【本編完結・R18】苦手だった元婚約者にドロドロに甘やかされています

堀川ぼり

文字の大きさ
6 / 34

切れて繋がる

しおりを挟む
 私が父親に相談しようとしたことは幸い結人には伝わっていないようで、初めてセックスした日から数日経ったあとに「本気で婚約やめるつもりじゃないみたいで良かった」と結人に言われて終わった。
 同じ行為を毎日のようにされたらどうしようという私の不安も杞憂に終わり、婚約を続けるならセックスしないという約束を結人は一応守ってくれている。
 それでも、口を合わせるだけで終わらないキスは今までと全然違って、何回されてもその度にゾクゾクして恥ずかしくて、未だに慣れることができない。

 この事をきっかけに、私が結人に逆らえない事が分かったのだろう。
 結人の都合で呼ばれたり無理に予定を組まれることが多くなっていき、どんどん軽く扱われていくみたいで悲しくなった。
 長い時間一緒にいるのが嫌で、大学は共学を避けて女子大に進学したけれど、その程度で結人の私に対する扱いが変わるわけがない。
 大学に進学すると同時に結人が借りたマンションは、私の通う女子大の近くにある。すぐに呼べる私を、結人は便利な存在だとでも思っているみたいだった。

「適当に飲み物買って持ってきて」
「荷物届くから受け取っておいて」
「実家から色々送られてきたから何か作りに来てくれる?」

 そんな雑用ついでに呼び出される回数は高校時代よりも確実に増え、ほとんど毎日を結人と一緒に過ごしていたように思う。そのまま引き止められて泊まりになってしまう事も多く、その度に結人のベッドで一緒に寝た。
 理由なく行きたくないと断るとエッチな事をいっぱいされて、数回そんな扱いをされてからは怖くて断る事もできなかった。

 そんな通いの使用人のような状態だったけれど、ほとんど毎日のように呼び出されていた事を考えれば、セックスに至った回数はそこまで多くない。キスは毎回必ずしていたのに、そこからセックスにいくのは本当に稀だった。
 どういうタイミングでやりたくなるのかは分からなかったけれど、恐らく年に一度か二度くらいで、片手で足りるほどの回数しかしていない。
 それでもいつ何をされるのか分からない状態は怖くて、そういう展開になったら断れない事も本当に本当に嫌だった。

 大学を卒業したらこのまま結婚するのかと、諦め半分で過ごしていた状況が一変したのは大学三年生になった春のこと。
 父親が競合の会社に引き抜かれて、櫻川の会社を辞めたことがきっかけだった。
 その当時櫻川グループの当主をしていたのは結人の祖父にあたる人で、何か色々と揉めたらしいが詳しいことはよく分からない。
 ただ、「家や親の事情なんて和音が気にすることじゃないし、和音の人生なんだから結婚に対して思うことがあるなら好きに選んだ方がいい」と父に言われ、そこでようやく結人から離れる気持ちが固まった。
 一度だけ結人に直接話をしにいったけれど、そういう話題を出した瞬間に「なんで?」と冷たい声で遮られて、まともに話なんて聞いてもらえなかった。無理やり色々されそうになったのを本気で拒み、ちゃんと結婚するからと泣きそうになりながら嘘をついて逃げるように結人の部屋から出た。

 それを最後に、結人とは一度も会っていない。
 会いに行くのを止めてから何度も結人から連絡はきたし、学校の近くで待たれる事もあったけど、頑張って避けて卒業まで耐えた。
 就職を機に引っ越してからはパタリと連絡もこなくなり、お互い完全に縁が切れたと思っていたのだ。
 在学中からいくつか仕事を任されていたとはいえ、卒業して本格的に仕事をするようになったのだから結人だってきっと忙しい。いつまでも私なんかに構っていられないのだろう。

 結人との話し合いは結局出来ていないけれど、親同士が話してちゃんと破談になったとも聞いていたから、最近はもう気にする事もなくなっていたのだ。
 結人の中でも完全に終わった事だと思っていたのに、本当に今更何を話せというんだろうか。

 逃げ場のないエレベーター内で扉に背をつけ、見上げるようにして再度結人と視線を合わせる。
 顔も声もほとんど変わらないのに、服装や雰囲気のせいだろうか。最後に会った時と比べて、随分大人っぽくなっているように感じる。
 どういう顔をして話せばいいのだろうか。こんなところでいきなり再会するなんて思ってもいなかった。

「……まあいいや。一旦降りようか」

 結人がそう口にすると同時に、上昇を続けていたエレベーターが止まる。
 逃げ場のなかった狭い箱から出る唯一の扉が、私の後ろでゆっくりと開いた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーンにも投稿しています》

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

処理中です...