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薊という名の加護で呪い

2.

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 フェンガリの魔光石は市販のものより魔力量が多い。通常の魔石に魔力を込めすぎると割れてしまう為、容量の大きさに耐えうる素材を探して、試行錯誤する中で出来た試作品だからだ。

 もう海獣の相手はうんざりだなあ、見て楽しいもんでもないというかぶっちゃけ見苦しいし、なんか哀れで居た堪れないし。

 フェンガリはそうして、また胸の奥でちりつき、喉元を焼きそうな感情にはあえて気づかぬふりをする。

 何よりここの連中は性処理というより、性依存に近いのではという懸念がフェンガリの脳裏には浮かんでいる。

 彼らに使った魔光石の残留で分かるが、本来なら発情するほどの量では無いのだ。

―― 個人差はあるとはいえ、これは行き過ぎだろう。

 事前調査などとまどろっこしい事をせず、直ぐに本体の視察を入れるべし。新人がそんなものに巻き込まれて要らぬ性癖を拗らせるのも良くない。

 今夜姉上に通信の術式を飛ばすか、と思考の海に沈んでいたフェンガリは反応が遅れた。

 タッタッタッと軽やかな足音が近づいて来たと思ったら肩を掴まれて、振り返らせる。

 フェンガリを見下ろすエメラルドの瞳。
 また込み上げてきた胸焼けに小さく唾を飲む。

 君は何も悪く無いのに。
 俺は君の前にはいられない。

 フェンガリの頸に、女神の神璽たる薊の花が、また密やかに咲いた。そして胃液に焼かれるフェンガリの喉を優しく清め続けている。

 取り返しのつかない凌辱にあいかけた、幼い姉弟を救ってくれた優しい聖女神様。
 
 認識阻害の眼鏡の影で、フェンガリば優しく女神にすがる。

 二度と会ってはいけない人なのに。なのに。

「…… どうして」

 俺は君の毒にしかなれないのに。
 会えて嬉しいなんて、とても言えない。
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