聖白薔薇少女 

平坂 静音

文字の大きさ
上 下
19 / 210

しおりを挟む
 美波はあわてて返事をし、夕子もそっけないが普通に言葉をかえす。だが、ここでもまた例の質問をされた。

「……ミス・サイジョウ……雪葉ゆきはさんは一緒じゃないのしら?」

「えーと、あの、わたしたちも会ってないんです」

 しどろもどろになる美波にかわって裕佳子が口をはさんだ。

「ミス・サイジョウは遅刻みたいです。今日じゅうには来るとは思うのですが」

「まあ、そう」

 ここでシスター・マーガレットも表情が変わるのかと美波は思ったが、彼女は微苦笑を浮かべただけなので安堵した。

「お二人とも今日から聖ホワイト・ローズ学院の生徒なのですから、そのことを自覚して誇りをもってくださいね」

「は、はい」

「はあ」

 二人はそれぞれ返事をする。

「では、来週になったら早速、最初のカウンセリングをしましょうね」

「あ、はい」

 つられるように了解してしまった美波とはちがって、夕子は反抗した。

「あたしは別に相談することもなければ、悩みもないんですけれど、受けなきゃダメなんですか?」

 ほほほほほ……。シスター・マーガレットはなごやかに笑う。

「最初は皆そう言うのよ。でも、よく考えてみて。ここへ来たのは、過去を捨てて新しく生まれ変わるためでしょう? そのためにもカウンセリングは必要なことなのよ」

 ここでもまた気になる、というかかなり神経を引掻ひっかかれる言葉を耳にし、美波は内心でうなっていた。いったいどういう意味なのだと訊きたい想いでいっぱいだが口が開かない。

「それにね、カウンセリングといっても、そんな難しいものではなく、まぁ、皆で少しお喋りするぐらいのことだと思っていてちょうだい」

 スタンドグラスから差し込む七色の光が、シスター・マーガレットの白い頬をほのかに照らす。

「皆って、つまり、一対一でのカウンセリングではないんですか?」

 気になって問う美波に、シスター・マーガレットはまた笑ってみせる。

「一対一で行うこともたまにありますが、通常は三人から五人ぐらいで行います。その方が気楽でいいでしょう? 友人同士理解もふかまるし」

 それ以上はなにも言えず、二人とも曖昧に頷いていた。




「あー、なんか、とんでもない所に来た!」
 
 スプリングを揺らしてベッドに腰を落とすと夕子が溜息をついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

彼女は処女じゃなかった

かめのこたろう
現代文学
ああああ

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...