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三
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「本当に」
美波は溜息を吐きそうになった。
「集団生活って、いろいろ大変そうだもんね。ここって部屋も共同なんだろう?」
「はい。わたしは同じ新入生と同室です」
「へー。ということは……ずっと空いているっていう109号室?」
気のせいか司城の声がかすかに固く聞こえる。
「いえ、わたしは101号室で、そこはもう一人のべつの新入生が使っています」
とりとめもない会話でも、同性とするのとはどこか違う感じで、美波は胸がはずむのを自覚した。
「家からはなれて寂しくないかい?」
「いえ、そんなに」
それは事実だった。外の世界が恋しくなっても、それは以前の学校生活であったり、自由気ままに動くことのできた生活であり、家そのものはそれほど恋しくならない。
「ボーイフレンドに会いたくなったりしない?」
「ボーイフレンドなんて、」
そんなものはいない、という言葉がなぜか喉でつっかえて出てこない。そこで一瞬、会話はとだえ、司城は別の話を切りだした。
「友達はもうできたの?」
「えーと、友達っていうのか、よく話す子はいます」
同室の夕子、同じクラスの晃子、そして雪葉。そういえば雪葉はどうしているのだろう。まだ来ない。美波が来たときでさえもう終わりの方だったのに、彼女はいまだに姿を見せない。
「もう一人来るはずなんだけれど……」
「まだ来ないね。僕らは五時半になったら帰らないといけないんだけど」
司城が眉をややしかめ、壁の時計を見上げる。時計は五時五分を示していた。
「ちなみに、その子何号室?」
「109号室です」
「……ふうん。今日はもう来ないかな。今日来ないとなると、再来週になるね」
「再来週も来るんですか?」
美波の胸はまたはずんだ。変な意味でなく、外の空気をまとった人、それも若い男性が来るのはやはり心浮き立つ。
「多分、その109号室の生徒さんは再来週に当たっているんじゃないかな」
「そうかも……」
しかし、シスターたちやジュニア・シスターに幾度も髪を切るように注意されてきたはずだ。今日来なくていいのだろうか。美波は気が揉めてきた。
夕食まで間がある。美波は急いで晃子の部屋に向かった。ドアをノックしてから、返事を待つことなく部屋に入る。この寮では部屋に鍵はついていない。
「晃子、どうしたの? 今日髪を切りに来るんじゃなかったの?」
美波は溜息を吐きそうになった。
「集団生活って、いろいろ大変そうだもんね。ここって部屋も共同なんだろう?」
「はい。わたしは同じ新入生と同室です」
「へー。ということは……ずっと空いているっていう109号室?」
気のせいか司城の声がかすかに固く聞こえる。
「いえ、わたしは101号室で、そこはもう一人のべつの新入生が使っています」
とりとめもない会話でも、同性とするのとはどこか違う感じで、美波は胸がはずむのを自覚した。
「家からはなれて寂しくないかい?」
「いえ、そんなに」
それは事実だった。外の世界が恋しくなっても、それは以前の学校生活であったり、自由気ままに動くことのできた生活であり、家そのものはそれほど恋しくならない。
「ボーイフレンドに会いたくなったりしない?」
「ボーイフレンドなんて、」
そんなものはいない、という言葉がなぜか喉でつっかえて出てこない。そこで一瞬、会話はとだえ、司城は別の話を切りだした。
「友達はもうできたの?」
「えーと、友達っていうのか、よく話す子はいます」
同室の夕子、同じクラスの晃子、そして雪葉。そういえば雪葉はどうしているのだろう。まだ来ない。美波が来たときでさえもう終わりの方だったのに、彼女はいまだに姿を見せない。
「もう一人来るはずなんだけれど……」
「まだ来ないね。僕らは五時半になったら帰らないといけないんだけど」
司城が眉をややしかめ、壁の時計を見上げる。時計は五時五分を示していた。
「ちなみに、その子何号室?」
「109号室です」
「……ふうん。今日はもう来ないかな。今日来ないとなると、再来週になるね」
「再来週も来るんですか?」
美波の胸はまたはずんだ。変な意味でなく、外の空気をまとった人、それも若い男性が来るのはやはり心浮き立つ。
「多分、その109号室の生徒さんは再来週に当たっているんじゃないかな」
「そうかも……」
しかし、シスターたちやジュニア・シスターに幾度も髪を切るように注意されてきたはずだ。今日来なくていいのだろうか。美波は気が揉めてきた。
夕食まで間がある。美波は急いで晃子の部屋に向かった。ドアをノックしてから、返事を待つことなく部屋に入る。この寮では部屋に鍵はついていない。
「晃子、どうしたの? 今日髪を切りに来るんじゃなかったの?」
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