イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉

文字の大きさ
上 下
9 / 48
He is 日本男児??

しおりを挟む



 木の実は、朝からジャスティンの車に乗っている。ジャスティンの車は素晴らしい。見た目でも乗り心地でも超高級車という事はすぐに分かる。

 でも、残念ながら、車音痴な木の実にはその車のブランド名も名前も何も分からない。この最高にカッコいい車が本当に気の毒だ。車音痴な木の実は、動けばどれも一緒というそういう価値観しか持ち合わせていなかった。


「木の実はさ、今、洋服って何枚くらい持ってる?」


 木の実はジャスティンのその質問を聞いて、すぐに自分の格好を見た。


「一通りセットで2パターン位かな…
 ダメですか…?」


 信号待ちで車が止まった時に、ジャスティンは隣に座る木の実の姿を上から下までわざと観察した。木の実は緊張した顔で縮こまっている。
 ジャスティンの見立てでは、中のインナーが違うだけでパンツもカーディガンも昨日と一緒だ。髪型も昨日と同じで頭のてっぺんで大きなお団子を作っている。それはそれで、めちゃくちゃ最高に可愛いけれど。


「荷物ってさ、あのトランク一つなの?」


 ジャスティンは車を発進させ、横目で木の実の様子を伺いながら聞いてみた。


「荷物は…
 私の一切の家財道具は、埼玉の田舎にあるトランクルームに預けてるんです。
 取りに行ってもいいんですけど、何せ遠くて…」


「トランクルーム?」


 また、木の実は黙り込む。毎回ちょっとだけ情報をチラつかせてシャットアウトするのがいつものパターンだ。


「夜逃げでもした…?」


 木の実は明らかに目をパチクリさせた。その微妙な動きを、ジャスティンは決して見逃さない。


「…夜逃げっていう言葉の意味が今一つ分からないのですが、でも、逃げたと言えば、逃げた…
 でも、それは夜じゃない… そんな感じです」


 ジャスティンは、これは新しいタイプの男を落とす作戦なのかもしれないと、ちょっとだけ思った。
 彼女の情報を小出しにされるたびに、それを聞かされる男はますます興味が増すし、彼女の謎に満ちた全てを知りたくなる。
 きっと、今のジャスティンと木の実の関係は、子リスが興味本位で作った罠に気取った狼がまんまと嵌まってしまったみたいなそんな感じだろう。


「ねえ、俺にいつになったら話してくれるの?」


 聞きたくてしょうがないジャスティンは甘えた声でそう聞いてみた。


「え? 何も話す事はないですよ。何もやましくてヤバい事はありませんから…」


 ジャスティンはハンドルをさばきながら、鼻でフフッと笑った。
 やましくてヤバい事が大有りだな。

 でも、この話はこれ以上膨らまさない事にした。もう信号の先にはアバンクールヒルズTOKYOが見えていたから。






 いつもより遅い出勤になったジャスティンを待ち構えていたのは謙人だった。謙人は、ジャスティンが自分のブースに入ったと同時に声をかけてくる。


「ジャス、おはよう」


 ジャスティンは面倒臭そうに謙人を見た。謙人は明らかににやつきながらジャスティンを見ている。


「昨夜さ、あの女の子を追ってったろ?」


 確かにジャスティンの隣に座っていたのは謙人で、最初に挙動不審の木の実に気づいたのも謙人だった。


「別にそんなんじゃないよ」


 ジャスティンは、謙人だけじゃなく他の皆にも木の実の事を話す気はなかった。
 男にしか興味がないはずのジャスが期間限定ではあるけれど女の子と住んでるなんて、凪が舞衣にのぼせ上がった以上にここでのビッグニュースになる。
 それに、自分の行動自体を理解できていないのに、皆に突っ込まれたら何も説明できない。


「用があったのを思い出しただけだよ」


「シュウか?」


「それは違う」


 ジャスティンは朝の習慣のメールやメッセージのチェックを必要以上にやり始める。謙人はそんなジャスティンを面白がって見ている。


「なあ、謙人、邪魔なんだけど」


 謙人はにやつきながら、後ろに束ねた髪をもう一度結び直した。


「ジャス、女の子に困ったらいつでも俺に言うんだぞ。ゲイだからって、女の子を抱けないわけじゃないんだから」


 謙人はナルシストなくせに、中身は誰よりも究極の男だった。星の数ほどいるセフレの中から、何人かをジャスティンに紹介する事なんて、食事をするより簡単な事だ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

六畳二間のシンデレラ

如月芳美
恋愛
8ケタの借金を残したまま、突然事故死した両親。 学校は? 家賃は? 生活費は? 借金の返済は? 何もかもがわからなくてパニックになっているところに颯爽と現れた、如何にも貧弱な眼鏡男子。 どうやらうちの学校の先輩らしいんだけど、なんだか頭の回転速度が尋常じゃない! 助けられているのか振り回されているのか、あたしにも判断不能。 あたしの生活はどうなってしまうんだろう? お父さん、お母さん。あたし、このちょっと変な男子に任せていいんですか? ※まだ成人の年齢が18歳に引き下げられる前のお話なので、現在と少々異なる部分があります。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

大人な軍人の許嫁に、抱き上げられています

真風月花
恋愛
大正浪漫の恋物語。婚約者に子ども扱いされてしまうわたしは、大人びた格好で彼との逢引きに出かけました。今日こそは、手を繋ぐのだと固い決意を胸に。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

内気な貧乏男爵令嬢はヤンデレ殿下の寵妃となる

下菊みこと
恋愛
ヤンデレが愛しい人を搦めとるだけ。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚

日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……

処理中です...