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あたらよ③

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 上の下着が外され、冷たい外気が胸に触れる。
 部屋を暗くすることも忘れていたなぁと、脱がされた今になってふとそんなことを思った。

「っふ……」

 恭弥くんの唇が私の首筋に触れ、骨張った大きな手が私の胸に伸ばされた。
 以前つけられた痕は完全に消えてしまったけれど、その時の感覚を少しだけ思い出してしまう。

「ん……柔らかい」
「は、恥ずかしいから。あんまりゆっくりするの、なんか……」
「若菜のいろんな顔、ちゃんと見ておきたいんだけど」

 初めて抱かれた時のような、甘くなった恭弥くんの声に私は弱い。
 耳に残ってぞくぞくして、その声で名前を呼ばれると、全部を許しそうになってしまう。

「んっ、うぁ……は」
「素直に反応してくれるの本当に可愛いね。こっちの理性、簡単に消えそうになる」
「ひ、ぁ……っんん」
「はー……可愛い」

 可愛い可愛いと恭弥くんらしくない言葉を耳元で連呼され、理性なんて私の方が先に消えてしまいそうだ。
 触れる指や唇が泣きそうなくらいに優しくて、言葉以外でも大好きだと伝えてくれている気がしまう。
 大好きで、だからこそ大事にしたいと、そういう触れ方。きっと最初から、恭弥くんは私にそうしてくれていたのだ。
 気を遣わせているんじゃないかと、勝手に不安になって怖かった。彼女のことが誤解だと分かった今は、恭弥くんの優しさを素直に好意として受け取れる。

「っひぁ……!」

 胸の中心を避けて優しく膨らみに触れるだけだった指が、焦らすような動きを止めて尖りに触れた。
 もどかしさが無くなった途端に直接的な刺激を与えられ、思わず上半身を捩りながら声を出してしまう。

「あっ、くぅ……んっ、あ……」

 胸の突起が舌で転がされ、もう片方は指先に摘まれる。
 舐められている感覚そのものよりも、こんなにもいやらしい恭弥くんを見ていることの方が、私には刺激が強い。たとえ目を逸らしても、その情景を思い出して身体が熱くなる。
 一度でも見てしまうと、その扇情的な景色は脳にこびりついて離れてくれないのだ。
 そんなことを考えているうちに、胸にあった舌の感覚が、ゆっくりとお腹の方に下っていく。
 今日はまだ一度も痕が残るほどに強く肌を吸われたりしていない。
 それなのに、薄い肌の上をなぞられるだけで背中にぞくぞくしたものが駆け、簡単に私の息は上がってしまう。
 ヘソを通って下腹部に近付いた唇は、腰元に到着したところで一旦離れた。
 恭弥くんの両手が私のルームパンツの縁に触れ、下も脱がされそうになっているのだと分かる。
 ――もちろん、ここで嫌がるつもりなどない。
 少しだけ腰を浮かせ、脱がせやすいように自分から動いた。

「ふ、ありがとう。いい子だね」
「ん……」

 キスをしながらショーツごと下を抜き取られ、本当に一糸纏わぬ姿を恭弥くんの前で晒してしまう。
 恭弥くんの前でこの格好になるのは、今夜で三回目だ。
 心許ない姿ではあるけれど、今までよりずっと不安は少ない。慣れたからというわけではなく、単純に恭弥くんに触ってもらえることを、嬉しいと思えるからだろう。

「っひぁ……!」
「よかった、ちゃんと濡れてるね。でももう少しだけ濡らしたいな。いい?」

 確認するように指先でなぞられた場所。そこを濡らす方法を、私はもう知っているのだ。
 こんな聞き方をして、私からして欲しいと言わせるように仕向けるなんてずるい。
 恭弥くんが「したい」と言ってくれたことを、今の私が断るなんてできるはずがないのに。

「……ん、して」

 触りやすいように少しだけ足を開くと、目の前の恭弥くんが嬉しそうに息を漏らす。
 下腹部に顔が近付けられ、たったそれだけの行動に、私のお腹の奥が物欲しそうに疼いた。

「痛かったら言ってね」
「っん……あっ、ぁ、ふ」
「まぁ、最初から気持ち良いことしかするつもりないけど」
「あ、はぁっ……ぅあ、んっ」

 濡れた舌が触れた場所は、当然のように割れ目の上で主張している部分だった。
 私が簡単に快楽を拾ってしまう場所。その一点が執拗に恭弥くんの舌で弄ばれ、ゾクゾクした感覚が全身に広がっていく。
 恥ずかしいことになっている自覚はあり、しかしそれでも、止めて欲しいとは微塵も思わなかった。

「うぁ、あっ……ゃ、きょ……やくん、いく。それされるの、も……すぐイッちゃうの、っ」
「ん、トロトロになってる。気持ち良い?」
「きもちっ、ぅあ、あっ……っく」

 僅かに腰が浮いて、その瞬間に何かが弾けそうになる。お腹の奥が切なく疼いて、その疼きさえも気持ち良い。
 私がこんな状態になっても、恭弥くんの舌はそこから離れてはくれなかった。
 足が閉じられないように押さえつけられたまま、自由な足先だけにぎゅっと力が入り弛緩する。

「あ、あぁ……ッン、やっ、ひぅ、いく、っあぁ……!」
「はっ、いいよ。イッて」
「ぅあ、んっ、ンンッ……」

 恭弥くんの声を聞いた瞬間、強張っていた下半身から一気に力が抜けていく。
 頭の中が真っ白に染まり、我慢できずに出てしまった声が今さらに恥ずかしくなった。
 恭弥くんの舌に自分から押し付けるような体勢になりながら、私は一度目の絶頂を迎えてしまったのだ。

「はぁ……素直に受け入れてくれるの堪らないね。嫌とか怖いとか、本当にもう言わないんだ」
「っあ……」

 まだ絶頂を迎えたばかりで熱が引かない。そんな私のひくつく穴に、恭弥くんの指が触れた。

「も、そんなの言わな、っし、恭弥くんに触ってほし……っんぅ」
「はぁ、可愛い。ナカもすごいね、気持ち良さそう」
「あっ、あ、っんん」

 差し込まれた恭弥くんの指が、浅いところでお腹の内側を押す。
 私の弱いところを見つけるとそこだけを集中的に刺激されて、また軽くイカされてしまった。
 また一本指が増やされ、今度は少しずつ深いところまで沈んでいく。
 トロトロした愛液が恭弥くんの手を汚し、溢れた体液が私のお尻の方を伝ってシーツまで濡らしてしまった。
 指で掻き回されるだけで、くちっ、ぐちゅっと、私の下腹部から分かりやすくいやらしい音が立つ。
 期待しているみたいで恥ずかしいけれど、実際にそうなのだからもう仕方ないだろう。自分の意思ではどうすることもできないのだ。
 今からナカにももらえるのだと思うと、それだけで私の身体にまた熱が溜まっていく。
 早く欲しくて恭弥くんに耳打ちすると、興奮しきった目を向けられてゾクリとしたものが私の背中を駆ける。
 たったそれだけの視線で、また私の下腹部に熱が広がっていった。

 
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