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最終章 決別と終幕
12-3
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俺はひとまず電話を切り、恵の待つ家に帰った。
部屋に入ると恵は結菜の写真を広げて眺めていた。
「…恵…。」
恵は涙を流していた。
「ごめんね…なんか…。
初めは歩の話を信じてなかったけど…
本当だってわかったら…
なんか変な気持ちになってきて…うっ…」
「恵…。」
俺はそっと恵を抱き締めた。
「結菜さんだっけ…?
私この人が羨ましい…
歩が命を削ってまで愛してたんだなって思うと…
なんか悔しくて…
私…
嫌な女だね…」
「……。
俺が愛してるのは恵だけだよ?
だから泣かないで…」
「…………。
じゃぁ…、
結菜さんのもの全部捨ててくれる…?
もうこんな気持ちになりたくない…」
「……。
あぁ…もちろん…。」
あれ。
なんでだろ。
結菜のことは忘れなくちゃいけないのに…
もう忘れたはずなのに…
[捨ててくれる?]
その言葉に不快感が湧き出てくる。
結菜との思い出の物なんて残しておけないことくらいわかってたはずだ。
恵が嫌がるに決まってる。
捨てる…か…
結菜との思い出に浸りたいと思うのは、
まだ結菜を想っているからなのか…?
自分の気持ちがわからない。
あとはただただ恵と幸せに暮らしていくだけなのに。
どうしてこんなに気持ちが晴れないんだろう。
次の日、俺と恵は結菜の写真をゴミ袋につめた。
結菜の笑顔が胸を痛める。
気落ちしていたが必死で俺はそれを隠していた。
結菜に対する未練を恵に悟られないように。
恵はなにもいわずにたんたんと写真を袋につめていく。
部屋に流れる空気は重く。
お互いに無言になっていた。
必死で隠しても、
俺が乗り気ではないことは一目瞭然だった。
「はぁ~。
終わったね?」
ゴミ袋にすべてをつめおえてはじめて恵が口を開いた。
「うん。
ごめんね?
手伝わせちゃって。」
「ううん。
じゃぁゴミ出してくるね?」
「俺が出してくるよ。
結構重いし。」
「いいの。
大丈夫。」
そういうと恵は大きな袋を抱えて部屋を出ていった。
一刻も早く結菜の物を無くしてしまいたい。
そんな恵の気持ちが伝わってきた。
俺はからっぽになった押入れの中をただ黙って見つめていた。
………バタン。
恵が戻ってきて視線を反らす。
恵はなにも言わずに背中から抱き締めてきた。
「…ありがとう。」
恵もきっと嫌だったはずだ。
嫉妬をしている自分が。
でもそれ以上に結菜の存在が辛かったに違いない。
正直。
こんなに不快感をあらわにした恵を見るのは初めてだった。
部屋に入ると恵は結菜の写真を広げて眺めていた。
「…恵…。」
恵は涙を流していた。
「ごめんね…なんか…。
初めは歩の話を信じてなかったけど…
本当だってわかったら…
なんか変な気持ちになってきて…うっ…」
「恵…。」
俺はそっと恵を抱き締めた。
「結菜さんだっけ…?
私この人が羨ましい…
歩が命を削ってまで愛してたんだなって思うと…
なんか悔しくて…
私…
嫌な女だね…」
「……。
俺が愛してるのは恵だけだよ?
だから泣かないで…」
「…………。
じゃぁ…、
結菜さんのもの全部捨ててくれる…?
もうこんな気持ちになりたくない…」
「……。
あぁ…もちろん…。」
あれ。
なんでだろ。
結菜のことは忘れなくちゃいけないのに…
もう忘れたはずなのに…
[捨ててくれる?]
その言葉に不快感が湧き出てくる。
結菜との思い出の物なんて残しておけないことくらいわかってたはずだ。
恵が嫌がるに決まってる。
捨てる…か…
結菜との思い出に浸りたいと思うのは、
まだ結菜を想っているからなのか…?
自分の気持ちがわからない。
あとはただただ恵と幸せに暮らしていくだけなのに。
どうしてこんなに気持ちが晴れないんだろう。
次の日、俺と恵は結菜の写真をゴミ袋につめた。
結菜の笑顔が胸を痛める。
気落ちしていたが必死で俺はそれを隠していた。
結菜に対する未練を恵に悟られないように。
恵はなにもいわずにたんたんと写真を袋につめていく。
部屋に流れる空気は重く。
お互いに無言になっていた。
必死で隠しても、
俺が乗り気ではないことは一目瞭然だった。
「はぁ~。
終わったね?」
ゴミ袋にすべてをつめおえてはじめて恵が口を開いた。
「うん。
ごめんね?
手伝わせちゃって。」
「ううん。
じゃぁゴミ出してくるね?」
「俺が出してくるよ。
結構重いし。」
「いいの。
大丈夫。」
そういうと恵は大きな袋を抱えて部屋を出ていった。
一刻も早く結菜の物を無くしてしまいたい。
そんな恵の気持ちが伝わってきた。
俺はからっぽになった押入れの中をただ黙って見つめていた。
………バタン。
恵が戻ってきて視線を反らす。
恵はなにも言わずに背中から抱き締めてきた。
「…ありがとう。」
恵もきっと嫌だったはずだ。
嫉妬をしている自分が。
でもそれ以上に結菜の存在が辛かったに違いない。
正直。
こんなに不快感をあらわにした恵を見るのは初めてだった。
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