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アンラッキースケベの呪い
1.
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―― 助けて女神様。
こんな時どんな顔をすればいいかわかりません!
うっかり、本当にうっかり破ってしまった防音結界は信じられないくらい薄っぺらかった。
そして、開け放った扉のその先で、複数の男たちに組み敷かれている金髪の青年には残念なことに見覚えがあった。
心の底から見間違いであって欲しかった。
フェンガリの記憶が確かなら、彼はおおよそ十五年ぶりに再会した従兄弟にみえるが、その従兄弟はガチむち汗まみれ半裸の男たちに囲まれて、煤けた台座の上に押さえつけられている。鼻息のリフレインが凄いです。
そして、ほぼ全裸の従兄弟は、今まさにその同僚だろう逞しい男の勃起しまくった陰茎挿入五秒前にみえる。
見たく無いけど見えてしまった。
扉をそっ閉じしたい衝動と戦いながら、フェンガリは加護を賜りし彼の女神様に無意識に祈っていた。
とにかくM字開脚はやめろ、と。
今すぐにでも帰りたい、心のそこから綺麗なお空が見たかった。
つらい。
フェンガリは女神の聖神殿に所属する聖魔術師である。本業は研究開発だが、フィールドワークが大好きなフェンガリは、お呼びがかかれば、現地調査にも気軽に応じている。
いかにも内勤らしい小柄な体型をしているくせに、新人が根を上げるような強行軍にも平気で着いてくるし、何日もテント暮らしになる野営も嫌がらない。
若い頃から美貌で評判だった母親ゆずりの綺麗な顔のせいで侮られがちだが、存外体力もあり、連れ回しても泣き言一つ言わないどころか、むしろ楽しそうに採取に夢中になっている姿に和む。と現場からの人気も高い。
本人は何でも屋なだけだと笑っているが、そんな暮らしを気に入っているらしく飄々と日々をこなしていた。
今回もお偉方も参加する本格的な視察の予備調査と、空席だった神官長の着任にあわせて、長らく閉鎖されてきた砦併設の神殿設備を確認して、掃除と必要な整備の手配を命じられている。
簡単なお仕事です、って言われたのに。
それなのに、ああそれなのにそれなのに。
扉を開けた時に、うっかり防音結界まで開けてしまったのは不可抗力です、いや簡単に破れすぎだろ、ぱりって飴細工かってくらい軽く割れたぞ。雑魚すぎる。
相手が雑魚なのでなく、自分の魔力が大物すぎる事に気づかない、そんなフェンガリは筋金入りの天然でも有名であった。
そして、とたんに響きだす野太い声に、ぎょっとして足がとまった。
長らく管理者不在で使用されなかった薄暗い室内は、窓には分厚い緞子のカーテンおろされたままで埃臭い。
その中で、ひとつだけ灯された魔導ランタンの明かりで埃除けの白布に、ゆらゆらと複数の影が妖しく踊っている。
床に脱ぎ捨てられている隊服は黒で、ここで発情期の獣のごとく淫らな叫びをあげ、夢中になって陰茎を立てている男たちが魔法士である事を示していた。
彼ら特有の魔力消費後に起きるという激しい性衝動は、長らく各界で注目される話題であった。
そして中央では既に推奨されなくなった、直接的な性行為による対症療法が、この辺境の砦ではいまだに主流らしかった。
フェンガリに気づいていはいない様子の彼らに、このまま踵を返して見なかった事にするかと一瞬逡巡する。
ここ数日、技術者としての目線で設備の点検から修理、備品の購入の確認に砦中を歩いた。
その際ここは海獣の展示施設だったかな? と首を傾げるほどに「おっ、お゛、あぉっーっ! お゛」とまるで発情期の海狗の群れの如き雄叫びを上げ、尻で繋がってる野郎どもを、それはそれ良く見かけたものだ。
いや、任務の割に頻度多すぎ、どんだけ魔力少ないの? 哨戒とちっさい障壁の補修でどんだけ消耗してんの? だいたいその群れの海狗(違う)まだ勤務時間中でしょ? 緊急避難的に性処理が認められる生命の危険とかないだろ?
心の声は心の中だけで、思いの丈は報告書に認めたので問題はない。基本的に魔法士という存在は、フェンガリの人生には不要な存在なので、己と己の身内に迷惑さえかけないなら、勝手にさかれ、としか思わないのだ。
逃避気味に回想にひたっていたフェンガリは、ふと一瞬あげた視線の先で、熊のような同僚に押し倒されている金髪の青年の姿を再確認する。
(うわ。)
驚きに漏れかけた声は、あわてて両手で塞ぐ。
少ない光源でもきらきらと豪奢に輝く金色は、やはり先日一方的にたが、十五年ぶりの再会を果たした父方の従兄弟だろうなぁ。
実は再会を果たさないよう、あからさまに正体を隠していたので、フェンガリだけが再会(仮)しただけなのだが。
本当に別人であってくれたらどんなによかったか…… 。
まじめな話、本当に会わない方が良い、フェンガリは彼には毒にしかならない。
そんなフェンガリの落とされた視線の先では、その彼が、片腕にかろうじて身にまとっているシャツ以外ほぼ全裸で、仰向けに押さえつけられていた。
男の手にしっかりと掴まれた太ももは大胆に開かれ、すっかり大人になったナニに「大きくなって」と目を見開く。幼少期の記憶はほぼ無いが、うっすらと共に入浴した際の、可愛らしいタケノコの記憶が浮かぶ。
立派に成長したかつてのタケノコは兆している位だが、その先の両太腿の間では、腹につくほど勃起した巨大な男根から先走りを滴らせた男が、息を荒げて腰を構えている。
すでに十分にほぐされている様子の後ろの穴を、引くつかせているしなやかな青年の姿は、今ままさに挿入される寸前である。
―― 女神様そして姉上、俺もう帰ってもいいですかあああーっ!!!
声に出さずにフェンガリは咽び泣いた。
やだ、ほんとやだ。特に身うちのくんずほぐれつとかトラウマなのに!!!
そんな荒れ狂う内心を一切表に出さず、フェンガリの小作り顔は、見事に無表情を保ってているのだった。
こんな時どんな顔をすればいいかわかりません!
うっかり、本当にうっかり破ってしまった防音結界は信じられないくらい薄っぺらかった。
そして、開け放った扉のその先で、複数の男たちに組み敷かれている金髪の青年には残念なことに見覚えがあった。
心の底から見間違いであって欲しかった。
フェンガリの記憶が確かなら、彼はおおよそ十五年ぶりに再会した従兄弟にみえるが、その従兄弟はガチむち汗まみれ半裸の男たちに囲まれて、煤けた台座の上に押さえつけられている。鼻息のリフレインが凄いです。
そして、ほぼ全裸の従兄弟は、今まさにその同僚だろう逞しい男の勃起しまくった陰茎挿入五秒前にみえる。
見たく無いけど見えてしまった。
扉をそっ閉じしたい衝動と戦いながら、フェンガリは加護を賜りし彼の女神様に無意識に祈っていた。
とにかくM字開脚はやめろ、と。
今すぐにでも帰りたい、心のそこから綺麗なお空が見たかった。
つらい。
フェンガリは女神の聖神殿に所属する聖魔術師である。本業は研究開発だが、フィールドワークが大好きなフェンガリは、お呼びがかかれば、現地調査にも気軽に応じている。
いかにも内勤らしい小柄な体型をしているくせに、新人が根を上げるような強行軍にも平気で着いてくるし、何日もテント暮らしになる野営も嫌がらない。
若い頃から美貌で評判だった母親ゆずりの綺麗な顔のせいで侮られがちだが、存外体力もあり、連れ回しても泣き言一つ言わないどころか、むしろ楽しそうに採取に夢中になっている姿に和む。と現場からの人気も高い。
本人は何でも屋なだけだと笑っているが、そんな暮らしを気に入っているらしく飄々と日々をこなしていた。
今回もお偉方も参加する本格的な視察の予備調査と、空席だった神官長の着任にあわせて、長らく閉鎖されてきた砦併設の神殿設備を確認して、掃除と必要な整備の手配を命じられている。
簡単なお仕事です、って言われたのに。
それなのに、ああそれなのにそれなのに。
扉を開けた時に、うっかり防音結界まで開けてしまったのは不可抗力です、いや簡単に破れすぎだろ、ぱりって飴細工かってくらい軽く割れたぞ。雑魚すぎる。
相手が雑魚なのでなく、自分の魔力が大物すぎる事に気づかない、そんなフェンガリは筋金入りの天然でも有名であった。
そして、とたんに響きだす野太い声に、ぎょっとして足がとまった。
長らく管理者不在で使用されなかった薄暗い室内は、窓には分厚い緞子のカーテンおろされたままで埃臭い。
その中で、ひとつだけ灯された魔導ランタンの明かりで埃除けの白布に、ゆらゆらと複数の影が妖しく踊っている。
床に脱ぎ捨てられている隊服は黒で、ここで発情期の獣のごとく淫らな叫びをあげ、夢中になって陰茎を立てている男たちが魔法士である事を示していた。
彼ら特有の魔力消費後に起きるという激しい性衝動は、長らく各界で注目される話題であった。
そして中央では既に推奨されなくなった、直接的な性行為による対症療法が、この辺境の砦ではいまだに主流らしかった。
フェンガリに気づいていはいない様子の彼らに、このまま踵を返して見なかった事にするかと一瞬逡巡する。
ここ数日、技術者としての目線で設備の点検から修理、備品の購入の確認に砦中を歩いた。
その際ここは海獣の展示施設だったかな? と首を傾げるほどに「おっ、お゛、あぉっーっ! お゛」とまるで発情期の海狗の群れの如き雄叫びを上げ、尻で繋がってる野郎どもを、それはそれ良く見かけたものだ。
いや、任務の割に頻度多すぎ、どんだけ魔力少ないの? 哨戒とちっさい障壁の補修でどんだけ消耗してんの? だいたいその群れの海狗(違う)まだ勤務時間中でしょ? 緊急避難的に性処理が認められる生命の危険とかないだろ?
心の声は心の中だけで、思いの丈は報告書に認めたので問題はない。基本的に魔法士という存在は、フェンガリの人生には不要な存在なので、己と己の身内に迷惑さえかけないなら、勝手にさかれ、としか思わないのだ。
逃避気味に回想にひたっていたフェンガリは、ふと一瞬あげた視線の先で、熊のような同僚に押し倒されている金髪の青年の姿を再確認する。
(うわ。)
驚きに漏れかけた声は、あわてて両手で塞ぐ。
少ない光源でもきらきらと豪奢に輝く金色は、やはり先日一方的にたが、十五年ぶりの再会を果たした父方の従兄弟だろうなぁ。
実は再会を果たさないよう、あからさまに正体を隠していたので、フェンガリだけが再会(仮)しただけなのだが。
本当に別人であってくれたらどんなによかったか…… 。
まじめな話、本当に会わない方が良い、フェンガリは彼には毒にしかならない。
そんなフェンガリの落とされた視線の先では、その彼が、片腕にかろうじて身にまとっているシャツ以外ほぼ全裸で、仰向けに押さえつけられていた。
男の手にしっかりと掴まれた太ももは大胆に開かれ、すっかり大人になったナニに「大きくなって」と目を見開く。幼少期の記憶はほぼ無いが、うっすらと共に入浴した際の、可愛らしいタケノコの記憶が浮かぶ。
立派に成長したかつてのタケノコは兆している位だが、その先の両太腿の間では、腹につくほど勃起した巨大な男根から先走りを滴らせた男が、息を荒げて腰を構えている。
すでに十分にほぐされている様子の後ろの穴を、引くつかせているしなやかな青年の姿は、今ままさに挿入される寸前である。
―― 女神様そして姉上、俺もう帰ってもいいですかあああーっ!!!
声に出さずにフェンガリは咽び泣いた。
やだ、ほんとやだ。特に身うちのくんずほぐれつとかトラウマなのに!!!
そんな荒れ狂う内心を一切表に出さず、フェンガリの小作り顔は、見事に無表情を保ってているのだった。
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