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幼馴染という呪い
2.
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フェンガリの視線から隠すように扉に手をかけたセオドアの背後、薄闇に溶けるように生白い足が見えた。
そうだった……。 ここからも、声が、声がしていて。またこんな所で盛っているのかと、うんざりしていたのだ。そうだよ、ここに来てから、もううんざりするくらい見慣れてることだ。それがセオドアだったからって今更動揺するような事でも無い……。
「…… ぐっ! 」
そう思うのに、正直な体からは、抑えようもない吐き気が込み上げてきた。
思わず目の前の男を突き飛ばすように身を離す。そして、彼からできる限りの距離を取るように、フェンガリは小さく壁際に蹲った。目を固く閉じて俯き、頸に神威が集まるのを待つ。そのまま苦痛を散らすように女神の権能の慰撫にすがる。
「おいっ! 大丈夫か?! 」
近づいてくる足音に鳥肌が立った。気持ちがわるい。触れられたく無い。
―― 魔法士が俺に触れるな!!!
「うわっ!! 」
拒絶するフェンガリの心を受けるように、神力がセオドアを拒んでいる。
―― しまった!
今の神殿でこれほど女神に愛された愛し子は、大聖女の御子二人だけ。セオドアならその事実を知っていてもおかしくは無い。
身バレの懸念にフェンガリは、必死で神力を安定させると、何とか表情を取り繕って顔を上げた。
セオドアは神妙な顔で、右手を差し出した姿勢で固まっていた。
体調の悪くなった顔見知りを単純に心配したら、理不尽に弾かれたので、どうしたら良いか困惑している、というところか。
認識阻害の魔道具に改めて感謝をささげて、気合を入れて立ち上がる。
ふらつくな。笑え。
「うわー、恥ずかしいところをお見せしちゃいましたねー」
へらりと笑ったフェンガリはバツが悪いという仕草で頭をかく。
「あ、書類拾って頂いちゃってすみません」
助かりますと、差し出した指先が震えないように力を込める。
「ベンシャミン、あんた」
「や、過労ですかね、想定外に厄介ですよね、この砦」
ああ、お邪魔しちゃったみたいですみません。ここは後に回しますから。と何か言いたそうなセオドアを遮るように早口で告げた。
「ごゆっくり」
嫌味にならないように、注意深く笑みを浮かべると足速に踵を返す。
「お、おい! ベンシャミン、ちょっと待ってくれ」
なんか呼ばれているけど、知ったことでは無い。俺はあいつにとって今はフェンガリじゃないし、用事も無いのだから、これ以上調査の邪魔をされたくもない。
無視だ無視。しばらくすれば追い縋る声も聞こえなくなる。あの部屋にいた、少なくとも下半身裸の誰かを放置してまで追ってはこれまい。
ざまあみろ。
誰に向かって吠えるのか自分でも分からないけれど、フェンガリは虚空に向かって悪態をついた。
虚しかった。
そうだった……。 ここからも、声が、声がしていて。またこんな所で盛っているのかと、うんざりしていたのだ。そうだよ、ここに来てから、もううんざりするくらい見慣れてることだ。それがセオドアだったからって今更動揺するような事でも無い……。
「…… ぐっ! 」
そう思うのに、正直な体からは、抑えようもない吐き気が込み上げてきた。
思わず目の前の男を突き飛ばすように身を離す。そして、彼からできる限りの距離を取るように、フェンガリは小さく壁際に蹲った。目を固く閉じて俯き、頸に神威が集まるのを待つ。そのまま苦痛を散らすように女神の権能の慰撫にすがる。
「おいっ! 大丈夫か?! 」
近づいてくる足音に鳥肌が立った。気持ちがわるい。触れられたく無い。
―― 魔法士が俺に触れるな!!!
「うわっ!! 」
拒絶するフェンガリの心を受けるように、神力がセオドアを拒んでいる。
―― しまった!
今の神殿でこれほど女神に愛された愛し子は、大聖女の御子二人だけ。セオドアならその事実を知っていてもおかしくは無い。
身バレの懸念にフェンガリは、必死で神力を安定させると、何とか表情を取り繕って顔を上げた。
セオドアは神妙な顔で、右手を差し出した姿勢で固まっていた。
体調の悪くなった顔見知りを単純に心配したら、理不尽に弾かれたので、どうしたら良いか困惑している、というところか。
認識阻害の魔道具に改めて感謝をささげて、気合を入れて立ち上がる。
ふらつくな。笑え。
「うわー、恥ずかしいところをお見せしちゃいましたねー」
へらりと笑ったフェンガリはバツが悪いという仕草で頭をかく。
「あ、書類拾って頂いちゃってすみません」
助かりますと、差し出した指先が震えないように力を込める。
「ベンシャミン、あんた」
「や、過労ですかね、想定外に厄介ですよね、この砦」
ああ、お邪魔しちゃったみたいですみません。ここは後に回しますから。と何か言いたそうなセオドアを遮るように早口で告げた。
「ごゆっくり」
嫌味にならないように、注意深く笑みを浮かべると足速に踵を返す。
「お、おい! ベンシャミン、ちょっと待ってくれ」
なんか呼ばれているけど、知ったことでは無い。俺はあいつにとって今はフェンガリじゃないし、用事も無いのだから、これ以上調査の邪魔をされたくもない。
無視だ無視。しばらくすれば追い縋る声も聞こえなくなる。あの部屋にいた、少なくとも下半身裸の誰かを放置してまで追ってはこれまい。
ざまあみろ。
誰に向かって吠えるのか自分でも分からないけれど、フェンガリは虚空に向かって悪態をついた。
虚しかった。
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