牢獄の夢

終わりの日に 一

　また、それを避けるために王子たちにそれぞれ所領を公平に分け与えていたがために、それはそれで国が分裂して弱体化し、増えた小国同士のあいだでまた争いが増えるなどということもこの半島の歴史にはよくあったことでございます。

　人が生きるということは本当に厄介なことがたくさんあります。そんな世の中で生き残るためには強くたくましく図太くなければならないのでしょうが、わたくしにはその強さがございませんでした。

　あなたはその後も戦でその手を血に濡らし、あなたの係累たちを処刑台に送りつづけました。

　あなたの父上の妹である叔母上すらも黒人奴隷に――誰も先王の妹の処刑人にはなりたがらなかったので――その首を落とさせました。異母弟のひとりの妻は毒殺されたといわれています。その姉のイサベル・デ・ララはわたくしの居城へ送り込まれてきました。今は隣室で眠っていることでしょうが、彼女もわたくし同様、生きてこの牢獄を出ることはないでしょう。

　恐ろしい人……。けれど、今のこの乱れた世界は、あなたのような残虐非道な人を英雄と呼ぶのでございます。こんな世のなかにわたくしはもう生きているのがつくづく嫌になりました。




　ええ、わたくしはもうすぐ死ぬのでしょう。

　十四で祖国を出、この国に嫁ぎ、そこでこの十年間、さんざん辱しめられ傷つけられ、日もろくに入らない幽閉生活のはてに、わたくしは虜囚として死ぬのでございます。

　公女として生まれ、王女と同格の待遇で育てられ、パリ宮廷の花であったわたくしが、若く美しく誰からも愛されたわたくしが、ブルボン公家の姫であったわたくしが、本来なら、この国で王妃として厚遇され大切に敬われるべきだったわたくしが、田舎貴族の娘にその座をうばわれ、強姦同然の初夜でただ一度かたちだけの夫婦となり、夫たる背の君のあなたには一度も愛されることなく、二十四歳で死ぬことになるです。