イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉

文字の大きさ
上 下
18 / 48
He is ホモサマ??

しおりを挟む

「ねえ、木の実の写真撮っていい?
 苺を見てるその感じで」

 木の実は最高にいい気分だった。

「いいですよ~」

 ジャスティンは自分のスマホで写真を撮るなんて今までほとんどなかった。木の実とグラスにピントを合わせたら、もう止まらずに何枚も写真を撮っている。
 木の実は半分酔っているせいか、ニコニコ笑顔が止まらない。

「ねえ、木の実の苺を俺にもちょうだい」

「いいですよ~~」

 木の実はグラスの底にある苺を取り出そうと思ったけれど、フォークもスプーンも何も近くにはない。

「ジャスティン、この苺、どうやって取ればいい?」

 ジャスティンはわざとらしく外国人特有の目をぐるっと回す仕草をして、したり顔で木の実を見つめる。

「木の実の口からちょうだい」

「え?」

 さすがの木の実もほんのり酔ってはいるけれど、この会話の意味は分かった。

「……外国の方は、そういう事って普通にやるの?」

「うん、日常茶飯事、挨拶みたいなもんだよ」

 そんなわけないじゃんと、ジャスティンはちょっと笑った。

 木の実は苺をたどたどしく口に含むと、ジャスティンを見ていつものように肩をすくめて微笑んだ。その木の実の仕草で、ジャスティンの理性と守り続けたセクシャリティが音を立てて崩れていく。
 ジャスティンは大きな苺を頬張る木の実に、優しくそしてむさぼるようなキスをした。

「ジャ、ジャスティン、い、苺…」

 シャンパンと苺の甘い味は、初めて味わう木の実というたった一つの味となって、ジャスティンをまだ見ぬ世界へ連れて行く。


 ジャスティンのとろけるようなキスは、木の実の心を完全に撃ち抜いた。
 木の実の口にある苺は、ずっとジャスティンのキスが止むのを待っている。でも、その苺を口に含んだままのキスが、木の実の中に新しい感情を生み出した。
 この苺をいつまでも口にくわえていたい。
 だって、そうすれば、いつまでもジャスティンがキスを止めないでいてくれるから。
 でも、苺は木の実の想いとは裏腹に口の中で小さくなり、いつの間にか溶けていた。

「あ……」

 キスの途中なのに、木の実はそんな声を出してしまう。

「どうした…?」

「苺が……
なくなっちゃった……」

 ジャスティンは、そんな木の実を優しく抱きしめる。
 もう、絶対に、木の実のこのキスの味を一生忘れるなんてできないと確信しながら。

「ねえ、俺達ってヤバくない?」

「え?」

 木の実はジャスティンの胸に抱かれながら、キスのせいでまた違う意味でほろ酔い気分になっていた。

「いや、俺達じゃないか、俺だな、ヤバいのは…
  ちょっとパニくってる。
 今までの俺は、一体何者だったんだ?
 俺のアイデンティティは、今、上書きされて全く違うものになったも同然だよ」

 木の実の朦朧とする頭にジャスティンの言葉は響かない。ジャスティンの話している言葉の意味は、今の木の実にはさっぱり分からなかった。

 そんな木の実を眺めながら、ジャスティンは小さくため息をつく。
 俺は完全なるバイセクシャルだ。
 いや、今の俺は、バイでもない。
 たった一人の女の子に全てを持っていかれたマヌケなただの男だ。


 どれ位時間が経ったのだろう…
 木の実はジャスティンの肩に寄りかかり、なんとなくウトウトしていた。
 ジャスティンが観ているCS放送のCNNニュースのアナウンサーの声が、心地よく木の実の耳に響いてくる。

 ピルルル、ピルルル…

 どうやらインターホンが鳴っているらしい。木の実はジャスティンの肩から大きなクッションに頭を移動させられた。

「ちょっと待ってて。
 ここで寝て大丈夫だから、もう目を閉じておやすみ…」

 ジャスティンはそう囁くと、前髪を止めるためにつけていたカチューシャを取り、無造作に髪を揺らした。
 木の実は半分夢の中で、そんなカッコいいジャスティンの気配を感じてときめいた。

「シュウか…? マジかよ…
 あ、悪い、今、部屋には来てほしくない。
 俺が下に行くから、エントランスで待ってて」

 ジャスティンはインターホン越しにそう言うと、リビングから出て行った。でも、すぐに戻って来ると、寝ている木の実に柔らかい毛布をかけてから。

「ちょっとだけ出てくるね。
 ここで寝ていいから、ちゃんと、俺がベッドに運んであげるからさ」

 ジャスティンはそう言うと、木の実のほっぺにキスをした。
 木の実の瞼は重く精一杯に開けてみても、きっとジャスティンには閉じてる様にしか見えていないはず。
 でも、木の実は小さく頷いた。
 それをジャスティンが気づいたかは分からないけれど…


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

六畳二間のシンデレラ

如月芳美
恋愛
8ケタの借金を残したまま、突然事故死した両親。 学校は? 家賃は? 生活費は? 借金の返済は? 何もかもがわからなくてパニックになっているところに颯爽と現れた、如何にも貧弱な眼鏡男子。 どうやらうちの学校の先輩らしいんだけど、なんだか頭の回転速度が尋常じゃない! 助けられているのか振り回されているのか、あたしにも判断不能。 あたしの生活はどうなってしまうんだろう? お父さん、お母さん。あたし、このちょっと変な男子に任せていいんですか? ※まだ成人の年齢が18歳に引き下げられる前のお話なので、現在と少々異なる部分があります。

大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています

真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

内気な貧乏男爵令嬢はヤンデレ殿下の寵妃となる

下菊みこと
恋愛
ヤンデレが愛しい人を搦めとるだけ。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

処理中です...