12 / 30
薊という名の加護で呪い
2.
しおりを挟む
フェンガリの魔光石は市販のものより魔力量が多い。通常の魔石に魔力を込めすぎると割れてしまう為、容量の大きさに耐えうる素材を探して、試行錯誤する中で出来た試作品だからだ。
もう海獣の相手はうんざりだなあ、見て楽しいもんでもないというかぶっちゃけ見苦しいし、なんか哀れで居た堪れないし。
フェンガリはそうして、また胸の奥でちりつき、喉元を焼きそうな感情にはあえて気づかぬふりをする。
何よりここの連中は性処理というより、性依存に近いのではという懸念がフェンガリの脳裏には浮かんでいる。
彼らに使った魔光石の残留で分かるが、本来なら発情するほどの量では無いのだ。
―― 個人差はあるとはいえ、これは行き過ぎだろう。
事前調査などとまどろっこしい事をせず、直ぐに本体の視察を入れるべし。新人がそんなものに巻き込まれて要らぬ性癖を拗らせるのも良くない。
今夜姉上に通信の術式を飛ばすか、と思考の海に沈んでいたフェンガリは反応が遅れた。
タッタッタッと軽やかな足音が近づいて来たと思ったら肩を掴まれて、振り返らせる。
フェンガリを見下ろすエメラルドの瞳。
また込み上げてきた胸焼けに小さく唾を飲む。
君は何も悪く無いのに。
俺は君の前にはいられない。
フェンガリの頸に、女神の神璽たる薊の花が、また密やかに咲いた。そして胃液に焼かれるフェンガリの喉を優しく清め続けている。
取り返しのつかない凌辱にあいかけた、幼い姉弟を救ってくれた優しい聖女神様。
認識阻害の眼鏡の影で、フェンガリば優しく女神にすがる。
二度と会ってはいけない人なのに。なのに。
「…… どうして」
俺は君の毒にしかなれないのに。
会えて嬉しいなんて、とても言えない。
もう海獣の相手はうんざりだなあ、見て楽しいもんでもないというかぶっちゃけ見苦しいし、なんか哀れで居た堪れないし。
フェンガリはそうして、また胸の奥でちりつき、喉元を焼きそうな感情にはあえて気づかぬふりをする。
何よりここの連中は性処理というより、性依存に近いのではという懸念がフェンガリの脳裏には浮かんでいる。
彼らに使った魔光石の残留で分かるが、本来なら発情するほどの量では無いのだ。
―― 個人差はあるとはいえ、これは行き過ぎだろう。
事前調査などとまどろっこしい事をせず、直ぐに本体の視察を入れるべし。新人がそんなものに巻き込まれて要らぬ性癖を拗らせるのも良くない。
今夜姉上に通信の術式を飛ばすか、と思考の海に沈んでいたフェンガリは反応が遅れた。
タッタッタッと軽やかな足音が近づいて来たと思ったら肩を掴まれて、振り返らせる。
フェンガリを見下ろすエメラルドの瞳。
また込み上げてきた胸焼けに小さく唾を飲む。
君は何も悪く無いのに。
俺は君の前にはいられない。
フェンガリの頸に、女神の神璽たる薊の花が、また密やかに咲いた。そして胃液に焼かれるフェンガリの喉を優しく清め続けている。
取り返しのつかない凌辱にあいかけた、幼い姉弟を救ってくれた優しい聖女神様。
認識阻害の眼鏡の影で、フェンガリば優しく女神にすがる。
二度と会ってはいけない人なのに。なのに。
「…… どうして」
俺は君の毒にしかなれないのに。
会えて嬉しいなんて、とても言えない。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
銀の森の蛇神と今宵も眠れぬ眠り姫
哀木ストリーム
BL
小さな国に、ある日降りかかった厄災。
誰もが悪夢に包まれると諦めた矢先、年若い魔法使いがその身を犠牲にして、国を守った。
彼は、死に直面する大きな魔法を使った瞬間に、神の使いである白蛇に守られ二十年もの間、深い眠りに付く。
そして二十年が過ぎ、目を覚ますと王子は自分より年上になっていて、隣国の王女と婚約していた。恋人さえ結婚している。
そんな彼を大人になった王子は押し倒す。
「俺に女の抱き方教えてよ」
抗うことも、受け止めることもできない。
それでも、守ると決めた王子だから。
今宵も私は、王子に身体を差し出す。
満月が落ちてきそうな夜、淡い光で照らされた、細くしなやかで美しいその身体に、ねっとりと捲きつくと、蛇は言う。
『あの時の様な厄災がまた来る。その身を捧げたならば、この国を、――王子を助けてやろう』
ユグラ国第一王子 アレイスター=フラメル(愛称:サフォー)(28) × 見習い魔術師 シアン = ハルネス(22)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる