【完結】君の声が聴こえる

雪則

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隠し事

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「これはね。白杖(はくじょう)って言うんだ。」


はくじょう?


聞いたことがない。


でも嫌な予感がする。



「きっと知らないと思ったよ。」



幸治は深く深呼吸をした。


「僕は…君の顔を知らないんだ。
この意味わかるよね。」




え…?



頭の中が整理できない。



どういうこと?



「こんな暗い場所でサングラスなんておかしいだろ?
見慣れてて気づかなかったかな?」



苦笑いしながら話す幸治。


でも私にはなにを言ってるのか理解できない。



なにも頭に入らない。



きっとわかってるけど頭が拒絶してる。



背筋が凍る感じ。


息がうまく出来ない。



幸治は言った。





「僕はね…
目が見えないんだ。」



時が止まったようだった。


私はなにも言えなかった。


訳もわからず泣いていた。


幸治は…

とても悲しそうだった。



幸治…違うの…



私は…



違うってなにが…?



涙なんて見せたくない。



全然平気って…



………。




言えない…。



私は最低だ。




「ごめん…隠してて…

でも安心して?こういうの慣れてるから。

僕のことは気にしないで。

君には迷惑かけたくないから…。」



幸治が今どんな気持ちでこんなこと言ってるかなんてわかってる。


強がりだよね…



そんな嘘バレバレだよ…



平気なはずないじゃん…



でも…



私は心のどこかで…



そんな幸治の言葉に



安心していたのかもしれない。


「さようなら…」



幸治はそう言って



足元を杖で確かめながら



私のもとを離れていく。



なにか言わなくちゃと思った。



でも言葉が見当たらない。


このままなにも言わなければ。


簡単に私たちの関係は終わりを告げる。



優しすぎるよ…



これじゃぁ幸治が可哀想すぎるじゃん…



今すぐ引き止めなきゃいけないのに!



脚が動かない!


声もでない!



ごめんね…



ごめんなさい…



幸治…



貴方を引き止める自信がない…


怖いの…


幸治は幸治なのに…





私はその場に泣き崩れた。


「幸治!…うぅ…

ごめんなさい!……

あたしは…

最低だよ…うう゛っ…」


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