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He is ナニモノ??
⑦
しおりを挟むジャスティンは無意識の内に木の実をきつく抱きしめていた。
「別に一週間って言わずに、もっと居ていいんだよ」
こんな事を言う俺はやっぱりおかしい。
それに、女の子ってこんなに柔らかかったっけ?
香水じゃない何だか優しい花の香りがするけど、すごくいい匂い…
「ううん、一週間でも長すぎるくらい」
木の実はハッとした顔をしてそう言うと、ジャスティンから体を離した。
「ごめんなんさい、つい、勢いで抱きついちゃって…」
木の実は急に恥ずかしくなり、首元が赤くなっているのが分かった。その場しのぎに窓際まで行き、手のひらで首元をパタパタと仰ぐ。
「私は、矢代木の実23歳。
あの、実は、一週間前に職と家を失いました。
事情は聞かないで下さい。
でも、昨日、新しい仕事に就く事ができました。
ジャスティンが働いているビルの前の花屋さんです」
「もしかして、モナンジュ?」
「はい、そうです。知ってるんですか?」
ジャスティンは、一年前の凪と舞衣の一連の出来事を思い返していた。
「あの花屋さんには迷惑をかけたんだ。なんせ10万円分のかすみ草だけの花束を注文したから」
「10万円のかすみ草??」
木の実はベッドに座っているジャスティンの隣に腰かけ、興味津々にそう聞いた。
「ねえ、それより、ご飯食べた?
俺は食事の途中で出て来たから、なんだかお腹が空いてきた」
木の実は色々な事があり過ぎてお腹が空いている事さえ分からなくなっていた。でも、そう言われれば、かなりお腹が空いているような気がする。
「食べてない…です。
でも、食べなくても大丈夫なくらい、何だか体は超元気っぽい」
「それ、空元気っていうやつね。仕事始めたんなら、ちゃんとご飯は食べなきゃダメだよ。
家にある物でいい?
今から木の実の歓迎パーティをしよう」
ジャスティンはそう言いながらキッチンの方へ歩いて行く。木の実も遅れないようにジャスティンの後を追った。
「木の実は料理はするの?」
アイランド式キッチンの前に二人で立つと、ジャスティンがそう聞いてきた。
「恥ずかしながら、できないです…
一人暮らしだけど、買ってきた物を食べる事が多くて」
ジャスティンは冷蔵庫から生ハムを取り出すと、手際よくレタスをちぎったサラダの上に並べている。
「買ってきた物って? 例えば?」
ジャスティンは、実は、料理好き男子だった。今、木の実が料理ができないと聞いて、俄然やる気が増していた。
こういうタイプの子には、美味しい物をたくさん食べさせてやりたい。
「本当に恥ずかしいんですけど、私の主食はポテチです」
「ポテチ?
ポテチってポテトチップス??」
ジャスティンは、あまりの驚きにナイフを落としそうになった。
「主食ってことはおかずもあるの?
え? じゃ、おかずは何?」
ジャスティンがチラッと木の実を見ると、肩をすくめてはにかんでいる。ジャスティンの動きが一瞬止まった。
木の実の可愛いらしさに、何だか胸の奥の方がブルブル震えている。
「おかず?
あ、おかずはですね…
ちゃんと肉系のものは食べてましたよ。ジャーキーが大好きで、魚系はするめとか」
ジャスティンはパスタを茹でながら、木の実の顔を自分の大きな手で包み込んだ。
ジャーキーにするめ? それはつまみだよって。
「そんなものばっかり食べてたら、死ぬぞ。
よし、今日から一週間は、俺が栄養のある物をちゃんと食べさせる。
木の実は美味しい美味しいって食べるだけでいいから。分かった?」
木の実は目がなくなる程の笑顔で大きく頷いた。
ジャスティンはザワザワする胸の異変を無視して、パスタの仕上げに入る。木の実に美味しい物を早く食べさせてあげたい。
何だか、とっても楽しいんだけど…
俺って、女の子の前でこんなんだったっけな…?
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