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初恋の話
4-4.初めて会った日のこと
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少し苦しいくらいなのに、こうやって抱きしめてもらえると安心する。服越しに触れる体温が心地よくて、ゆっくりと持ち上げた手をリーシャはダニスの背に回した。
淡々と進められるセックスの最中よりも、今の方がずっとダニスを近くに感じる。
こういう触り方をしてもらえるのが好きだと、素直にそう思えた。
「あの、私……何も思い出せていなくて」
「……うん」
「それでもダニス様が好きで、その、好きだから、ちゃんと聞いて知っておきたいです。私が他の人とした結婚の約束とか指輪のこと、どうしてダニス様は知っていたんですか?」
正直、回答の予想はできている。そういう魔法があることはクリスから聞いているし、頭の中を覗かれたこと自体は別にどうでもいいのだ。
ただ、リーシャの頭の中を覗こうと思った理由を、ダニスの言葉で聞かせて欲しかった。
好きだったからリーシャの気持ちを探ろうとしたとか、リーシャが昔のことを覚えているのか知りたかったとか、そういう回答がもらえたらそれだけでいい。
クリスの言っていた「ダニスが喧嘩別れした女の子」は、きっとリーシャのことだ。何も思い出せてはいないけれど、ダニスの言動のおかげで今は少しだけ自信がある。
それでもまだ、不安が消えたわけではない。だから、他の女の子を想い続けていたわけではないのだと、それだけでいいから教えて欲しい。
「あの、ダニス様」
「昔、全部リーシャが教えてくれたよ。結婚するっていう誓約書を交わして、手作りの指輪の交換もしたんだって」
「へ……?」
「あれ? あー……ごめん。俺と喧嘩したって話をしてたけど、リーシャはどこまで思い出したの?」
少しだけ距離が開き、不安そうな金色の瞳が静かにリーシャを見下ろす。掴まれた腕はそのままで、逃げられないように捕えられているようにも思えた。
「……く、詳しいことは、何も。熱を出したせいで、そのあたりのことを忘れちゃったみたいだってお母様が言っていて……」
「熱、ね……。俺がそうさせたんだって言ってた?」
「え? あ、その……」
詳しくは分からないけれど、意地悪をされて泣いて帰ってきたのだと母は話してくれた。
だけど、もしそれがダニスの話したくないことならば、そんなの気にしなくていいのにとリーシャは思ってしまう。
どんなに酷い意地悪をされていたとしても、それはただの子供の喧嘩だ。何かを償って欲しいなんて思っていないし、今まで引き摺っていたわけでもない。
今後ずっとダニスの本心が見ないままになることの方が、よっぽど怖いし嫌なことだ。
「あの、喧嘩して泣いたことが熱を出した理由なのかは分からないし、ダニス様と何があったのかは覚えてないです。でも、もし子供の頃に何かあったとしても、今の私は絶対にダニス様を好きなままだから……。だからちゃんと、全部知りたくて、思い出せないから教えて欲しくて……」
ダニスの服の裾を掴み、少しだけ強めに握った。
声が震えてしまって、涙も出ていないのになんだか泣いているみたいだ。
「どうしても、話してはもらえないですか?」
ダニスの目を見つめながら、必死に言葉を紡ぐ。
しばらくの間を空けてから、ハァァというダニスの息を吐く音が静かな室内に落とされた。
「リーシャにとっては、多分あんまりいい思い出じゃないよ。俺の独り善がりで、恥ずかしいことばっかりだった」
「そんなの……」
「ごめん、嫌な言い方したね。リーシャが覚えてないなら、最初に会った時の話からしようか」
お願いしますとリーシャが頷くと、再びダニスが短く息を吐く。
言葉を迷うようにしばし考えたあと、瞳を伏せながらダニスはゆっくり口を開いた。
「城の庭園……確か、今は白いガゼボが置いてある辺りかな。昔はそこに、庭師用の小さな扉があったんだ。今は閉ざされてるけど、その扉を出て少し道から逸れると森に入れた。俺はよく皆に内緒でそこから外に出て、森の中にある少し開けた場所に行ってたんだよ。近くに泉があって、植物がたくさん生えてる静かな場所。いつもは一人だったけど、俺が七歳の時、そこで初めてリーシャに会った」
――それは、今から十五年前の話になる。
当時ダニスは七歳で、誰の目にも留まらない場所で一人で過ごすことを好んでいた。
年齢の割には、しっかりした子供だったと思う。自分が王位継承者であるという自覚もあったし、そのために幼い頃から様々な勉強をしてきた。
遊ぶ時間も少なく、忙しい日々だったと思う。しかしダニスはそんな毎日を苦に思うことがなく、むしろその状況を楽しんでさえいた。新しい知識が増えるのは面白いし、出来ることがどんどん増えていく過程は楽しい。
毎日多くの家庭教師が訪れ、ダニスに様々な分野の知識を与えたが、どんな課題もダニスは卒なくこなしていく。乗馬や剣技、武術の覚えも早く、何をさせてもダニスは優秀な生徒であった。
そんなダニスが人目を避け、こっそりと城から抜け出すようになったのは五歳の時からだ。ダニスが五歳――つまりは、弟のクリスが二歳になり、教育係がつき始めた頃からである。
生まれた時からクリスの魔力量は特別で、そのこと自体はダニスもなんとなく知っていた。魔力が高いということで最初から期待はされていたのだろうが、実際に魔法の使い方を教わってから見せられたクリスの能力は、期待以上のものだったのだ。
簡単な魔法の使い方を教わったクリスはそこから特に厳しい修行をすることもなく、感覚と独学でどんどん難しい魔法を習得していった。魔力の量だけでなく、魔法を使うセンスも並外れているということを、その時に全員が知ることになる。
そこから少しずつ、皆がダニス以上にクリスの教育に力を入れ始めたことを、幼いながらに賢いダニスは悟ったのだ。――同時に、ひどく虚しくなった。
ダニスも、魔法が苦手だったわけではない。魔法の扱いという分野でもダニスは優秀で、今までに褒められたことしかなかった。しかし誰の目から見ても、クリスの魔力とセンスは並外れて別格だったのだろう。
魔法は選ばれた者しか使えない、特別で素晴らしい力。多少難解なことでも、魔法で解決できることは多いのだ。そんな魔法を難なく扱えるクリスは誰よりも素晴らしく特別な存在だと、幼いダニスの目には映ったのかもしれない。魔力が人並みだというだけで、自分がひどく無力な存在に感じられた。
期待の目が一気にクリスに向けられ、あれもこれもとクリスに教えたがる人が増えた。
その分ダニスは自由な時間が増えていき、魔法に関してだけで言えば、完全に弟よりも教えてもらえることは少なかった。もともと教本を読むだけで十分に理解ができる優秀な子供だったということもあり、課題の本を渡されるだけの科目も出てきてしまう。
王位継承者はどちらになるのかという話を耳にすることも増え、聞きたくない話を避けるために、この頃からダニスはこっそり城から抜けて一人で過ごすことが多くなっていったのだ。
庭園から外へ出られることに気付き、森の中を散策してお気に入りの場所も見つけた。
そんな状態が続いた数年後、とある晴れた日。今日も定番の場所に行って一人で過ごそうとダニスが城を抜け出した時のことだ。いつもは誰もいないはずのその場所に、弟と同じ年くらいの女の子が一人で楽しそうに花に触れていた。
見つかる前に場所を変えようとしたダニスだったが、一つ気になることがありその子に声を掛けてしまう。
「その草、触ると肌がかぶれるから摘まない方がいいよ」
言った瞬間、振り向いた女の子と視線が絡む。
びっくりしたように数秒動きを止めた女の子は、「そうなの?」と不思議そうにダニスを見ながら口にした。
かと思えば「あ!」と声を上げ、ダニスのいる方向とは反対の方に走り出し、今度は急に足を止める。
「ねえ、それじゃあ、こっちの花も触っちゃだめ?」
危ないよと教えたらすぐに去るつもりだったのに、完全に帰るタイミングを逃してしまった。
仕方なく指差された花に近づき、その花を観察するためにダニスも女の子の隣で膝を折る。
「えっと、これは……ああ、大丈夫かな。似てるけど、葉っぱの形が少し違うから触ってもいいやつだよ」
「へぇ、そうなんだぁ。ありがとう。見ただけで分かるなんて本当にすごいね」
きっかけはそんな会話だったのだ。
また教えてねと笑顔で言った彼女に、時間がある時にここに来ると返事をしてしまい、そこから何度も会うことになる。
自己紹介をしたのは次に会った時で、この時はまだ互いの名前も知らなかった。
たくさんの植物の生えたこの場所でなければ、きっと話しかけることもしなかったであろう。
これが、ダニスとリーシャの最初の出会いとなった。
淡々と進められるセックスの最中よりも、今の方がずっとダニスを近くに感じる。
こういう触り方をしてもらえるのが好きだと、素直にそう思えた。
「あの、私……何も思い出せていなくて」
「……うん」
「それでもダニス様が好きで、その、好きだから、ちゃんと聞いて知っておきたいです。私が他の人とした結婚の約束とか指輪のこと、どうしてダニス様は知っていたんですか?」
正直、回答の予想はできている。そういう魔法があることはクリスから聞いているし、頭の中を覗かれたこと自体は別にどうでもいいのだ。
ただ、リーシャの頭の中を覗こうと思った理由を、ダニスの言葉で聞かせて欲しかった。
好きだったからリーシャの気持ちを探ろうとしたとか、リーシャが昔のことを覚えているのか知りたかったとか、そういう回答がもらえたらそれだけでいい。
クリスの言っていた「ダニスが喧嘩別れした女の子」は、きっとリーシャのことだ。何も思い出せてはいないけれど、ダニスの言動のおかげで今は少しだけ自信がある。
それでもまだ、不安が消えたわけではない。だから、他の女の子を想い続けていたわけではないのだと、それだけでいいから教えて欲しい。
「あの、ダニス様」
「昔、全部リーシャが教えてくれたよ。結婚するっていう誓約書を交わして、手作りの指輪の交換もしたんだって」
「へ……?」
「あれ? あー……ごめん。俺と喧嘩したって話をしてたけど、リーシャはどこまで思い出したの?」
少しだけ距離が開き、不安そうな金色の瞳が静かにリーシャを見下ろす。掴まれた腕はそのままで、逃げられないように捕えられているようにも思えた。
「……く、詳しいことは、何も。熱を出したせいで、そのあたりのことを忘れちゃったみたいだってお母様が言っていて……」
「熱、ね……。俺がそうさせたんだって言ってた?」
「え? あ、その……」
詳しくは分からないけれど、意地悪をされて泣いて帰ってきたのだと母は話してくれた。
だけど、もしそれがダニスの話したくないことならば、そんなの気にしなくていいのにとリーシャは思ってしまう。
どんなに酷い意地悪をされていたとしても、それはただの子供の喧嘩だ。何かを償って欲しいなんて思っていないし、今まで引き摺っていたわけでもない。
今後ずっとダニスの本心が見ないままになることの方が、よっぽど怖いし嫌なことだ。
「あの、喧嘩して泣いたことが熱を出した理由なのかは分からないし、ダニス様と何があったのかは覚えてないです。でも、もし子供の頃に何かあったとしても、今の私は絶対にダニス様を好きなままだから……。だからちゃんと、全部知りたくて、思い出せないから教えて欲しくて……」
ダニスの服の裾を掴み、少しだけ強めに握った。
声が震えてしまって、涙も出ていないのになんだか泣いているみたいだ。
「どうしても、話してはもらえないですか?」
ダニスの目を見つめながら、必死に言葉を紡ぐ。
しばらくの間を空けてから、ハァァというダニスの息を吐く音が静かな室内に落とされた。
「リーシャにとっては、多分あんまりいい思い出じゃないよ。俺の独り善がりで、恥ずかしいことばっかりだった」
「そんなの……」
「ごめん、嫌な言い方したね。リーシャが覚えてないなら、最初に会った時の話からしようか」
お願いしますとリーシャが頷くと、再びダニスが短く息を吐く。
言葉を迷うようにしばし考えたあと、瞳を伏せながらダニスはゆっくり口を開いた。
「城の庭園……確か、今は白いガゼボが置いてある辺りかな。昔はそこに、庭師用の小さな扉があったんだ。今は閉ざされてるけど、その扉を出て少し道から逸れると森に入れた。俺はよく皆に内緒でそこから外に出て、森の中にある少し開けた場所に行ってたんだよ。近くに泉があって、植物がたくさん生えてる静かな場所。いつもは一人だったけど、俺が七歳の時、そこで初めてリーシャに会った」
――それは、今から十五年前の話になる。
当時ダニスは七歳で、誰の目にも留まらない場所で一人で過ごすことを好んでいた。
年齢の割には、しっかりした子供だったと思う。自分が王位継承者であるという自覚もあったし、そのために幼い頃から様々な勉強をしてきた。
遊ぶ時間も少なく、忙しい日々だったと思う。しかしダニスはそんな毎日を苦に思うことがなく、むしろその状況を楽しんでさえいた。新しい知識が増えるのは面白いし、出来ることがどんどん増えていく過程は楽しい。
毎日多くの家庭教師が訪れ、ダニスに様々な分野の知識を与えたが、どんな課題もダニスは卒なくこなしていく。乗馬や剣技、武術の覚えも早く、何をさせてもダニスは優秀な生徒であった。
そんなダニスが人目を避け、こっそりと城から抜け出すようになったのは五歳の時からだ。ダニスが五歳――つまりは、弟のクリスが二歳になり、教育係がつき始めた頃からである。
生まれた時からクリスの魔力量は特別で、そのこと自体はダニスもなんとなく知っていた。魔力が高いということで最初から期待はされていたのだろうが、実際に魔法の使い方を教わってから見せられたクリスの能力は、期待以上のものだったのだ。
簡単な魔法の使い方を教わったクリスはそこから特に厳しい修行をすることもなく、感覚と独学でどんどん難しい魔法を習得していった。魔力の量だけでなく、魔法を使うセンスも並外れているということを、その時に全員が知ることになる。
そこから少しずつ、皆がダニス以上にクリスの教育に力を入れ始めたことを、幼いながらに賢いダニスは悟ったのだ。――同時に、ひどく虚しくなった。
ダニスも、魔法が苦手だったわけではない。魔法の扱いという分野でもダニスは優秀で、今までに褒められたことしかなかった。しかし誰の目から見ても、クリスの魔力とセンスは並外れて別格だったのだろう。
魔法は選ばれた者しか使えない、特別で素晴らしい力。多少難解なことでも、魔法で解決できることは多いのだ。そんな魔法を難なく扱えるクリスは誰よりも素晴らしく特別な存在だと、幼いダニスの目には映ったのかもしれない。魔力が人並みだというだけで、自分がひどく無力な存在に感じられた。
期待の目が一気にクリスに向けられ、あれもこれもとクリスに教えたがる人が増えた。
その分ダニスは自由な時間が増えていき、魔法に関してだけで言えば、完全に弟よりも教えてもらえることは少なかった。もともと教本を読むだけで十分に理解ができる優秀な子供だったということもあり、課題の本を渡されるだけの科目も出てきてしまう。
王位継承者はどちらになるのかという話を耳にすることも増え、聞きたくない話を避けるために、この頃からダニスはこっそり城から抜けて一人で過ごすことが多くなっていったのだ。
庭園から外へ出られることに気付き、森の中を散策してお気に入りの場所も見つけた。
そんな状態が続いた数年後、とある晴れた日。今日も定番の場所に行って一人で過ごそうとダニスが城を抜け出した時のことだ。いつもは誰もいないはずのその場所に、弟と同じ年くらいの女の子が一人で楽しそうに花に触れていた。
見つかる前に場所を変えようとしたダニスだったが、一つ気になることがありその子に声を掛けてしまう。
「その草、触ると肌がかぶれるから摘まない方がいいよ」
言った瞬間、振り向いた女の子と視線が絡む。
びっくりしたように数秒動きを止めた女の子は、「そうなの?」と不思議そうにダニスを見ながら口にした。
かと思えば「あ!」と声を上げ、ダニスのいる方向とは反対の方に走り出し、今度は急に足を止める。
「ねえ、それじゃあ、こっちの花も触っちゃだめ?」
危ないよと教えたらすぐに去るつもりだったのに、完全に帰るタイミングを逃してしまった。
仕方なく指差された花に近づき、その花を観察するためにダニスも女の子の隣で膝を折る。
「えっと、これは……ああ、大丈夫かな。似てるけど、葉っぱの形が少し違うから触ってもいいやつだよ」
「へぇ、そうなんだぁ。ありがとう。見ただけで分かるなんて本当にすごいね」
きっかけはそんな会話だったのだ。
また教えてねと笑顔で言った彼女に、時間がある時にここに来ると返事をしてしまい、そこから何度も会うことになる。
自己紹介をしたのは次に会った時で、この時はまだ互いの名前も知らなかった。
たくさんの植物の生えたこの場所でなければ、きっと話しかけることもしなかったであろう。
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