牢獄の夢

平坂 静音

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 そして、さらに暗い宙をさまよううちに、わたくしは見ることになるのです。

 あなたのただ一人の正嫡の男子が幼いままに亡くなるところを。あなたのひどい嘆きようも、苦しみようも。

 正直わたくしはいささか溜飲が下がりました。流血に彩られたあなたの人生に、やはり神はそれ相応の罰を与えたのでございましょう。

 そして、ああ、そして、とうとう宿敵エンリケ様との戦いであなたが殺されるところも。

 どんなに強靭な人間であっても死神の手から逃れることはやはりできないものでございます。
 
 あなたの遺児である娘たちは異国へ亡命し、カスティーリャはエンリケ様のものとなるのでございます。エンリケ様はエンリケ二世王としてカスティーリャに君臨することになりました。

 あなたもその様子をどこかから見ているのでしょうか。いったいどんなお気持ちかしら。
 
 ああ……わたくしの視界もどんどん暗くなっていきます。もう何も見えません。それでいいのです。どうやら、わたくしも行くべきところへ行くようです。





「思えば思うほど、気の毒な人生だったな」
 
 ヘレスの城代イニゴは、暗澹あんたんたる想いで王妃の遺品を整理していた。
 
 一国の王妃だというのに、その持ち物は質素で、祖国からもってきた衣装なども哀れなほどに古びている。

 下僕たちがそういった遺品を片付けているのを眺めながら、善良なイニゴは、娘ほどの年齢のまだまだ若く美しい王妃の死を思って涙ぐみそうになった。
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