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大切にしないといけないなって、ちゃんと思ってるよ
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広様の恋人っていう響きが信じられなくて最初はひたすら戸惑っていたけれど、一緒にいる時間が増えていく度につくづく思い知らされる。
そういえばこの人、ストーカー紛いな事をする人だったんだよなぁ、と。
「……どこから仕組んだ事だったんですか、これ」
「んー……別に、大した事はしてないよ? たまたま君の友達が俺の知り合いと繋がってたってだけで」
にっこりと、綺麗に作られた表情で笑いながら。
部屋に入って直ぐに問い詰めるつもりで言ったのに笑顔でさらりと躱されて、心の中でモヤモヤしたものが広がっていく。
はぐらかそうとした時点で心当たりがあるって事だ。
大体その言い方が、もう肯定しているようなものだろうに。
たまたま、なんて。絶対にそんな訳がない。
最近友達の泉が連れていってくれるようになった素敵なカフェが、偶然にも紀広さんのお友達が経営しているカフェだった。
うん、まぁそれだけだったなら、本当にただの偶然だと思っていたと思う。
だけどそのカフェで私が話してた内容を聞こえた範囲で店長さんが紀広さんに横流ししていて、私が行った日付とか頼んだものまで逐一報告していた、なんて。そんなの絶対おかしいでしょう。
よく考えたら手紙に私が仕事で悩んでる事とか書かれてたし、送ってくれるプレゼントも完全に私の好みが把握されてた。ただSNS遡って知られただけだろうって油断してたけど、きっとそれだけで知り得た情報じゃない。
泉に聞いたら同期の子がオススメのお店って教えてくれたカフェだって言ってた。でも、どこまでが本当か分からない。
泉の同期が仕組まれた人なのか、それとも泉と仲の良い同期に何かを吹き込んだ人がいるのか。
本当に、こんな風には考えたくないけれど。泉自身が分かっていて私をあの店に連れていった可能性だってあるのだ。
仕事の愚痴とか近況報告とか、よくある彼氏欲しいなーっていう他愛ない楽しいお喋りが私の情報を探る為に仕組まれた話題だったのかなって、そう考えると泣きたくなる。
「……友達、疑うような事思いたくないんです」
「うん?」
「でも紀広さんがどこから仕組んだ事なんだろうって……。考えれば考えるほど不安で、どうしても疑っちゃう……」
ぎゅうっと紀広さんの服の裾を握りながら言うと、ゆっくりと頭を撫でられて綺麗な瞳が細められた。君は良い子だねって優しい声が耳元で響いて、そのまま額に軽く口付けられる。
「ごめんね。でも君の友達には本当に近付いてないから安心して」
「本当に……?」
「うん本当。まあそのお友達にお店紹介するようにその周囲の人に色々と吹き込んだりはしたけど来てくれるかどうかは分からなかったし……偶然上手くいっただけだよ」
「偶然……」
「君の人間関係どうにかするような広い交友関係は、流石に俺も無いからね」
「ふっ……」
言いながら唇が塞がれて、ちゅっと短い音を立てて離れる。
その言葉がどこまで本当か分からないけど、多分これ以上は何も教えてもらえない。
こうやってキスしてきたりするの、もうこれ以上話続けるなって合図だ。
「き、紀広さ……んっ」
「うん、なぁに?」
「……っあ、の、……っふ」
なぁにって甘い声で訊くくせに、私に喋らせる間も与えないでキス続けるの絶対わざと。
まだ慣れなくて私が頭いっぱいになるの、分かってやってる。絶対に。
最初キスした時は本当に一回触れるだけで終わりだった。
それなのにどんどん回数増えてきて、こうやって連続で何回もキスするのが当たり前になっていく。私のペースで進めてくって紀広さんは言ってくれたけど、なんていうか、なんか、慣れさせるように少しずつ教え込まれていってるみたい。
ペースを握ってるのは多分、いつも全部紀広さんの方だ。
唇が離れて息が触れると至近距離で顔を覗かれたまま、甘ったるい声が鼓膜を揺らす。
「もう少し長いキス、出来る?」
「っ……?」
「息の仕方教えてあげる。少しでいいから口、開けて?」
子供に食事をさせるような台詞なのに言い方が酷くいやらしい。下唇を指でなぞられると嫌だなんて返事はもう出来なくて、重ねられてから少しだけ空いた唇の隙間からぬるりと何かが入ってくる。
舌が絡めとられるとそれだけで背中がぞくぞくして、これ以上は駄目だと思った。
「っや……!」
気付いたら無意識に紀広さんを拒んでいて、押し返されてぽかんとした顔の紀広さんと目が合う。
「ごめんね。……嫌、だった?」
「ちが、違くて……、こ、怖かった? と、思います。……多分」
本当に、嫌悪感があったわけじゃない。ただ心臓がすごい煩くて背中ゾクゾクして、あれ以上続けたら呼吸の仕方とか忘れて死んじゃうって、そんな風に思った。
ああでも、今のは絶対に嫌がってるように見えただろう。押し返して拒んでしまった事は事実なんだから。
失礼な嫌がり方をした所為で、紀広さんが少しだけ怖い顔しているように見える。
これだけの事で大袈裟に反応して、なんか、経験の差が歴然で慣れてなさすぎて恥ずかしい。
「……も、もう一回しますか……?」
「あー……うん、流石にそんなに怯えてる子に続き出来ないかなぁ」
続き、が、あるんだ。
分かっていたけどあれで終わりじゃないんだって、その事実が突きつけられた気がしてカーッと頭まで熱くなる。
熱くなった頰に紀広さんの指先が触れて、それが少しだけ冷たくて心地良い。
「……ごめんなさい」
「やだなぁ、大丈夫だから謝らないで。俺の方こそ焦ってごめんね」
優しく触れて、笑ってくれる。
こういう分かりやすい優しさが凄く嬉しくて、慣れてなくて申し訳ないなぁって思いながらも好きだなって気持ちが募る。
「大丈夫だから、少しずつ慣れていこうね」
ああでもやっぱり、こういうペース私には早いと思います。
そういえばこの人、ストーカー紛いな事をする人だったんだよなぁ、と。
「……どこから仕組んだ事だったんですか、これ」
「んー……別に、大した事はしてないよ? たまたま君の友達が俺の知り合いと繋がってたってだけで」
にっこりと、綺麗に作られた表情で笑いながら。
部屋に入って直ぐに問い詰めるつもりで言ったのに笑顔でさらりと躱されて、心の中でモヤモヤしたものが広がっていく。
はぐらかそうとした時点で心当たりがあるって事だ。
大体その言い方が、もう肯定しているようなものだろうに。
たまたま、なんて。絶対にそんな訳がない。
最近友達の泉が連れていってくれるようになった素敵なカフェが、偶然にも紀広さんのお友達が経営しているカフェだった。
うん、まぁそれだけだったなら、本当にただの偶然だと思っていたと思う。
だけどそのカフェで私が話してた内容を聞こえた範囲で店長さんが紀広さんに横流ししていて、私が行った日付とか頼んだものまで逐一報告していた、なんて。そんなの絶対おかしいでしょう。
よく考えたら手紙に私が仕事で悩んでる事とか書かれてたし、送ってくれるプレゼントも完全に私の好みが把握されてた。ただSNS遡って知られただけだろうって油断してたけど、きっとそれだけで知り得た情報じゃない。
泉に聞いたら同期の子がオススメのお店って教えてくれたカフェだって言ってた。でも、どこまでが本当か分からない。
泉の同期が仕組まれた人なのか、それとも泉と仲の良い同期に何かを吹き込んだ人がいるのか。
本当に、こんな風には考えたくないけれど。泉自身が分かっていて私をあの店に連れていった可能性だってあるのだ。
仕事の愚痴とか近況報告とか、よくある彼氏欲しいなーっていう他愛ない楽しいお喋りが私の情報を探る為に仕組まれた話題だったのかなって、そう考えると泣きたくなる。
「……友達、疑うような事思いたくないんです」
「うん?」
「でも紀広さんがどこから仕組んだ事なんだろうって……。考えれば考えるほど不安で、どうしても疑っちゃう……」
ぎゅうっと紀広さんの服の裾を握りながら言うと、ゆっくりと頭を撫でられて綺麗な瞳が細められた。君は良い子だねって優しい声が耳元で響いて、そのまま額に軽く口付けられる。
「ごめんね。でも君の友達には本当に近付いてないから安心して」
「本当に……?」
「うん本当。まあそのお友達にお店紹介するようにその周囲の人に色々と吹き込んだりはしたけど来てくれるかどうかは分からなかったし……偶然上手くいっただけだよ」
「偶然……」
「君の人間関係どうにかするような広い交友関係は、流石に俺も無いからね」
「ふっ……」
言いながら唇が塞がれて、ちゅっと短い音を立てて離れる。
その言葉がどこまで本当か分からないけど、多分これ以上は何も教えてもらえない。
こうやってキスしてきたりするの、もうこれ以上話続けるなって合図だ。
「き、紀広さ……んっ」
「うん、なぁに?」
「……っあ、の、……っふ」
なぁにって甘い声で訊くくせに、私に喋らせる間も与えないでキス続けるの絶対わざと。
まだ慣れなくて私が頭いっぱいになるの、分かってやってる。絶対に。
最初キスした時は本当に一回触れるだけで終わりだった。
それなのにどんどん回数増えてきて、こうやって連続で何回もキスするのが当たり前になっていく。私のペースで進めてくって紀広さんは言ってくれたけど、なんていうか、なんか、慣れさせるように少しずつ教え込まれていってるみたい。
ペースを握ってるのは多分、いつも全部紀広さんの方だ。
唇が離れて息が触れると至近距離で顔を覗かれたまま、甘ったるい声が鼓膜を揺らす。
「もう少し長いキス、出来る?」
「っ……?」
「息の仕方教えてあげる。少しでいいから口、開けて?」
子供に食事をさせるような台詞なのに言い方が酷くいやらしい。下唇を指でなぞられると嫌だなんて返事はもう出来なくて、重ねられてから少しだけ空いた唇の隙間からぬるりと何かが入ってくる。
舌が絡めとられるとそれだけで背中がぞくぞくして、これ以上は駄目だと思った。
「っや……!」
気付いたら無意識に紀広さんを拒んでいて、押し返されてぽかんとした顔の紀広さんと目が合う。
「ごめんね。……嫌、だった?」
「ちが、違くて……、こ、怖かった? と、思います。……多分」
本当に、嫌悪感があったわけじゃない。ただ心臓がすごい煩くて背中ゾクゾクして、あれ以上続けたら呼吸の仕方とか忘れて死んじゃうって、そんな風に思った。
ああでも、今のは絶対に嫌がってるように見えただろう。押し返して拒んでしまった事は事実なんだから。
失礼な嫌がり方をした所為で、紀広さんが少しだけ怖い顔しているように見える。
これだけの事で大袈裟に反応して、なんか、経験の差が歴然で慣れてなさすぎて恥ずかしい。
「……も、もう一回しますか……?」
「あー……うん、流石にそんなに怯えてる子に続き出来ないかなぁ」
続き、が、あるんだ。
分かっていたけどあれで終わりじゃないんだって、その事実が突きつけられた気がしてカーッと頭まで熱くなる。
熱くなった頰に紀広さんの指先が触れて、それが少しだけ冷たくて心地良い。
「……ごめんなさい」
「やだなぁ、大丈夫だから謝らないで。俺の方こそ焦ってごめんね」
優しく触れて、笑ってくれる。
こういう分かりやすい優しさが凄く嬉しくて、慣れてなくて申し訳ないなぁって思いながらも好きだなって気持ちが募る。
「大丈夫だから、少しずつ慣れていこうね」
ああでもやっぱり、こういうペース私には早いと思います。
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