双珠楼秘話

平坂 静音

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裏から 二

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 桂雲たち? ええ、桂雲は私の存在を知っています。盟宝は桂雲の言いなりでしたから、知っていても何もしないでしょう。桂葉? いえ、あの娘はそこまで知らなかったと思います。でも……私はときどき隠し部屋から外の人のお喋りを聞いているのですが、桂葉はひどく義理の父の盟宝を憎んでいたみたいで、それをわかってくれない桂雲にいらだっていたようです。そして、ひどく……この屋敷を出たがっていました。おそらく、桂雲たちに協力すれば屋敷を出て暮らしていけるだけのお金をあげるとか言われて、調子を合わせたのでしょう。
 枇嬋が言うには、家の秘密を守るためには、使用人には、なるべく係累の無い人間がいいのだそうです。そして、事情を抱えていて、なかなか仕事を見つけにくいため、この屋敷の仕事を失うわけにはいかないような人間が。この家ではそういう者ばかりをわざと雇っていたのです。枇嬋は本当に頭が良いと思います。
 輪花を殺すつもりだったのか、と? 
 それは枇嬋が決めたことです。香玉や愛莉のことですか? それも枇嬋や玉蓮お母様、お祖母様はお歳ですから知っていたかどうかわかりませんが、とにかく他の人たちが決めたことですから……。
 お祖母様は亡くなられましたし、玉蓮お母様と金媛姉様は自害されたそうで。……最後までお母様にとって娘は姉様一人なのでしょう。私は姉様の影にしか過ぎないのです。私を見ているときも、お母様の目に映っていたのは金媛姉様なのです。
 枇嬋はどうなるのですか? え、処刑? 私は? ええ! 売られることになると?
 まぁ、ひどい! 私が何故、罪人なのですか? あの状況で私に何が出来たのですか?
 呂家の犯罪を知りながら通報しなかった? 
 使用人たちを見殺しにしていた?
 だって、仕方がないじゃないですか、私はいないも同然の人間とされていたのですから。

「いないも同然とされた人間はあなただけではないんだよ、お嬢さん。けれど、その人物は、勇気を出して我々に通報してきたんだ」
 隊長は、粗末な木の卓を指でたたいた。

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