【完結】最愛の人 〜三年後、君が蘇るその日まで〜

雪則

文字の大きさ
上 下
46 / 87
第8章 勇気と知恵

8-2

しおりを挟む
恵は鉄雄の手を振りほどいて俺の後ろにまわった。



「そ、そうか。

じゃぁもう恵に付きまとうなよ。」



鉄雄は頭を振りながら鼻で笑った。



「おい。勘違いすんなよ?

俺はこんな女どぉ~でもいいんだよ?

別にいいんだぜ俺はさ。

ただ恵が俺にどうしても会いたいんだろ?

そぉ~だよな?恵?」



そういうことか。


こいつが余裕でいる理由がようやくわかった。


「写真のことは恵からきいてる。

ばらまけるもんならばらまいてみろよ。」



俺のはなった言葉に恵と鉄雄の表情が変わった。



恵は不安そうにこっちをみている。



「大丈夫。

俺を信じろ。」



鉄雄は鼻で笑った。



「本当にいいんだな?

あとで謝っても遅ぇぞ?」


俺は平然とした態度でかえす。



「あぁもちろんだ。

じゃぁ恵には二度と関わるなよ。」


その言葉をきいた鉄雄はものすごい形相で胸ぐらを掴みあげてきた。



「おい。

あんまし調子にのってんじゃねぇぞ!!」




「鉄雄!!やめて!!」



恵が必死に鉄雄を抑えた。


さすがに怖い。


でも大丈夫。



「殴りたいなら殴れよ。

俺は一切抵抗はしないから好きにしろ。」



精一杯の勇気を振り絞って鉄雄を睨み付ける。


ゴッ!!!



鈍い音と同時に視界がずれる。



「キャァ!!」



恵の悲鳴が人で賑わう駅前に響いた。



俺の体は後ろに倒れ込んだ。


殴られた。



まぁ予想通りだがこんなにおもいっきり殴られたのは生まれて始めてだ。



殴られた左半分の顔の感覚がない。以外に痛くないもんだ。



痺れたように晴れ上がった感覚がジンジンと顔に響く。



感覚はないが上唇につたった鼻血が蛇口の水のようにたれていた。


「ちょっと鉄雄!!

お願いもうやめて!!」



「うるせぇんだよ!!」



鉄雄に振り払われた恵が尻餅をついた。




尚も鉄雄は俺に向かってくる。



俺はなんとか立ち上がってにらみ返す。



頼む!


震えるな俺の足!!



「おい!お前頭悪ぃんじゃねぇのか!?

恵がどうなってもいいのかよ!!」



「頭が悪いのはお前だろ。

お前は絶対に写真はばらまけない。

脅しの道具ってのは使わないから意味があるんだ。」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

人質王女の恋

小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。 数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。 それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。 両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。 聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。 傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結済】ラーレの初恋

こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた! 死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし! けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──? 転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。 他サイトにも掲載しております。

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

処理中です...