イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉

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He is ホモサマ??

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「分かったよ。もう、俺からこの話はしない。
 でも、いつか、木の実の方から話してくれるのを待つのはいいだろ?
 それと、困った事があったら遠慮しないで俺を頼る事。
 今日、人に聞いて分かったみたいに、俺はお金に関しては苦労はしてないし余るほど持ってる。だから、お金の面でも、いつでも俺に相談してほしい。分かった?」

 木の実はいつもの調子で笑顔で肩をすくめるだけで、頷く事はしない。きっと、それは何でも調子よくたかってくる女子達よりはるかに印象はいいはず。
 ジャスティンはその事について、それ以上は何も言わなかった。

「よし、じゃ、今からデザートもくるから、急いで食べよう」

 ジャスティンはそう言いながら何も気づかないふりをしているけれど、木の実はしっかりと気づいていた。さっきから、テーブルの上に置いているジャスティンのスマホがブルブル震えている。切れたかと思ったらまた何度も何度もうるさいくらいに。

「ジャスティン、スマホ鳴ってるよ」

 木の実は我慢できずに、ジャスティンにそう言った。でも、ジャスティンは首を横に振って震えるスマホを無視している。

「ジャスティン、今日って金曜日だし、お友達とかと約束があったんじゃない?
 私、この後はどこかで時間を潰しときますから、ジャスティンは行ってきていいですよ」

 ジャスティンは伏せて置いていたスマホをチラッと見た。

「いいんだ。
 だって、木の実と一緒に入れる時間って少ないのに、俺はその時間を優先したい。
 それじゃ、ダメ…?」

 木の実は無意識に右の頬を思いっきりつねった。
 イケメンエリート軍団のジャスティンが私を優先してくれるなんて、夢だったら今すぐ覚めてほしい。

 イタッ……

 あ~、どうしよう…
 このままじゃ、私、本当にジャスティンを好きになってしまいそう…



 ジャスティンと木の実はジャスティンの家で飲み直すことにした。ジャスティンが車の運転があるために、レストランでは飲めなかったからだ。
 木の実はお酒はそんなに強い方ではないけれど、でも眺めるだけでワインが何杯も進みそうなジャスティンが隣にいて、二人きりでワインを飲むなんて考えるだけで胸がキュンキュンする。

「なんか、サッサと作ろうか?」

 ジャスティンは家に着くとスーツの上着だけを脱ぎネクタイを外し、白いシャツを腕まくりしてキッチンに立った。

「ジャスティンにお任せします。私、何でも大好物だから」

 木の実はそう言うと、自分の部屋に荷物を置きに行った。
 昨夜は真剣に考えなかったけれど、このマンションは一般人は絶対に住む事ができない超豪華マンションだ。このゲストルームだってお風呂もトイレも完備で、ましてや天井に届くほどのガラスの壁が一面を埋め尽くしている。
 木の実はカーテンを開け、間近に見える東京の夜景をウットリと眺めた。
 でも、何でなんだろう…
 何で、私は、こんな所に寝泊まりしているのだろう…

 木の実は頭を軽く振り、今は何も疑問に思わない事にした。タイムリミットは一週間、でも、もう二日は過ぎたから、あと五日間…
 白馬に乗った王子様が、森の中で迷子になった貧乏な女の子にお慈悲の心で接してくれているだけの事。
 それ以上は、期待しちゃダメ…
 傷つくのは自分自身なんだから…


 木の実がリビングに入ろうとした時、ジャスティンが誰かと話している声が聞こえた。
 木の実の勘は、とっさに聞くなと告げる。その直感に、木の実の体は回れ右をした。でも、それでも、木の実の耳にジャスティンの言葉ははっきりと聞こえた。

「確かに、金曜日の夜はそこに毎週行くけどさ、でも、たまには、行けない日だってあるんだよ。
 今夜は、俺がいなくても大丈夫だろ?
 そんな、子どもみたいな事言うなよ。また、電話するから、じゃあな」

 木の実はジャスティンの会話が終わってしばらくの間、廊下の隅で数分間、時間が経つのを待った。電話の声なんか聞いてない、そういう風に自分を騙すために。
 そして、木の実は何も聞こえなかったふりをしてリビングへ入ると、自分用の一人掛けのソファに座っていたジャスティンは、木の実の気配に気づいて立ち上がった。

「木の実、遅いよ」

「ごめんなさい…
 部屋からの夜景を見てたら、あっという間に時間が過ぎちゃって…」

 ジャスティンは、木の実の前に大きめのシャンパングラスを置いた。

「いつか、大切な時に飲もうって取っておいたんだ」

 ジャスティンはそう言いながらワインクーラーで冷やしておいたシャンパンのコルクを器用に開け、木の実のグラスに少なめに注いだ。そして、自分のグラスにも注ぐと、透明水の中にプツプツと炭酸が弾けるシャンパングラスを木の実のグラスにカチンと合わせる。

「僕の家へようこそ」


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