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あたらよ⑥

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 安心したように吐かれた息に、私の心臓はうるさいくらいに大きく動いて反応する。
 僅かに緩んだ恭弥くんの表情に、不思議と泣きそうになってしまった。

「……そう。僕のこと好きなんだ?」

 聞かれて、耳が熱くなる。
 咄嗟に声を出すことが出来ず、ただ頷くことで返事を伝えた。
 しかしすぐさま「ちゃんと言って」と耳打ちされてしまい、もう一度声を出すことになってしまう。

「……きょ、恭弥くんのこと、好きです」
「うん、僕も」
「ん、ふっ……ぁ」

 唇がまた触れて、離れる。
 嬉しそうに瞳を細める恭弥くんが目の前にいて、緩んだ空気にまた期待してしまう。このまま続きをする雰囲気なのではないかと考えると、途中で我慢を強いられた下腹部が疼いた。

「可愛いことばっかり言ってくれると、止まらなくなりそう」
「つ、続きする……?」
「あー……途中で止められるのもう嫌だから、若菜が誤解してそうなところ全部話しておきたいんだけど、あとは何を話せばいい? ……ああ、避妊する理由だっけ?」
「う、うん……?」
「いつでも離婚できるように避妊しておくとか、若菜相手にそんなの考えたことないよ。まあ、若菜が僕との婚約辞めたいって言い出したら、繋ぎ止める手段として子供作ることも考えてはいたけど」
「へ……」
「結婚したからすぐにでもって若菜が考えるのは、僕の家でそれが妻の一番の責務だとか教えられてきたからだよね? 義務で欲しがるものでもないと思うから、すぐにじゃなくていいと思ってる。それだけ」

 話しながらも恭弥くんの手は私に触れたままで、少しでも油断をすると変な声が出てしまいそうになる。
 今はまだ話をしている最中なのに、半分も頭に入ってこない。

「純粋に若菜が子供を欲しいと思っているならごめんね。今はタイミングが悪いから、もう少し待って欲しい」
「えっと、タイミング……?」
「不安要素が全部潰せてない。身重になった若菜に何かされたらとか、無事に産まれた後に子供に手を出されたらって考えたら少し動きにくい。でも誤解が解けた上で若菜が嫌じゃないなら、子供のこととか抜きにして早く抱きたい。触るの、ずっと我慢してた」
「ひゃっ……」

 私の首筋に恭弥くんの顔が埋まる。そのままゆっくりと割れ目を指でなぞられて、直接的な刺激に思わず腰を動かしてしまった。

「まだ他に聞きたいことはある? セックスする前にちゃんと話して、若菜が不安に思うこと全部消しておこう」
「あ、あっ……ぁ、やめ……」

 二本の指が私の体内に沈み、いやらしい音が下腹部から聞こえた。気持ち良い所を優しく内側から圧迫され、激しい動きでもないのに信じられないほどの快感が身体を駆ける。
 すでに何度かイッた後だからなのだろうか。
 確実に、私の身体は感度が上がっている。

「あっ、あ……」
「聞きたいこと、ない?」
「も、ない……大丈夫で、っひあ」
「僕が若菜のこと好きで堪らないんだって、ちゃんと分かってくれたの?」
「ん、わかった……恭弥くんの好きな人、もう誤解してな、から……待っ、ぁう……ん、っひ」
「ここ、若菜が気持ち良いって声出してくれるところ。指でぐりぐりされるの好きだよね」
「や、あぁっ、ぅ、指、とんとんするの……それだめ、ぁ、いく……いっ、んん」
「あー……可愛い。ナカびくびくしてるね? もっと欲しがってるみたい」

 簡単に達してしまった私の中から、汚してしまった恭弥くんの指が抜けていく。
 頭がくらくらしている状態でビニールが破られる音を聞き、泥濘に触れてきた硬いものが何かを想像して腰が震えた。
 指よりもずっと質量のあるものなのに、大した抵抗もせずに私の身体はそれを受け入れてしまう。

「あ、っああ、ぅ……」
「こっち見て。腕、回して」
「ふぁ、っん……」
「甘えて、欲しがって。好きって言って」
「はっ……ん、あ、恭弥く……」
「好きだよ。大好き。君からも言って、僕に教えて」

 ゆっくりと沈んでいき、狭い膣内が恭弥くんの形に変えられていく。
 奥に届いた感覚よりも、恭弥くんの声の方がずっと私をおかしくさせた。好きというたった二文字の言葉に脳が溶けて、私の理性ごと奪っていく。

「ん、好き……恭弥くん、好き……」
「ははっ、あー……可愛い……。は、本当に好き。全部欲しい」
「んぁ、あ、っはぁ……」

 挿れられたままで何度もキスをして、何度絶頂を迎えたのか自分でも分からない。
 気持ち良いのが止められなくて、自分の身体ではないようにすら感じた。
 今回が三回目のセックスになるが、恭弥くんの触り方はきっとこれまでとほとんど変わっていない。
 それなのに、恭弥くんの気持ちがあると分かるだけで、こんなにも気持ち良くなってしまう。
 請われた通りに好きだと口にすると、恭弥くんからも同じだけの愛の言葉が返ってくる。
 もっと最初からこうなりたかったという後悔は、頭の片隅でどんどん小さくなっていった。
 時間は止まらないし、過去にも戻らない。
 勿体無い二ヶ月だったと思わないわけではないけれど、今からでも十分に気持ちが満たされる。
 ただ気持ち良くて幸せで、ずっとこんな時間が続けばいいのにと、それだけを思う夜だった。
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