【完結】最愛の人 〜三年後、君が蘇るその日まで〜

第１１章 過去と現在

11-3

｢ねぇ…｡

最近どうしたの…?｣




ある日､恵が不安そうな顔をしてそういった｡



無理もない｡



結菜のことを思い出してからというもの､



俺は動揺を隠せないでいた｡



恵に対しても話しかけられれば答えるが､



自分から話しかけることはしなくなっていた｡



どこかで感じられる結菜への罪悪感が､



恵と過ごす時間を苦痛に変えていた｡



このままではいけない｡



刻一刻とせまる悪魔との契約の日｡



決断しなくてはいけない｡



悩みに悩んだ俺が出した答え｡



結菜か…｡



恵か…｡



俺はその答えを、



そして、真実を恵に告げようと心に決めた｡



信じてもらえないかもしれないけど｡



契約のことも､すべてを打ち明けることに決めたんだ｡


そして約束の日まで一週間が過ぎた｡



｢歩ぅ～!

今日はお鍋セット買ってきたよぉ!｣



恵がいつものように夕飯の買い物をして俺の家にくる｡



｢なんか急に鍋が食べたくなってさぁ!｣



恵は普段と変わらず元気そうだ｡



その笑顔を見ると言い出しづらかった｡



｢…恵?｣



｢…ん?｣



｢…話があるんだ…｡｣




俺の雰囲気を察したのか､



恵の表情が変わった｡


｢……なに?｣



恵は静かに俺の隣に座った｡



｢実は…

恵に話さなきゃいけないことがあるんだ…｡｣



恵は下を向いたまま小さく頷く｡



恵の緊張が伝わってくる｡



真実を話して､



俺の答えを恵は理解してくれるだろうか…｡



不安な気持ちを抱きながらも､



俺はゆっくりと話始めた｡


｢俺には恵と出会う前に付き合ってた結菜っていう彼女がいるんだ｡

この部屋で二人暮らししてた｡

でも結菜は３年前に死んだんだ｡

二人で山に行った時に足を滑らせて…｡｣



恵はうつ向いたまま静かに聞いている｡



｢これから言うことは信じられないかもしれないけど…｡

その時に俺は悪魔とある契約をしたんだ｡

嘘みたいな話だけど本当なんだ｡｣



｢…｡｣



恵は相変わらず黙り込んでいる｡




｢…いいよ｡

続けて｡｣




信じてくれたかはわからないが､



恵はそう言った｡