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8巻
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三寒四温の候、皆様、健やかにお過ごしでしょうか。
トンデモ異世界マデウスに来てから早いものでもうすぐ一年。素材採取家としてマイペースに冒険者をやっている、タケルです。俺は、元気です。
マデウスに転生し、東の大陸グラン・リオの北端にある、辺境ド田舎トルミ村に降り立ったのがつい昨日のことのように思います。
信頼できる仲間ができました。頼り頼られる友人もできました。くだらないことで笑い合える友がいるのは恵まれていることなのだなと、強く思うようになりました。
そりゃそうだよな。
マデウスでは町の外を歩くだけで命の危険があるのだから、友人とはすなわち背中を預けられる大切な存在にもなるわけだ。
そんな頼りがいのある仲間と共に日々危険な依頼に出向いているのだが、仲間というのは親密になればなるほど遠慮がなくなっていくもの。ええ、そうです。アイツら俺のこと料理人としか思っていないんだ。獰猛なモンスターが襲ってきたら、まず俺に食えるか食えないかの判断を仰ぐ。そこまではいい。食えると判断したらば、味付けやら焼き加減やら事細かに注文をつけ、戦闘中なのに早く作れと言い出す始末。
ほんともうマイペースで自己中すぎて困る。それを許している俺がいちばん馬鹿。それはわかっている。嗚呼、嗚呼。
だがしかし、そんな日々を送れていることが幸せなのだなと。
俺は最近になって思うことができた。
不思議世界トンデモマデウスに染まりつつあるということだろうか。
なんてな。
1 凍雲、白く大地染め
冬が来た。
異世界マデウスにも四季があり、春夏秋冬がある。
春に咲く花が咲いたら春が来た。夏に実る作物が採れたら夏になった。枯葉が舞い散る姿を見て精霊の祭りと言っては秋を感じ、雪が降ったら大地が休息する冬が訪れた証拠。
そんなふうに感覚的に四季を捉える一方で、グラン・リオ大陸の大半を統べるアルツェリオ王国内では、暦が定められている。
だが、それが必要とされているのは、王都近辺や大都市のみ。
小さな村や集落ではまだまだ一般的でない。肌を掠める風や木々の色づき、作物の育ち具合などから季節の微妙な変化を感じているのだ。
アルツェリオ王国の首都、王都エクサルに滞在していた俺たち冒険者チーム「蒼黒の団」は、国王であるレットンヴァイアー陛下の命を救い、王国内に巣食う悪しき者ども(クレイ談)を断罪することに成功。これは素晴らしい働きだということで、陛下から「黄金竜」という名の称号をいただいた。
国内最高峰の称号である黄金竜が、冒険者チームに与えられるのは史上初。とても名誉なことでとても誇らしいことではあるが、おかげで依頼が受けづらくなってしまった。
黄金竜をいただいた冒険者チームに、素材採取のような簡単でつまらん依頼なんぞもったいないのだとか。
その代わりに、貴族の見栄や自尊心を満たすための夜会や晩餐会に出席せよとの依頼が押し寄せた。
素材採取家である俺に素材採取をさせるな等とふざけた話だし、王都に滞在する限り俺たち蒼黒の団は、貴族たちの見栄の道具にされてしまう。
そんなわけで、雪が降る前にチームの拠点があるトルミ村に帰ろうということになった。
トルミ村に帰る前にベルカイムに寄り、頼まれていた土産物をギルドに置いていこうとしたらば――
「おうタケル! 聞いたぞ、黄金竜だって?」
「すっげぇよな! 黄金竜だぜ? 冒険者チームで史上初! さっすが栄誉の竜王!」
「えっ? それってすごいことなの?」
「バッキャロー、お貴族様が大金出したって貰えねぇ、とんでもねぇ代物なんだぜ!」
ベルカイムの大門に馬車を寄せたと同時に、顔見知りの警備隊が一斉に飛び出した。
彼らは馬車を取り囲んで、口々に俺たちを褒め称える。
やれ黄金竜はどういう竜なんだとか、王様は恰好よかったのかとか、報奨金はいくら貰ったんだとか。
あれれこれはどうしたことかと不思議に思いつつ、俺たちは馬車に乗車したままギルド「エウロパ」に向かった。
そしてギルドの裏口に馬車を停車させて内部をこそこそとうかがうと、そこは大量のやじ馬で溢れ返っていた。
広いギルドの受付には、明らかに冒険者ではないだろう一般人も押し寄せている。ギルド職員たちはその対応に必死で、まるでベルカイムにゴブリンが攻めてきた時のような慌て様だ。
緊急の依頼でも飛び込んできたのかと思えば――こちらでも人々は大門と同じように黄金竜について口にしていた。
無駄口を叩いている冒険者が大嫌いな熊獣人のウェイドが、ギルドの受付前の壁を叩き壊す勢いで殴りつける。
「用のないヤツらは出ていけ! オラァ! 依頼を受けないヤツらも邪魔だ!」
ギルドの事務主任のウェイドはイラついていた。大きな拳を叩きつけた壁は、ぼこりと穴が開いてしまっている。
ウェイドの怒鳴り声は、ギルドマスターのロドルより迫力がある。
ギルドの窓ガラスがびりびりと振動し、ウェイドの怒鳴り声に慣れていない一般人は蜘蛛の子を散らすように出ていった。
なんというか、今更ながら黄金竜ってすごいんだなと……
俺たちが黄金竜を授かったという情報は、王都にあるギルドからどうにかこうにかしてベルカイムのギルドへと伝えられたのだろう。人々は皆口々に黄金竜はどんな竜なのかと言っている。
いやいや、黄金竜は称号の名前であって、ビーのような生きた竜ではないからな。
アルツェリオ王国の大公閣下であるグランツ卿が無理やり押し付けてきた――と言うとクレイが怒るので黙っておく――名誉ある称号だが、こうも周りが騒がしくなってしまうのは困りものだ。
そんなわけで俺たちは裏口に馬車を停めたまま降りずにいたのだが、それを見つけたのは、受付主任で狐獣人のグリッドだった。
「……タケルさん? クレイストンさん? 皆さん、ご乗車されていますか?」
グリッドは大きな身体を屈め、こそこそと移動し、誰も座っていない御者台に向かって声をかけてくれた。
「はいはい、グリッドさん、ただいま」
御者台の後ろにある窓を少しだけ開き、俺は顔だけ出してグリッドの声に応える。
グリッドは満面の笑みを浮かべるのと同時に、立派な耳と尻尾をこれでもかと垂らし、深々と頭を下げた。
「お帰りなさい皆さん、お疲れ様でした」
「大門の警備隊も知っていたようだけど、グリッドさんも黄金竜については知っている……よな?」
「申し訳ありません。それにつきましては、全て私の監督不行き届きなのです……」
グリッドは騒ぎについて察してくれたのだろう。ますます頭を下げ、地面につける勢いだったが、俺はそれを制する。
心底申し訳なさそうに話を続けたグリッドによると、真相はこうだ。
俺の予想通り、王都のギルドから伝達があったらしい。エウロパ所属の冒険者チーム、蒼黒の団が王様より黄金竜の称号をいただいたと。
前代未聞の情報に引っくり返るほど驚いたのが、たまたま情報を受けた事務員の少年。その少年が情報の確認をと頼ったのが、お喋り好きな受付事務員の少女だった。
ギルド内の情報は秘匿義務があり、うかつに外部に漏らしてはならない。誰かの命に関わるような事態になるかもしれないからだ。
だがしかし、この少女は喜ばしい情報だと考えて大声で叫んでしまった。
大声で叫んだ場所は、ギルドの受付で……
「あちゃー……」
「ピュゥゥ……」
王都でも似たようなことがあったなと、俺とビーは頭を抱えた。
+ + + + +
「すまねえ!」
ギルド専用の厩から事務所内に入り、三階にあるギルドマスターの執務室に移動した俺たちを待っていたのは、巨人の謝罪。
ギルドマスターである巨人族のおっさん、ロドルは偉そうに胸を張って笑った。それ、謝罪とは思えないぞ。
「俺ぁ頭を下げることに慣れてねぇんだ。まあ許せ」
「マスター! それではちっとも謝罪になりませんよ! 申し訳ありません皆さん」
笑い続けるおっさんを叱り、代わりとばかりに頭を下げるグリッド。
「グリッドよ、我らに謝罪など無用。悪気があったわけではなかろう? 済んだことをとやかく言うても仕方がない」
そう言って苦く笑うクレイは窓辺に立ち、外の景色を眺めている。ギルド一階の受付はまだ騒がしいようだ。
「ほうらグリッド、栄誉の竜王は狭量な男ではないと言っただろう?」
「それにしても、我々の失態であることに変わりはありません。まったく、新人教育をウェイドに任せていたツケが回ってきたということですね」
「ショゲるなショゲるな! だけどな、黄金竜の授与っつったら……平穏な世の中になってからはじめてのことなんだぜ? 誰もが喜ぶってもんだろうが」
「それはそうですが」
「飴ちゃんをもっとよこしなさい」
プニさん空気読んで。
おっさんとグリッドの会話に割り込んだプニさんは、大皿に出された飴玉だけを食べ尽くして両手を差し出した。
俺は鞄から飴玉の入ったガラス瓶を出し、それをブロライトに手渡す。ブロライトは心得たとばかりに飴玉を取り出してプニさんに与えた。
「ロドルよ。我らがベルカイムに寄ったのは、頼まれた荷を届けに来ただけだ。しばらくはトルミの拠点へと戻り、そこで冬を越そうと思う」
クレイはそう言って背負っていた荷袋を床に下ろすと、中を開いて確認させる。中身は、ギルド職員があれやこれやと注文してきた王都土産だ。
「越冬はベルカイムでなさるのだとばかり……いいえ、そういうわけにもいきませんよね。せっかく立派な拠点をお造りになられたのですから、そちらで休まれたほうが良いでしょう」
とても残念ですが……と言ってグリッドは微笑んだ。
続けてロドルが言う。
「この騒ぎもヌクヌクの花が咲く頃にゃ静まると思うぜ」
ヌクヌクの花は春にだけ咲く青い花だ。蜜が甘くて美味い。
クレイに渡された荷袋の中身を確認しながら、ロドルは懐から丸い石を取り出した。占いで使われるような、水晶玉に似ている。
「タケル、こいつをテメェに預ける」
そう言ってロドルから手渡されたそれは、わずかな魔力を帯びていた。
何かしらの魔道具なんだろうなと、ロドルの説明を黙って聞いたのだった。
2 雪原の、真白の世界に咲く泡と
グラン・リオ大陸北部にある、ルセウヴァッハ領。
南北に長いこの大陸の最北端に位置するここは、冬になると雪と氷に支配される。アルツェリオ王国内全土に雪が降るのかと思いきや、南部にある王都エクサルではほとんど降らないらしい。まるで日本列島のようだな、なんて。
懐かしの故郷に思いを馳せつつ、トルミ村に温泉を造っておいて良かったなと心底思った。冬を迎えたトルミ村で室内で身体を拭くだけの日々。そんなの俺は耐えられそうにない。
俺たちは今、雪に覆われたトルミ村に来ている。
曇天の分厚い空からちらちらと白い雪が舞い落ち、大地を純白へと変えていく。
三日連続で降り続いた粉雪は、はじめこそ綺麗だと思っていたが、こうも降り続けると飽きる。寒いし。
身の丈を超えるドカ雪ではないけれど、雪が降れば必ず積もった。寒さはじっとりと手足の末端から冷えていくような感じ。とんでもなく寒くて家の外に出たら即死、なんて気温にならなくて良かった。ほんと良かった。
冬の間は屋内でひっそりと過ごし、屋内でできる仕事をするらしい。冒険者業も休む者が多いとのこと。
トルミ村では、人々は主に編み物や干物の加工、木工細工などをして過ごす。
だが俺はじっとしているのは性に合わない。そりゃぐうたらするのは好きだが、四日も続ければ飽きる。
そんなわけで暖かく過ごせるよう、徹底的に防寒対策をしまくった。
トルミ村の全戸を修復し、隙間風を完全封印。全ての家々にはもともと暖炉があったけど、その暖炉には長く燃え続けるダウラギリクラブの甲羅を配布。おまけに一定の温度を発し続ける小さな加熱の魔石を精製。暖かさが全身を包み込むよう、結界効果も追加した。
この魔石を毛糸で編んだ巾着に入れれば、携帯懐炉のできあがり。巾着を作ったのは編み物上手なエリザ。いつも俺の靴下を編んでくれる人。この携帯懐炉が大評判でしてね。
そもそも寒さが苦手なクレイに作ってやったものなんだけど、ブロライトが面白がって欲しいと言ったのだ。ブロライトが持つのならわたくしも持ちましょう、なんて訳わからんことをプニさんが言い出し、仲間外れはずるいとビーが抗議。
結局、自分たち全員のぶんを作って携帯していたわけだが、寒さに震えていた村の子供たちを見つけて俺の良心がちくちくしたわけで――
「これで何個目? あと何個作ればいい?」
大きなビー玉サイズの加熱魔石を数えきれないくらい作り、うんざりしながらブロライトに問う。
ブロライトは両手の指を使って数え、宙を見つめてうーんと考え、ニカッと笑った。
「あと八十ほどじゃな!」
そんな元気いっぱいの笑顔で言うんじゃない。
既に三百個以上は作っているというのに、まだそんなにあるのか。
朝から集中して魔石ばかり作っているから、そろそろくたびれた。俺の魔力は無尽蔵じゃないんだよ。
なんて心の中で愚痴りながらうんざり顔をして肩を落としていると、囲炉裏で魚を焼いていたセレナが言った。
「あはははっ、タケル、あんたが言い出しっぺじゃないか。あたしたちはとってもありがたいから、頑張れとしか言えないよ」
セレナはトルミ村レインボーシープ飼育係の一人であり、エリザの親友。トルミ村奥様軍団の筆頭でもあり、村の女性たちのまとめ役でもある。ちなみに、トルミ村村長の奥方様。恰幅の宜しい巨体をゆさゆさと揺らしながら豪快に笑った。
彼女の言う通り、言い出しっぺは俺だ。トルミ村の全住人と、ヴィリオ・ラ・イとフルゴルの郷に住むエルフたちの携帯懐炉を作ろうと提案したのだ。
トルミ村を住み心地よい安全な場所に変えてくれた恩は、エルフたちにまだまだ返せていない。いくら寒暖に強いエルフとはいえ、それでも寒いのが苦手な者もいる。それなら携帯懐炉をあげようと俺が言ったらば、我も手伝うと村の半数以上の住人が手を挙げてくれた。
「頑張るよ……頑張るけども、ちょっと休憩!」
麦茶の匂いがする畳に大の字に寝ころぶと、待ってましたと子供たちが集まってきた。子供たちは、ブロライトが王都で購入し、土産としてあげたカードゲームを手に、遊ぼうと誘う。
土間で遊んでいた子供たちは、半袖短パンという軽装だ。
俺たちが暖を取り、俺が必死に携帯加熱魔石を作っているここは、トルミ村にあるチーム蒼黒の団所有の屋敷。
一階の大広間は村の住民に開放していて、常日頃から人々が集まり、憩いの場として重宝されている。
広間中央の大きな囲炉裏では、焼き魚や焼き芋、鍋料理などが作れる。囲炉裏の熱だけでも暖かいのに、部屋の隅に配置した加熱魔石を利用した暖房器具のおかげで、室内は汗ばむほどの暖かさ。
村人たちは蒼黒の団が屋敷にいる時は遠慮をして大広間に来ないが、今日は手分けして毛糸の巾着を作るために集まっている。編み物が得意な女性と、手先が器用な男性が数名。あと寒いのが苦手な年寄りや子供たちなどなど、数十名が集っていた。まるで町内の公民館。
ブロライトとプニさんとビーはこの場でくつろぎ、クレイは村の地下空間に造ったレインボーシープの小屋で飼育担当エルフたちの手伝い中。昨日は俺が掃除の担当だった。
「おうタケル、茶が入っているから飲めよ」
「タケルさん、焼いたココの実をお食べよ。甘くて美味しいよ」
「プニちゃんもお食べ。アンタ、こういうの絶対に好きだからね。冷たいのとどっちが好きだい?」
寝ころんだまま子供たちとカードゲームをはじめた俺に、村人たちが、温かなお茶や甘い木の実を出してくれた。
俺たちチームにとっても、ここは憩いの場。
俺たちがトルミ村のこの屋敷に滞在するたび、村人たちは交代で家事や炊事を引き受けてくれるのだ。そんなの気にしなくていいと言っているのに、普段危険な仕事をしているのだから、ここにいる間はとにかく気を抜いてくつろいでくれと。
はじめこそ気を遣っていたが、今はもう既に実家状態。三食炊事の心配をしなくていいって、これ最高。上げ膳据え膳超最高。
「むっ……これは甘いです。もっとよこしなさい。わたくしは温かいほうが好きです」
「あははっ、そうかいそうかい! きっとプニちゃんが気に入ると思って、行商人からたくさん仕入れておいたんだよ」
馬の神様であるプニさんは、無感動無表情なのになぜか気に入られている。
村人たちからプニちゃんプニちゃんと気安く呼ばれ、料理の味見などを頼まれるのだ。料理を作る者たちは舌が肥えているプニさんを喜ばそうと、美味しいものを食べた時の微笑みを見ようと、より美味しいものを競って作るようになった。
おかげでトルミ村で作られる料理はどんどん美味しくなり、村人たちはちょっとだけ肥えた気がする。
「ねえねえタケル兄ちゃん、もっかい見せて。真っ赤な石が光るの」
「あたしも見たい」
カードゲームに飽きた無垢な子供たちは俺に魔石を作れと無邪気にせがんできた。手のひらの上で作られる魔石は、輝きを放ちながら次第に大きく丸く姿を変える。その工程が面白いようだ。
魔石を作り出すのは難しい作業ではない。いや、実際はとてつもなく難しく、修業を重ねた一部の魔導士や錬金術師が作り出す特別なものなのだとクレイに叱られ頭を殴られた。なぜに殴る。
恐ろしく難解な作業らしいのだが、できるもんはできるのだから仕方がない。
魔石とはすなわち乾電池のようなもの。魔道具という名の機械を動かす動力源だな。何を目的として作るのかが大切で、握り飯を作る工程と似ている――と、クレイに言ったら再び頭を殴られた。酷い。
口で説明するのは難しいんだ。こう、両手でおにぎりを作る形を取るだろう? んで、空気を固めるイメージで意識を集中。加熱魔石を作りたい。暖かくなるようにしたいと電球のフィラメントを想像して、こねくりこねくり。
一定の大きさになったら身体全部を包む結界を追加し、こねくりこねくり。
全ては強い想像力。映画で魔法使いとかが魔法を使う時、こういうふうにしていたじゃないか。
ミスリル魔鉱石のような媒体魔石があれば作業はもっと楽になるのだが、貴重な品をホイホイと使うなと雑貨屋の主人ジェロムに叱られた。足りなくなったらボルさん家に貰いに行けばいいと言ったら、クレイにまた頭を殴られた。理不尽。
「ふわああ……あったかくなってきた!」
「ここ、あたしここがいちばん好き! 綺麗ねえ、夕焼けみたい」
「みーえーなーい! あたま邪魔ー!」
魔石作りは集中しなけりゃならんというのに、お子様たちの騒ぐ声がすさまじい。これで三百数十個目の魔石作りにもかかわらず、まったく飽きずに作業を見守ってくれている。黙ってくれたらありがたいのだが、この騒がしい声にも慣れてしまった。
一つを作り出すのに数分。はじめはもっと時間がかかっていたが、今ではプロ並みの腕前。プロの魔石職人が魔石を作り出すのにどんくらい時間を要するのかはわからないけども。
輝きを放っていた魔石が次第に光を失い、深紅の塊になったらできあがり。
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