【完結】最愛の人 〜三年後、君が蘇るその日まで〜

第１０章 恩と仇

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｢楓ぇ!!!

頼むから目をさましてくれよっ!!!｣



涙が溢れ出して止まらない｡



やりきれない思いが全身を震わせる｡



｢なんでなにもいってくれなかったんだよ!!

俺一人で浮かれてバカみてぇじゃねぇか!!

一人で抱え込むんじゃねぇよ!!!

俺達は友達だろっ!?

相談して迷惑に思うわけないだろ!?｣




｢歩っ!!

落ち着いて!!｣



恵が必死に俺を抱き締める｡


｢お前がそうだったじゃねぇか…｡

いつもいつも俺の相談にのってくれて…

どんだけ助けられたか…

なに一つ返せてねぇのに!

勝手に死んでんじゃねぇよっ!!!｣




静かな式場に響いた声が引き金になって｡


今まで冷静だった人達も涙をこぼしていた｡


楓の父親は拳を握りしめて涙を流し､


母親はその場に泣き崩れてた｡


恵に支えられながら俺は楓に最後の別れをした｡


身近な人を亡くすのはこんなにも辛いことなのか｡


俺はそんな心境のなかで妙な違和感を感じていた｡


でも俺はそれがなんなのかはわからなかった｡



式が終わって普段通りの生活がまた始まる｡


社内も初めは物静かだったが次第にまた明るさを取り戻していく｡



それと同時に俺も少しずつ普段通りの生活を取り戻しつつあった｡


人の死というものは人を成長させる｡



人の死には後悔はつきものだ｡



後悔して反省をする｡



一時は立ち直れないと思う時もあるが､



人間は以外と乗り越えられるものだ｡



そしてまたなにかを学んでいく｡



後悔が感謝に変わり､



本当の意味での死を受け入れたことになる｡



楓は俺に数えきれないほど大事なことを教えてくれた｡


でも本当に受け入れるには個人差は必ず生じる｡



ましてや本人との関係性なんて人それぞれだ｡



楓の死から何十日がたっただろうか｡



楓の両親は今も裁判を続けている｡



結果は明らかなのに本当に法律とは回りくどい｡



沙希ちゃんは法廷には姿を見せはしなかった｡



俺や恵の前にも…｡



関係性や受け入れられるまでの期間は人それぞれ｡



沙希ちゃんはまだ楓の死を受け入れられずに苦悩している｡



以前のように部屋に隠るようになってしまっていたんだ｡