【完結・R18】結婚の約束なんてどうかなかったことにして

堀川ぼり

文字の大きさ
上 下
13 / 30
縮まる距離

2-10.これ以上の幸せは※

しおりを挟む

「あ、あー……っひん、ぅあ、はっ……あぁ、っあ」

 自分の口から落ちる声が不思議と遠く聞こえる。
 いやらしい水音や、ベッドが微かに軋む音。そんな音ばかりが耳に入り、その度にまた一段と気持ち良いのが増す気がした。
 舐めて吸われて潰されて、散々苛められた陰核は、もう快楽を拾うだけのいやらしい器官だ。二回イカされた辺りからは、自分が何をされているのかさえ、もう分からなくなっていた。
 こんなにも気持ち良いのに、まだ慣らされているだけだというのが恐ろしい。
 一体、ダニスはいつになったら挿れるつもりなんだろうか。自分から挿れて欲しいと告げる勇気はなく、何度目になるのか分からない悲鳴のような声だけがリーシャの口から落ちる。

「んんっ、んっ、あ、やっ、ナカ……っそこ、きもち、やぁ、おかしっ……あっ、アッ、ンンッ……はっ」

 びくりと震えてまた絶頂に達すると、零れた体液がお尻まで伝っていき、真っ白なシーツとダニスの手を汚した。
 時間をかけて慣らされて、ナカにはもう三本の指が入っている。いろんな方向に曲げられて内側からお腹を刺激されると、気持ち良くて堪らない。

「も……わたし、あ、いっぱいイッて……」
「うん、いっぱい濡らしてくれたし、そろそろ挿れようかな。リーシャ、いい?」
「っん、はい……も、平気……して。してください……」

 体勢が変わり、脚の間にダニスの身体が入る。
 大きさや形を見ることはなく、ぐずぐずに溶けたそこに硬いものが擦り付けられる感触がした。
 そこからゆっくりと沈んでいく熱が、リーシャのナカで広がっていき形を変える。
 初めての感覚に身体が強張り、緊張で呼吸が止まりそうになった。

「ほら、ちゃんと息して」
「あ……っひ、ぅあ……っ」
「はっ……ん、これで半分くらい。……痛い?」

 ゆっくりと腹の中になにかが沈んでいき、感じたことのない質量に小さく悲鳴が上がる。
 思っていたより距離が近い。ぐちゅ、とか、ぐぷっと響いた音が、なんだかとても生々しく感じる。
 今なにをしているのかを改めて意識すると、あまりにも淫猥でぐらりと目眩がした。

(でも、ちゃんと訊かれたこと、答えないと……)

 頭の中がぐちゃぐちゃで、うまく言葉を作れない。しかしそんな理由で相手の言葉を無視するのは駄目だと、どうにか伸ばした手でダニスの腕に触れる。

「……い、いたくはない……です」
「そう?」
「へいき、だから……もっと深いの、っんぁ」

 言った瞬間に口を塞がれ、呼吸ごとダニスに食べられてしまう。
 腰が強く押し付けられ、その瞬間に凄い圧迫感は感じたけれど、十分に濡れたそこは大した痛みを感じなかった。ただ満たされていく感覚に、ゾクゾクとリーシャの腹の奥が震える。

「あ、あ……っん、ぁ」
「っは、よかった。入らないから今日はやめようとか、絶対に言われたくなかったんだよね」
「あっ、ん……ひっう、あっ」
「あー……可愛い。すごく可愛い」
「あっ、あ……んっ、んぁ」
「ねぇ、お願い。好きって言って」

 深い場所まで侵入されて、そこで一度ダニスの動きが止まる。ただ入っているだけでもこんなに気持ち良いのに、ナカで動かされたらどうなってしまうのだろう。
 少しずつ沈んで、馴染んで、広げられていく感覚。触れているところ全部が気持ち良くて理性が溶ける。
 狭い場所を無理に抉じ開けられていくようで苦しいはずなのに、不思議と、止めて欲しいとは思わなかった。

「リーシャ?」
「あ……すき、です。ダニス様が好きで、だから、もっといっぱい……」
「は……」
「っんあ、もっと、ダニス様も気持ち良いの、奥まで欲しっ、あ、やっ……!」

 きっと語順は正しくないし、冷静になったら恥ずかしい言葉ばかりだ。頭の中がぐちゃぐちゃで、思ったことがそのまま口から出る。
 しかし、正しい文法でなくとも、ダニスの理性を崩すにはその一言で十分だった。
 は、と短く息を吐いたダニスが、より深いところに届くように腰を押し付ける。頭の中が真っ白に染まって、悲鳴のような嬌声がリーシャの口から漏れた。

「ぅあ、あっ……っん、ちょっと、だけ……それ、くるし、んっ、……っひあ、やっ」
「ごめん、少しだけ我慢して。リーシャが好きだって思ってくれてるうちに全部欲しい」

 熱くて苦しくて、じんわりと広がっていく熱に浮かされそうになる。苦しさや痛みすらも何故だか嬉しくて、繋がっている部分がじわりと熱くなった。
 深い場所に挿れられたまま、いやらしい方のキスをされて舌が絡む。どこがどう気持ち良いのか分からないまま揺らされて、頭の中がダニスのことでいっぱいになる。

「……まだ、ちゃんと返事聞けてなかった」
「へ……?」
「ね、俺と結婚してくれる?」
「っん……あ、あぁっ」
「して?」

 こんな状態で言わないで欲しいと、そんなことを考えている余裕さえない。
 気持ち良いところ全部を触られて、頭の中が真っ白になる。

「あっ、あ……まって、っん」
「返事欲しい。ちょうだい」
「んっ……あ、頭の中、ふわふわしてるときに、やっ、そういう話、っん……ぁ、や、だめ、です」
「こういう時にだから話したい。返事して。俺はずっとリーシャのことが好きだった」

 こんな状態だというのに、「好き」という言葉だけは甘く響いて脳に届く。
 金色の瞳に見下ろされ、一瞬だけ時間が止まったようにも感じた。

「……ここまで許してくれてるのに、断られるなんて思ってないけど」
「あ……」

 リーシャだって、もう断るつもりなんかない。
 ダニス以外に触られるのも、ダニスが自分以外と結婚するかもしれない可能性も嫌だ。それだけの想いを持って、この行為に至った。

「し、ます……結婚、してください。あの、本当に好き、です」
「……うん、ありがとう。俺も愛してる」
「あっ……あ、……ぃンッ」

 最奥に押しつけられ、ダニスを掴んでいた指先にぎゅっと力が入る。達した瞬間に一瞬呼吸が止まり、そのあと一気に全身から力が抜けた。

「はっ……ぐ」

 ぶるりと震えたダニスが短く息を吐き出し、ナカに入っていたものが引き抜かれる。その表情があまりにも色っぽくて、ダニスの顔からリーシャは視線が逸せなかった。

「うっ、はぁ……」

 ダニスが達した時の表情なのだと、そう気付いた時にはもう全てが終わったあとだ。勢いよく放たれた精液は、リーシャの太腿とお腹を汚している。

「は、あー……ごめん、ほんと、我慢できなかった」
「ダニス様、あ、えっと……」
「……ほんと、よかった。嬉しい。今のリーシャが俺のこと好きになってくれて」

 どろりと溶けた金色の瞳に映され、その瞬間にぶわりとリーシャの胸が沸く。
 心臓がぎゅっと締め付けられたような、直接掴まれたような、そんな感覚。
 やっぱりすごく好きだなぁと、そんなことを改めて思った。

「あの……どうぞ、これからもよろしくお願いします……」
「……うん。一生かけて大事にするから。こちらこそ、末永くよろしくお願いします」

 キスを交わして笑い合う。その瞬間があまりにも幸せで、ここで再会できてよかったと心の中で呟いた。
 汚れた身体を拭き、軽く後処理をしてもらったあと、ダニスに抱き締められる形で二人でベッドに横になる。
 今日が終わってしまうのが勿体無い。心がふわふわして、幸せで、不思議と疲れなんて感じなかった。
 それでも肌を伝う体温が心地良くて、瞼はどんどん重くなっていく。

「ほら、おやすみ。また明日」
「ん、はい……」

 目尻にキスを落とされ、目を閉じると数秒で意識が落ちる。
 好きな人の腕の中でつく眠りがあまりにも気持ち良くて、これ以上に幸せな瞬間はないかもしれないとリーシャは思った。

 すーすーと寝息を立て始めたリーシャを抱きしめ、その体温にダニスはほっと息を吐く。

「……余計なこと、思い出さないままでよかった」

 安堵の色が交ざった独り言が、リーシャの耳に届くことはない。広い室内に飲み込まれ、そのまま夜の中に消えてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない

迷い人
恋愛
20歳になっても未だ婚約者どころか恋人すらいない国王ダリオ。 「陛下は、同性しか愛せないのでは?」 そんな噂が世間に広がるが、王宮にいる全ての人間、貴族と呼ばれる人間達は真実を知っていた。 ダリオが、幼馴染で、学友で、秘書で、護衛どころか暗殺までしちゃう、自称お姉ちゃんな公爵令嬢ヨナのことが幼い頃から好きだと言うことを。

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...