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九
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美波はあわてて返事をし、夕子もそっけないが普通に言葉をかえす。だが、ここでもまた例の質問をされた。
「……ミス・サイジョウ……雪葉さんは一緒じゃないのしら?」
「えーと、あの、わたしたちも会ってないんです」
しどろもどろになる美波にかわって裕佳子が口をはさんだ。
「ミス・サイジョウは遅刻みたいです。今日じゅうには来るとは思うのですが」
「まあ、そう」
ここでシスター・マーガレットも表情が変わるのかと美波は思ったが、彼女は微苦笑を浮かべただけなので安堵した。
「お二人とも今日から聖ホワイト・ローズ学院の生徒なのですから、そのことを自覚して誇りをもってくださいね」
「は、はい」
「はあ」
二人はそれぞれ返事をする。
「では、来週になったら早速、最初のカウンセリングをしましょうね」
「あ、はい」
つられるように了解してしまった美波とはちがって、夕子は反抗した。
「あたしは別に相談することもなければ、悩みもないんですけれど、受けなきゃダメなんですか?」
ほほほほほ……。シスター・マーガレットはなごやかに笑う。
「最初は皆そう言うのよ。でも、よく考えてみて。ここへ来たのは、過去を捨てて新しく生まれ変わるためでしょう? そのためにもカウンセリングは必要なことなのよ」
ここでもまた気になる、というかかなり神経を引掻かれる言葉を耳にし、美波は内心でうなっていた。いったいどういう意味なのだと訊きたい想いでいっぱいだが口が開かない。
「それにね、カウンセリングといっても、そんな難しいものではなく、まぁ、皆で少しお喋りするぐらいのことだと思っていてちょうだい」
スタンドグラスから差し込む七色の光が、シスター・マーガレットの白い頬をほのかに照らす。
「皆って、つまり、一対一でのカウンセリングではないんですか?」
気になって問う美波に、シスター・マーガレットはまた笑ってみせる。
「一対一で行うこともたまにありますが、通常は三人から五人ぐらいで行います。その方が気楽でいいでしょう? 友人同士理解もふかまるし」
それ以上はなにも言えず、二人とも曖昧に頷いていた。
「あー、なんか、とんでもない所に来た!」
スプリングを揺らしてベッドに腰を落とすと夕子が溜息をついた。
「……ミス・サイジョウ……雪葉さんは一緒じゃないのしら?」
「えーと、あの、わたしたちも会ってないんです」
しどろもどろになる美波にかわって裕佳子が口をはさんだ。
「ミス・サイジョウは遅刻みたいです。今日じゅうには来るとは思うのですが」
「まあ、そう」
ここでシスター・マーガレットも表情が変わるのかと美波は思ったが、彼女は微苦笑を浮かべただけなので安堵した。
「お二人とも今日から聖ホワイト・ローズ学院の生徒なのですから、そのことを自覚して誇りをもってくださいね」
「は、はい」
「はあ」
二人はそれぞれ返事をする。
「では、来週になったら早速、最初のカウンセリングをしましょうね」
「あ、はい」
つられるように了解してしまった美波とはちがって、夕子は反抗した。
「あたしは別に相談することもなければ、悩みもないんですけれど、受けなきゃダメなんですか?」
ほほほほほ……。シスター・マーガレットはなごやかに笑う。
「最初は皆そう言うのよ。でも、よく考えてみて。ここへ来たのは、過去を捨てて新しく生まれ変わるためでしょう? そのためにもカウンセリングは必要なことなのよ」
ここでもまた気になる、というかかなり神経を引掻かれる言葉を耳にし、美波は内心でうなっていた。いったいどういう意味なのだと訊きたい想いでいっぱいだが口が開かない。
「それにね、カウンセリングといっても、そんな難しいものではなく、まぁ、皆で少しお喋りするぐらいのことだと思っていてちょうだい」
スタンドグラスから差し込む七色の光が、シスター・マーガレットの白い頬をほのかに照らす。
「皆って、つまり、一対一でのカウンセリングではないんですか?」
気になって問う美波に、シスター・マーガレットはまた笑ってみせる。
「一対一で行うこともたまにありますが、通常は三人から五人ぐらいで行います。その方が気楽でいいでしょう? 友人同士理解もふかまるし」
それ以上はなにも言えず、二人とも曖昧に頷いていた。
「あー、なんか、とんでもない所に来た!」
スプリングを揺らしてベッドに腰を落とすと夕子が溜息をついた。
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