上 下
6 / 26
一章 第一部

一章 第一部 転生準備

しおりを挟む
 そこで、僕は、いや、僕らは死んだのだった。
 後から聞いたところによると、隕石に衝突される、という宝くじに当たるよりも例がないような死因で、僕らは死んだらしい。あまりにも悲しすぎる。
 僕の不幸体質が隕石を呼び寄せたんだとしたら、死んでしまった二人に申し訳がない。
 普通の人生だったら、そこで終わり。
 しかし、幸か不幸か、僕たちはそこで終わらなかった。
 あいつに出会ったのは僕の人生、最大の幸福だ。

◇◆◇

 今は、いわゆる『魂』の存在なのだろう。変な場所にいる。
 意識もあるし、自分の体も認識できる。しかし、物理的な感覚が無いのだ。
 手だって薄い半透明になっているし。
 横で二人は眠っていた。起こそうとはしてみたが、全く反応がなかった。
 僕は今、落ち着き払っている。
 普通の人間なら取り乱したりしそうな状況だが、僕は大丈夫だ。
 いや、僕らは、と言った方が正しいかもしれない。
 毎日新しいものを探してくる柊のおかげで、部室にはいろいろな物が運び込まれてくる。
 その中でも、あるとき出会った、沢山の数のライトノベル。
 僕たち三人は、それにどっぷりとはまってしまった。
 特に異世界転生、というジャンルを僕たちは気に入っていた。
 現実世界で死んだ人間が他の世界に転生して活躍する物語だ。
 だから僕は、これから僕たちがライトノベルみたいに異世界転生しないかと内心では期待でいっぱいなのだ。
――ひょっとしたら勇者になっちゃうかもなー
 と、中二病的な恥ずかしい妄想に浸っていると、むくりと柊と乃綾が同時に起き上がった。。

「ん? 何があったんだ…… お! おぉ!」
「頭痛い…… あれ? え? え? ここってもしかして⁉」

 目覚めた瞬間の混乱から一瞬で立ち直り、目をきらきらさせる二人。
 その様子を見ると、二人とも同じようなことを感じているらしい。

「これって、もしかして……?」
「もしかするかもよ?」
「もしかするだろ……」

 三人で盛り上がっているところに、足音が近づいてきた。

「なーんで最近の人は、こんなにも危機感がないんですかね……?」

 コツコツと足音を鳴らしながらやってきたのはそう、春に部活に入った、あの少女だった。

「えっと、あなたは?」

 一応こういう状況なので、敬語で話しかける。
 少女はいつも部室で見せているのとは違った表情のある顔で、にやりと笑った。
「我が名はアヌビス! 死と冥界の神にして、魂に審判を下すもの! あなたたちは、お亡くなりになられました。ご愁傷様です」
「中二病ですか?」

 思わず突っ込みを入れる僕だが、アヌビスは軽くスルー。
 てきぱきと、今の状況を説明していく。

「はい。それではご説明をしましょう。あなたたちは隕石に衝突される、という
極めて珍しい方法でお亡くなりになられています」
「は!? 隕石!?」

 思わず声に出して驚いてしまった。
 しかしなるほど…… 死ぬ直前に感じたあの衝撃は隕石のものだったのか……

「私は初めて見ましたよ。もう何年も隕石で人なんて死んでなかったものですから。で、珍しい方法で死んだあなたに! ラッキーなチャンスを差し上げます。……というか、頼まれてください! 」

 その瞬間、アヌビスは態度を急変させ、目にもとまらぬ速さで額を地面に精一杯近づけた。
 土下座だった。

「え!? 土下座までして!?」

 いきなり土下座で迫ってくるアヌビスに驚く僕たち。
 しかし、そんな僕たちにかまいもせず、土下座のまま用件を話すアヌビス。

「どうか! 私の失態をもみ消してはくれませんか!!」
「わかった。わかったから普通に話して!」

地面に向かって叫ぶアヌビスを無理矢理立たせ、僕たちは話を聞くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

千年ぶりに目覚めたら子孫達がやらかしてました

End
ファンタジー
 かつてこの世界に君臨していた俺が目覚めると三百年たってました。  話を訊くと、俺の子供が色々やらかしていました。  ぶち殺そうと思いましたが...力を失っていました。  どうしたものかと町にいけば、どう考えても別世界でした。  ステータス? スキル? 適正?  何それ?  え? 実は三百年じゃなく千年たってるんですか?  俺の子孫達が覇権を競っているんですか?  取り敢えず冒険者になって金稼ごうと思えば...  そうですか俺のステータスだと無理ですか。  仕事の経験ですか?  あえて言えば暴虐の王ですかね。  勿論過去の話しですよ。  生きていく方法がわからねぇー    ◆◆◆  初めての小説です。  色々試行錯誤しながら書いているため文節、表現方法等が落ち着いていません。  そんな文ですが、お気に入りにに登録してくれた方の為にも、最低でも話の内容だけは、破綻しないよう書きたいと思います。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

転生貴族の異世界無双生活

guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。 彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。 その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか! ハーレム弱めです。

妖精王オベロンの異世界生活

悠十
ファンタジー
 ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。  それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。  お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。  彼女は、異世界の女神様だったのだ。  女神様は良太に提案する。 「私の管理する世界に転生しませんか?」  そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。  そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...