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一章 第一部
一章 第一部 転生準備
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そこで、僕は、いや、僕らは死んだのだった。
後から聞いたところによると、隕石に衝突される、という宝くじに当たるよりも例がないような死因で、僕らは死んだらしい。あまりにも悲しすぎる。
僕の不幸体質が隕石を呼び寄せたんだとしたら、死んでしまった二人に申し訳がない。
普通の人生だったら、そこで終わり。
しかし、幸か不幸か、僕たちはそこで終わらなかった。
あいつに出会ったのは僕の人生、最大の幸福だ。
◇◆◇
今は、いわゆる『魂』の存在なのだろう。変な場所にいる。
意識もあるし、自分の体も認識できる。しかし、物理的な感覚が無いのだ。
手だって薄い半透明になっているし。
横で二人は眠っていた。起こそうとはしてみたが、全く反応がなかった。
僕は今、落ち着き払っている。
普通の人間なら取り乱したりしそうな状況だが、僕は大丈夫だ。
いや、僕らは、と言った方が正しいかもしれない。
毎日新しいものを探してくる柊のおかげで、部室にはいろいろな物が運び込まれてくる。
その中でも、あるとき出会った、沢山の数のライトノベル。
僕たち三人は、それにどっぷりとはまってしまった。
特に異世界転生、というジャンルを僕たちは気に入っていた。
現実世界で死んだ人間が他の世界に転生して活躍する物語だ。
だから僕は、これから僕たちがライトノベルみたいに異世界転生しないかと内心では期待でいっぱいなのだ。
――ひょっとしたら勇者になっちゃうかもなー
と、中二病的な恥ずかしい妄想に浸っていると、むくりと柊と乃綾が同時に起き上がった。。
「ん? 何があったんだ…… お! おぉ!」
「頭痛い…… あれ? え? え? ここってもしかして⁉」
目覚めた瞬間の混乱から一瞬で立ち直り、目をきらきらさせる二人。
その様子を見ると、二人とも同じようなことを感じているらしい。
「これって、もしかして……?」
「もしかするかもよ?」
「もしかするだろ……」
三人で盛り上がっているところに、足音が近づいてきた。
「なーんで最近の人は、こんなにも危機感がないんですかね……?」
コツコツと足音を鳴らしながらやってきたのはそう、春に部活に入った、あの少女だった。
「えっと、あなたは?」
一応こういう状況なので、敬語で話しかける。
少女はいつも部室で見せているのとは違った表情のある顔で、にやりと笑った。
「我が名はアヌビス! 死と冥界の神にして、魂に審判を下すもの! あなたたちは、お亡くなりになられました。ご愁傷様です」
「中二病ですか?」
思わず突っ込みを入れる僕だが、アヌビスは軽くスルー。
てきぱきと、今の状況を説明していく。
「はい。それではご説明をしましょう。あなたたちは隕石に衝突される、という
極めて珍しい方法でお亡くなりになられています」
「は!? 隕石!?」
思わず声に出して驚いてしまった。
しかしなるほど…… 死ぬ直前に感じたあの衝撃は隕石のものだったのか……
「私は初めて見ましたよ。もう何年も隕石で人なんて死んでなかったものですから。で、珍しい方法で死んだあなたに! ラッキーなチャンスを差し上げます。……というか、頼まれてください! 」
その瞬間、アヌビスは態度を急変させ、目にもとまらぬ速さで額を地面に精一杯近づけた。
土下座だった。
「え!? 土下座までして!?」
いきなり土下座で迫ってくるアヌビスに驚く僕たち。
しかし、そんな僕たちにかまいもせず、土下座のまま用件を話すアヌビス。
「どうか! 私の失態をもみ消してはくれませんか!!」
「わかった。わかったから普通に話して!」
地面に向かって叫ぶアヌビスを無理矢理立たせ、僕たちは話を聞くのだった。
後から聞いたところによると、隕石に衝突される、という宝くじに当たるよりも例がないような死因で、僕らは死んだらしい。あまりにも悲しすぎる。
僕の不幸体質が隕石を呼び寄せたんだとしたら、死んでしまった二人に申し訳がない。
普通の人生だったら、そこで終わり。
しかし、幸か不幸か、僕たちはそこで終わらなかった。
あいつに出会ったのは僕の人生、最大の幸福だ。
◇◆◇
今は、いわゆる『魂』の存在なのだろう。変な場所にいる。
意識もあるし、自分の体も認識できる。しかし、物理的な感覚が無いのだ。
手だって薄い半透明になっているし。
横で二人は眠っていた。起こそうとはしてみたが、全く反応がなかった。
僕は今、落ち着き払っている。
普通の人間なら取り乱したりしそうな状況だが、僕は大丈夫だ。
いや、僕らは、と言った方が正しいかもしれない。
毎日新しいものを探してくる柊のおかげで、部室にはいろいろな物が運び込まれてくる。
その中でも、あるとき出会った、沢山の数のライトノベル。
僕たち三人は、それにどっぷりとはまってしまった。
特に異世界転生、というジャンルを僕たちは気に入っていた。
現実世界で死んだ人間が他の世界に転生して活躍する物語だ。
だから僕は、これから僕たちがライトノベルみたいに異世界転生しないかと内心では期待でいっぱいなのだ。
――ひょっとしたら勇者になっちゃうかもなー
と、中二病的な恥ずかしい妄想に浸っていると、むくりと柊と乃綾が同時に起き上がった。。
「ん? 何があったんだ…… お! おぉ!」
「頭痛い…… あれ? え? え? ここってもしかして⁉」
目覚めた瞬間の混乱から一瞬で立ち直り、目をきらきらさせる二人。
その様子を見ると、二人とも同じようなことを感じているらしい。
「これって、もしかして……?」
「もしかするかもよ?」
「もしかするだろ……」
三人で盛り上がっているところに、足音が近づいてきた。
「なーんで最近の人は、こんなにも危機感がないんですかね……?」
コツコツと足音を鳴らしながらやってきたのはそう、春に部活に入った、あの少女だった。
「えっと、あなたは?」
一応こういう状況なので、敬語で話しかける。
少女はいつも部室で見せているのとは違った表情のある顔で、にやりと笑った。
「我が名はアヌビス! 死と冥界の神にして、魂に審判を下すもの! あなたたちは、お亡くなりになられました。ご愁傷様です」
「中二病ですか?」
思わず突っ込みを入れる僕だが、アヌビスは軽くスルー。
てきぱきと、今の状況を説明していく。
「はい。それではご説明をしましょう。あなたたちは隕石に衝突される、という
極めて珍しい方法でお亡くなりになられています」
「は!? 隕石!?」
思わず声に出して驚いてしまった。
しかしなるほど…… 死ぬ直前に感じたあの衝撃は隕石のものだったのか……
「私は初めて見ましたよ。もう何年も隕石で人なんて死んでなかったものですから。で、珍しい方法で死んだあなたに! ラッキーなチャンスを差し上げます。……というか、頼まれてください! 」
その瞬間、アヌビスは態度を急変させ、目にもとまらぬ速さで額を地面に精一杯近づけた。
土下座だった。
「え!? 土下座までして!?」
いきなり土下座で迫ってくるアヌビスに驚く僕たち。
しかし、そんな僕たちにかまいもせず、土下座のまま用件を話すアヌビス。
「どうか! 私の失態をもみ消してはくれませんか!!」
「わかった。わかったから普通に話して!」
地面に向かって叫ぶアヌビスを無理矢理立たせ、僕たちは話を聞くのだった。
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