93 / 210
八
しおりを挟む
「え……で、でも、三年になって卒業したら……」
「学院長が卒業を認めないかぎりは出れません」
美波は呆然とした顔になっていた。
シスターたちのなかでは温厚で、情もあるように見えるシスター・グレイスが頬をひきつらせて厳しい言葉を言いはなっているのに驚きもしたが、彼女の言っていることが今ひとつよく解らないのだ。
美波の凝視に気づいたのだろう。シスター・グレイスはやや表情をやわらげた。
「だからあなたも規則を守って清く正しく生き、罪を償うのです。汚れた心身をここで洗い清めるのですよ。そうすればいつか出ることができます」
「はあ……」
と言いつつも美波はたまらなく不安で不快な気持ちになってきた。シスター・グレイスのはなった言葉が毒蜘蛛の糸のように絡みついてきて身体が重たい。
「とにかく、部屋に戻りなさい」
「は、はい」
ペタペタと自分のたてるひどく間抜けな足音を聞きながら、美波は自室へと向かった。
「学院長が卒業を認めないかぎりは出れません」
美波は呆然とした顔になっていた。
シスターたちのなかでは温厚で、情もあるように見えるシスター・グレイスが頬をひきつらせて厳しい言葉を言いはなっているのに驚きもしたが、彼女の言っていることが今ひとつよく解らないのだ。
美波の凝視に気づいたのだろう。シスター・グレイスはやや表情をやわらげた。
「だからあなたも規則を守って清く正しく生き、罪を償うのです。汚れた心身をここで洗い清めるのですよ。そうすればいつか出ることができます」
「はあ……」
と言いつつも美波はたまらなく不安で不快な気持ちになってきた。シスター・グレイスのはなった言葉が毒蜘蛛の糸のように絡みついてきて身体が重たい。
「とにかく、部屋に戻りなさい」
「は、はい」
ペタペタと自分のたてるひどく間抜けな足音を聞きながら、美波は自室へと向かった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
彩霞堂
綾瀬 りょう
ミステリー
無くした記憶がたどり着く喫茶店「彩霞堂」。
記憶を無くした一人の少女がたどりつき、店主との会話で消し去りたかった記憶を思い出す。
以前ネットにも出していたことがある作品です。
高校時代に描いて、とても思い入れがあります!!
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
三部作予定なので、そこまで書ききれるよう、頑張りたいです!!!!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ステルスセンス
竜の字
ミステリー
出版社に入社した羽津宮
一年後に退職を考えるまで追い詰められてしまう。
そんな時、1人のホームレスと出会う。
そのホームレスが持つ「ステルスセンス」
と書かれたノート、そこに書かれて居る事を
実戦して行く事で人生が好転し始める羽津宮
その「ステルスセンス」と書かれたノートの
意味とは?
白薔薇黒薔薇
平坂 静音
歴史・時代
女中のマルゴは田舎の屋敷で、同じ歳の令嬢クララと姉妹のように育った。あるとき、パリで働いていた主人のブルーム氏が怪我をし倒れ、心配したマルゴは家庭教師のヴァイオレットとともにパリへ行く。そこで彼女はある秘密を知る。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる