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壊れた夜 一
しおりを挟む「コンスタンス、今夜のうちに洗濯物を出してきてちょうだい」
「はい」
言われてすぐコンスタンスはシーツの盛られた籠をかかえて、通りにある洗濯屋を目指した。
舗装された石の道を歩きつつ、夜空をながめると、今夜も月星が不夜城の街にきらめいて見える。
コンスタンスは軽く溜息をつきそうになった。
あれから二週間が過ぎた。マダムからは今月中にどうするか決めろと言われている。
(このままこの家に住みたいっていうんなら、する事はしてもらうからね)
コンスタンスは娼婦になるのはやはり無理だと思っている。それならばあの家を出てどこか住む所を見つけなければならないが、まるで当てがない。
(今頃、パパやエマはどうしているかしら?)
父の仕事はどうなったのか。実家は抵当に入っていると聞いたが、まだそこに住んでいるのだろうか。考えれば考えるほど気がめいる。
「あら、コンスタンスじゃない?」
ガス灯の下を、横道から歩いてくるのはリジュロンだった。彼女とはあれから何度か顔を合わせている。
「今、行こうと思っていたの。夜学の帰りなの?」
街灯のもとほのかに見えるリジュロンの小麦色の頬は、今夜は妙に青ざめて見える。かすかに息を切らしているようだ。
「どうしたの?」
不審に思ったコンスタンスがたずねてみると、
「さっき、そこの通りで変な男の人にからまれて……。もういないかしら?」
「変な男の人?」
「そう」 リジュロンは夜目にも顔を赤くし、怒りに眉をしかめる。
「腕をつかんで、幾らでつきあう、って訊いてくるの。酒臭かった」
「ああ……」 コンスタンスは苦笑いした。
男は酔ってリジュロンを街娼だと思ったようだ。
「失礼しちゃうわ。私、そんなふうに見える?」
そう言うリジュロンは、化粧も香水もつけず亜麻色の髪は今もきっちりと結いあげている。
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