えないけど、でも、その子は俺にはちゃんと紹介する事。いい?
で、その子は俺達の仲は知ってんの?」
ジャスティンは目をグルッと回し肩をすくめた。
「中々な天然な子で、俺的には言ったと思うんだけど、全然分かってない。
だから、知らないと一緒。
シュウ、これも本当に悪いんだけど、しばらくは黙っててほしい」
シュウはその事に関しては、あえて返事はしなかった。
時と場合によりけりでいいんじゃね?
なんて意地悪な事を思いながら。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~
泉南佳那
恋愛
来栖エリカ26歳✖️芹澤宗太27歳
売れないタレントのエリカのもとに
破格のギャラの依頼が……
ちょっと怪しげな黒の高級国産車に乗せられて
ついた先は、巷で話題のニュースポット
サニーヒルズビレッジ!
そこでエリカを待ちうけていたのは
極上イケメン御曹司の副社長。
彼からの依頼はなんと『偽装恋人』!
そして、これから2カ月あまり
サニーヒルズレジデンスの彼の家で
ルームシェアをしてほしいというものだった!
一緒に暮らすうちに、エリカは本気で彼に恋をしてしまい
とうとう苦しい胸の内を告げることに……
***
ラグジュアリーな再開発都市を舞台に繰り広げられる
御曹司と売れないタレントの恋
はたして、その結末は⁉︎
モテ男とデキ女の奥手な恋
松丹子
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。
ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。
要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」
そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる