8 / 12
二
しおりを挟む
(だから、それがわたしの運命なのよ)
自分のような娘は、一生光の届かない海底の洞窟にでもひそんでいるしかない。メリジュスはひがんだ気持ちになって、そんなことを思ってしまったが、ジェルディンの次の言葉はメリジュスを驚かせた。
「メリジュス、奥付きの侍女にならないか? 今の侍女は気がきかないので困っている」
とんでもない! と首をふろうとすると、ジェルディンは常に愛されてきた者だけが持ち得る、あの輝くような笑顔を見せた。自分の希望や望みは、すべて受け入れられると信じている者特有の笑みである。
「おまえならレイミィも気に入るだろう」
わけがわからず、ぽかんとしているメリジュスにジェルディンが口早に説明した。
「都で知り合った娘で、実は明日の宴でお披露目しようと思っているのだ」
つまり、婚約者なのだろう。かつて彼の父親がそうだったように、ジェルディンもまた都での遊学中に将来の伴侶を見つけてきたのだ。
「レイミィは優しくてとてもいい娘なのだが、内気ですこし引っ込み思案なのだ。おまえが側についていてくれると助かる」
都育ちの深窓の令嬢がこんな田舎へ来て、慣れないことだらけで心細いのだろう。
言葉と表情からは婚約者への愛情がうかがいしれ、逆にメリジュスはほっとした。
(そういうことなら、おかしな期待や愚かな夢を見ずにすむから、いっそ楽かも)
メリジュスは慎重に返事をした。
「あの、もしそのレイミィ様がわたしをご覧になって嫌がらないのなら……」
ジェルディンは一笑した。笑うと、肩あたりで切りそろえられた金の髪がゆれて木漏れ日に輝く。
「嫌がるわけがないじゃないか! 今からでもレイミィに会うといい」
迷ったが、主家の若君の言うことである。強く断ることはできない。それに、メリジュス自身も、本当は、このままずっと厨房の下働きで終わるのを思うとつらいのだ。
自分のような娘は、一生光の届かない海底の洞窟にでもひそんでいるしかない。メリジュスはひがんだ気持ちになって、そんなことを思ってしまったが、ジェルディンの次の言葉はメリジュスを驚かせた。
「メリジュス、奥付きの侍女にならないか? 今の侍女は気がきかないので困っている」
とんでもない! と首をふろうとすると、ジェルディンは常に愛されてきた者だけが持ち得る、あの輝くような笑顔を見せた。自分の希望や望みは、すべて受け入れられると信じている者特有の笑みである。
「おまえならレイミィも気に入るだろう」
わけがわからず、ぽかんとしているメリジュスにジェルディンが口早に説明した。
「都で知り合った娘で、実は明日の宴でお披露目しようと思っているのだ」
つまり、婚約者なのだろう。かつて彼の父親がそうだったように、ジェルディンもまた都での遊学中に将来の伴侶を見つけてきたのだ。
「レイミィは優しくてとてもいい娘なのだが、内気ですこし引っ込み思案なのだ。おまえが側についていてくれると助かる」
都育ちの深窓の令嬢がこんな田舎へ来て、慣れないことだらけで心細いのだろう。
言葉と表情からは婚約者への愛情がうかがいしれ、逆にメリジュスはほっとした。
(そういうことなら、おかしな期待や愚かな夢を見ずにすむから、いっそ楽かも)
メリジュスは慎重に返事をした。
「あの、もしそのレイミィ様がわたしをご覧になって嫌がらないのなら……」
ジェルディンは一笑した。笑うと、肩あたりで切りそろえられた金の髪がゆれて木漏れ日に輝く。
「嫌がるわけがないじゃないか! 今からでもレイミィに会うといい」
迷ったが、主家の若君の言うことである。強く断ることはできない。それに、メリジュス自身も、本当は、このままずっと厨房の下働きで終わるのを思うとつらいのだ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる