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オフィーリアたちの夜会 三

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「八年前、オフィーリアを演じた生徒は、僕です。ただし自殺は未遂で、こうしてなんとか生きてますけれどね」
 駒田は、口をぱくぱくさせて、どうにか言葉をはなつ。 
「そんな、しかし……あなたは」
「昔はいろいろありました。自殺未遂のショックから立ちなおるのに一年、大学を休学して手術を受けるために一年費やしました」
 由樹はにっこりと笑ってみせた。
「当時は〝よしき〟ではなく、〝ゆき〟、と呼ばれていました」
 またぽかんと口を開けた駒田に、かつて、この学院で、〝ゆき〟と呼ばれていた由樹は語りつづけた。
「今となっては、自分にとって必要な転機だったのだと思いますよ。むしろオフィーリアの幽霊に感謝したい気持ちです。文字どおり死の世界の一歩手前までいって、人生をやりなおす気持ちになれたんですからね」
 駒田は半信半疑で由樹の顔を凝視している。
 由樹はすべてを受けいれる慈母のように優しい笑みをみせた。
「駒田先生、人間生きていればなんとかなりますよ。かならず時がすべて解決してくれます。どんなに辛いことでも苦しいことでも、きっといつか終わる、きっとすべててうまくいく。そう信じて前へ進みつづけていたら、物事はうまくいくものです」
「ですが……、ですが、私にはどうしていいのか……わからない」
「道はかならず見つかります。そして、お願いです。ほんの少しでいいから柴山先生に優しい気持ちをもってあげてください」
「私は……、認めるのが怖かった。自分が、そんな、異常な人間だったなんて」
 駒田の目に涙がうかんだ。
「人を好きになるのは異常なことではありません」
「世間はそう思ってはくれません。まして、私も柴山も教育者だ。生徒たちの父兄はけっしてゆるしてはくれませんよ」
「この学院だけが職場というわけではありません。お二人とも――僕が言うのは生意気で、変ですが、若いのだし、何度だってやりなおせます」
「そんな……簡単に言わないでください」
 駒田は泣き笑いのような顔になった。
「僕がのりこえてきたことからみたら、簡単ですよ」 
「なんとかなると思いますか? 本気で思っているんですか?」
「なりますよ」
 由樹は確信をこめてうなずいた。

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