48 / 53
47
しおりを挟む「っは……あ、ぅ」
「由莉ちゃんすぐイクね。気持ち良い?」
「んっ、ん……っは」
「ねぇ、僕だけになった? 由莉ちゃんの好きな人だれ?」
耳元で落とされた声に、力無く首を振って否定する。
何をされても気持ち良いし、何回イッたのかなんて自分でも分からない。
それでも凪くんは私がイッただけでは満足しないようで、「気持ち良いよね?」「好きな人だれ?」と確認するように何度も聞いてくる。
連続でイカされても達する直前で寸止めされても、私は同じ答えしか返せないのに。
そう思いながら私が毎回同じ返事をする度に、凪くんの表情が曇っていった。
「ここまで僕の方に靡く条件揃えたのに、どうしてそこまで頑ななの」
「あ、も……出すのやだ……っんぁ」
「嫌がるのやめて。僕以外求められないようになってるはずなのに、なんで?」
「あ、の時……首輪外して、んっ、気持ち固まってないのに凪くっ……あ、のこと、巻き込んで、ごめんなさ……っ」
「違うんだよ。そういう返事が聞きたくてこんな事してるわけじゃない」
「……っふ」
言葉を封じるように唇が塞がれて舌が取られる。
角度を変えて何度も呼吸ごと奪われ、ようやく離れたと思うと同時に、今にも泣きそうな声が目の前で落とされた。
「……好きになってくれないなら、番った意味がない」
由莉の腕を押さえ付ける手に力が籠り、ぎちりと痛んだ。
だけど腕なんかよりも、こんな事を言わせてしまった事の方がずっと痛い。
「……ごめん」
「嫌だ、謝らないでよ。僕も謝らない」
誘発剤を使った事もホテルに連れ込まれた事も、別に謝って欲しいなんて思ってない。
ただ、私があの時もっとしっかり考えていたらと、そういう後悔は何度もしたから。中途半端な気持ちで巻き込んでしまったことは、謝らないとだめだと思う。
そう思って何度目になるか分からない謝罪の言葉を口にした瞬間、また律動が再開される。
「あっ、ぅ……はっ」
「謝って欲しいわけじゃない。好きって言って」
「凪く、っん、ぁ」
「早くして。ねぇ、なんで。こんなに出してるのに。まだ僕のこと好きにならないの?」
「わた、わたし、隆一さんと……」
「由莉ちゃん、僕それ本当にいや。やめて。僕だけ好きでいて。なんで駄目なの? 他の男の名前呼ばないで」
「ひぁっ……、ンッ、も……凪くんが満足したら帰……っう、約束……! まだ三ヶ月ある……」
必死にそう声を出すと、ピタリと凪が動きを止める。
短い呼吸を繰り返す由莉を見下ろしながら、凪の眉間にぐっと皺が寄った。
「ここで一旦帰ってもまた三ヶ月痛い思いするだけでしょ。そうなるの分かってて、アイツに触られるだけで由莉ちゃんが苦しむだろうなって思って出した条件だよ。なんでまだ続けたがるのかな」
嘲るように言われた事が、凪の本心なのだろう。
由莉が苦しめばいいのにという意味ではなく、触られる事を苦しく感じるのだと知ってくれればいいのにと、そういう意味。
ただ苦しくて痛いだけだったら、凪の言う通りに思ったのだろうか。
「……してる時は痛くても、終わってから思い出したら嬉しくて……もっと、触って欲しいって思った」
「は、なにそれ」
「……うん、なんだろう。上手く言えないんだけど、でも、好きな人が触ってくれなくなるのが、私は一番痛かった」
言った瞬間、凪の表情が苦しげに歪む。
深く息を吐いたかと思うとナカにあったモノがずるりと引き抜かれ、伸ばされた親指が優しく由莉の唇に触れた。
「……あんな形で襲ったりしなかったら、もっと違った?」
「へ……」
「別の形で再会して、ちゃんと告白して君の許可取って番ってたら僕のこと選んでくれたの?」
苦しそうな声で問われて一瞬言葉に詰まったけれど、別の形での再会を考えてみてもやっぱり答えが変わらない。
隆一さんと出会った後だったら、同じ結果になったと思う。
好きな人が喜んでくれることがしたいって、私の根底にあったのは、多分ずっとそれだけだった。
2
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~
けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。
私は密かに先生に「憧れ」ていた。
でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。
そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。
久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。
まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。
しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて…
ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆…
様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。
『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』
「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。
気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて…
ねえ、この出会いに何か意味はあるの?
本当に…「奇跡」なの?
それとも…
晴月グループ
LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長
晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳
×
LUNA BLUホテル東京ベイ
ウエディングプランナー
優木 里桜(ゆうき りお) 25歳
うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。
【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい
魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。
久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。
R18シーンには※をつけます
作家になろうでも連載しております
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~
泉南佳那
恋愛
来栖エリカ26歳✖️芹澤宗太27歳
売れないタレントのエリカのもとに
破格のギャラの依頼が……
ちょっと怪しげな黒の高級国産車に乗せられて
ついた先は、巷で話題のニュースポット
サニーヒルズビレッジ!
そこでエリカを待ちうけていたのは
極上イケメン御曹司の副社長。
彼からの依頼はなんと『偽装恋人』!
そして、これから2カ月あまり
サニーヒルズレジデンスの彼の家で
ルームシェアをしてほしいというものだった!
一緒に暮らすうちに、エリカは本気で彼に恋をしてしまい
とうとう苦しい胸の内を告げることに……
***
ラグジュアリーな再開発都市を舞台に繰り広げられる
御曹司と売れないタレントの恋
はたして、その結末は⁉︎
もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
泉南佳那
恋愛
イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!
どうぞお楽しみいただけますように。
〈あらすじ〉
加藤優紀は、現在、25歳の書店員。
東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。
彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。
短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。
そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。
人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。
一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
玲伊は優紀より4歳年上の29歳。
優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。
店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。
子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。
その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。
はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。
そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。
玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。
そんな切ない気持ちを抱えていた。
プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。
書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。
突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。
残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……
契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!
如月 そら
恋愛
「それなら、いっそ契約婚でもするか?」
そう言った目の前の男は椿美冬の顔を見てふっと余裕のある笑みを浮かべた。
──契約結婚なのだから。
そんな風に思っていたのだけれど。
なんか妙に甘くないですか!?
アパレルメーカー社長の椿美冬とベンチャーキャピタルの副社長、槙野祐輔。
二人の結婚は果たして契約結婚か、溺愛婚か!?
※イラストは玉子様(@tamagokikaku)イラストの無断転載複写は禁止させて頂きます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる