イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉

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He is 日本男児??

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 そして、もう一人面倒くさい人間がいる事を忘れていた。ジャスティンがコーヒーを淹れるために席を立った途端、映司が口笛を吹いて近づいてくるのが分かった。


「ジャス、昨日の代金はもういいからな。俺がおごってやるよ」


 ジャスティンは小さくため息をついて、笑顔で頷いた。


「誰にも言わないからさ、何があったのか教えてくれよ。
 謙人はジャスが女の子を追って出て行ったっていうけど、それはジャスに限ってはないだろ?

 あ、でも、その神話は、凪様の件で総崩れか…
 何が起こるか分からないのが、今のこの職場なんだっけ?」


 映司はバイセクシャルだ。男でも女でもどっちでも対応できる。


「映司はさ、今、恋人いるんだっけ?
 男? それとも女?」


 映司もコーヒーを淹れながら、ジャスティンの不思議な質問に正直に答えた。


「女の子だったらマイマイみたいな子がいいんだけど、凪に取られたし…
 今は恋人はいない。
 俺の中では、好きになった人が男か女かだけ。
 最近、女が続いてるから、俺ってやっぱり女の方が好きなのかもな」


 ジャスティンはコーヒーを飲みながら、映司を見ていた。たまにいい事を言うのが映司だ。


「ま、お前にはシュウがいるから、女の子はあり得ないか」


 ジャスティンはうんともすんとも言わず、軽く微笑んだ。


 ランチの時間が近づいてくると、ジャスティンは大切な事柄を忘れている事に気がついた。木の実のスマホの番号や、ましてやアドレスやLINEのIDも何も知らない。

 12時になり、ジャスティンはウェブ上の取引先の人間との打ち合わせを終わらせると、木の実の職場まで行く事にした。
 モナンジュは、実は、よくお世話になっている花屋だった。凪のかすみ草事件もそうだが、舞衣の送別会の時もここのお店を利用した。

 品のいいオーナー夫妻がいつも快く対応してくれて、きっとジャスティンのの事は確実に覚えている。そんな場合、モナンジュに顔を出す事は、木の実にとっていい事なのだろうか?

 ジャスティンはアバンクールヒルズTOKYOを出た所で、ちょっと立ち止まって考えてみた。
 そんなにしてまで、木の実に会いたいか?
 自分自身にそう問いかけてみる。
 その答えは、残念だけど、どう考えてもイエスだった。

 ジャスティンは長めの前髪を手で払い、降り注ぐ太陽の陽ざしに目を細める。

 どうしてだろう…
 早く木の実に会いたい…



「こんにちは~」


 ジャスティンがモナンジュの扉を開けたと同時に、オーナー夫人が飛んで来た。ジャスティンと目が合うと、頬が紅潮していくのが分かる。


「EOCのレスターさん、今日は何の用事でしょうか?」


 やっぱり、俺の名前まで覚えている…


「あの、矢代木の実さん、いますか?」


「え??」


「あ、はい…」


 静かな沈黙が店内に流れる。オーナー夫人はハッとした顔をして、キョロキョロし始めた。


「木の実ちゃん、木の実ちゃん」


 切羽詰まったオーナー夫人の声に驚いたのか、奥の方から木の実が飛び出してきた。


「ランチに行けそう?」


 店内にいた何人かのセレブな客も、奥で花束を作っていたオーナーも水田さんも、ジャスティンの美貌とそのジャスティンの視線の先にいる木の実の顔を、驚いた様子で交互に見ている。


「あ、はい、レスターさんですね…」


 木の実は動揺を隠しながらそう言うと、ジャスティンを外へ連れ出した。


「ど、どうしたんですか?」


 ジャスティンは腕時計をトントンと叩いて見せる。


「もう12時だよ」


 木の実は顔をクシャっとして、困ったように首を横に振った。


「お昼は、オーナーから声がかからないと休憩を取れないんです。
 私はまだ入ったばかりの人間だから…」


「そうなの?」


「はい、だから、ジャスティンは先に食べて下さい。私は適当にそこのコンビニでおにぎりとか買って食べますから」


ジャスティンは目を細めて木の実を見ている。とても不服そうな顔をして。


「じゃ、夜は一緒に帰ろう。
 7時に終わるんだろ?
 そこのカフェの前で待ってるから」


 木の実はジャスティンの親切過ぎる理由が分からなかった。


「でも、夜は家探しに……」


「分かった。じゃ、一緒に回ろう。
 俺がいた方が、不動産屋になめられないですむから」


 ジャスティンは典型的なしつこい男になっている事に気づいていない。何せ、何もかもが初めての経験だから。


 木の実は小さくため息をついて、笑顔で頷いた。理由はどうあれ、ジャスティンの素敵な笑顔にときめく自分には嘘はつけない。




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