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六
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「109号室で騒いでるみたい。雪葉とシスター・アグネスが」
「え?」 思わず美波はぎょっとした。
「ほら、雪葉、髪切りに行かないといけないのに行かなかったじゃない? それでシスター・アグネスが怒ってしまってさ。学院長まで来ているらしいよ」
やっぱり、という思いが美波の胸にせまる。あのまま済むとは思わなかったが。
「ね、行ってみよう」
夕子につられて廊下の角を曲がって109号室に行くと、すでに数人の生徒がドアのところに集まって、なかの様子に聞き耳をたてている。ドアはかすかに開いているので、怒鳴り声が外まで丸聞こえだ。
「嫌だったら! 絶対に嫌!」
「何言っているの、規則でしょう。いらっしゃい」
そんなやりとりが聞こえてくる。
「うわぁ、やるねぇ、雪葉」
夕子の目は楽しそうに輝いているが、口調にはどこか感嘆もまじっている。
「こっちへいらっしゃい!」
「いや!」
その後、びっくりするような雪葉の悲鳴が聞こえ、その場にいた生徒たちは全員凍り付いてしまった。
「あなたたち、何をしているんですか、さっさと部屋に戻りなさい!」
ドアから出てきた学院長のその声で皆逃げるように去ろうとした。だが、シスター・アグネスによって美波と夕子は呼び止められた。
「あなたたちは掃除をしなさい」
命じられて奇妙に思いながらおずおずと部屋に入った二人は、室に散らばる黒髪を見て仰天した。
さらに部屋の中央では美波がうずくまって泣いており、あの長かった髪は無残に短く切られている。美波はぞっとした。
無理やり切られたのだ。
こんなことが今時、本当にあるのだろうか。美波は異様なものを見た衝撃に立ち尽くしていた。
「……ちょっと、大丈夫?」
夕子が訊くが、雪葉にはまるで聞こえていないようだ。
「うー! うう!」
どうも様子がおかしい。
「シスターを呼んでくるわ」
あんなことがあった後でも、シスターに頼るしかないのが悔しいが、雪葉の様子は尋常ではない。美波はあわて
てシスターを呼びに廊下に出た。
長い廊下を走り、舎監が詰めている一階の部屋のドアをノックすると、出てきたのは初老になろうかというシスター・グレイスだ。彼女は校医も兼ねている。
「どうしました?」
「え?」 思わず美波はぎょっとした。
「ほら、雪葉、髪切りに行かないといけないのに行かなかったじゃない? それでシスター・アグネスが怒ってしまってさ。学院長まで来ているらしいよ」
やっぱり、という思いが美波の胸にせまる。あのまま済むとは思わなかったが。
「ね、行ってみよう」
夕子につられて廊下の角を曲がって109号室に行くと、すでに数人の生徒がドアのところに集まって、なかの様子に聞き耳をたてている。ドアはかすかに開いているので、怒鳴り声が外まで丸聞こえだ。
「嫌だったら! 絶対に嫌!」
「何言っているの、規則でしょう。いらっしゃい」
そんなやりとりが聞こえてくる。
「うわぁ、やるねぇ、雪葉」
夕子の目は楽しそうに輝いているが、口調にはどこか感嘆もまじっている。
「こっちへいらっしゃい!」
「いや!」
その後、びっくりするような雪葉の悲鳴が聞こえ、その場にいた生徒たちは全員凍り付いてしまった。
「あなたたち、何をしているんですか、さっさと部屋に戻りなさい!」
ドアから出てきた学院長のその声で皆逃げるように去ろうとした。だが、シスター・アグネスによって美波と夕子は呼び止められた。
「あなたたちは掃除をしなさい」
命じられて奇妙に思いながらおずおずと部屋に入った二人は、室に散らばる黒髪を見て仰天した。
さらに部屋の中央では美波がうずくまって泣いており、あの長かった髪は無残に短く切られている。美波はぞっとした。
無理やり切られたのだ。
こんなことが今時、本当にあるのだろうか。美波は異様なものを見た衝撃に立ち尽くしていた。
「……ちょっと、大丈夫?」
夕子が訊くが、雪葉にはまるで聞こえていないようだ。
「うー! うう!」
どうも様子がおかしい。
「シスターを呼んでくるわ」
あんなことがあった後でも、シスターに頼るしかないのが悔しいが、雪葉の様子は尋常ではない。美波はあわて
てシスターを呼びに廊下に出た。
長い廊下を走り、舎監が詰めている一階の部屋のドアをノックすると、出てきたのは初老になろうかというシスター・グレイスだ。彼女は校医も兼ねている。
「どうしました?」
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