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いつもと同じ時間に帰ってきてくれた恭弥くんを出迎え、食事の用意を終えたテーブルに二人でつく。
しばらくしてから「今日はどうだったの?」と恭弥くんに訊かれてしまい、彼女のことは伏せて話をしようと口を開く。
「あ、うん、あのね……」
そこまで声にした後で、一瞬、何を言えばいいのか分からなくなり言葉を止めてしまう。
いろいろと話せることがあったはずなのに、ぱっと思い浮かんだのは彼女のことばっかりだった。
手を繋いでクリスマスイブにデートをする人がいて、でも私が離婚したと勘違いすると嬉しそうに喜んで……と、口を滑らせてそんなことを言いそうになってしまう。
「えっと、凄く並んでて忙しくて……でも、それも楽しかったよ」
なんてつまらなくて、ありきたりな返事なんだろう。言ってすぐに思ったけれど、間違ったことを言ったわけでもないのに、訂正するのもおかしな話だ。
「……ああ、そう? よかったね」
こんなつまらない感想を言われても、恭弥くんの方だって返事に困るだろう。
ただ一言返ってきた言葉に曖昧に笑って、「あとは、帰りにケーキも買ってきたよ」と付け加えて報告をする。
このまま話を続けていたら、浅ましい期待と汚い嫉妬が表情から漏れてしまいそうだ。
恭弥くんの視線から逃げるようにして、卓上の料理に向くように自分の目線を逸らした。
クリスマスらしく、見た目も華やかになるようにと考えて用意した食事を、こんなに複雑な気持ちで食べることになるとは思わなかった。
お店で会ってから、私はずっと彼女のことばかり考えている。そのことだけで脳の容量がいっぱいなのか、恭弥くんと何を話せばいいのかも、だんだん分からなくなってしまった。
一番話したい話題ばかりが脳内を占めて、普通の会話が迷子になる。
本当に、どうなるのだろう。
もし彼女に恋人らしき人がいると言ったら、恭弥くんは少しくらい私の方を見てくれるのだろうか。
それとなくでいいから伝えたいと口を開くが、ふと思い出して押し黙ってしまう。
――そういう話聞きたくないから
――もう馬鹿みたいな話で止めないで
大泣きしてしまった結婚二日目の夜。あの時に恭弥くんから言われたことが、今の私をギリギリのところでとどめた。
恭弥くんは私の口から彼女の話題なんて聞きたくないし、馬鹿みたいな話をするのは駄目なことなのだ。
私が口を出していい話ではなく、彼女のことについては
、恭弥くんが気付いてくれるまで待たなければいけない。
「若菜?」
「……っあの、ワイン買ったのに出すの忘れてて……すぐ持ってくるね」
へらっと笑って席を立つと「ああ、そう」という冷めた声が後ろから聞こえた。
私が余計な口を出そうとしていたことが勘付かれていたらどうしよう。ただ一方的に気まずくて、恭弥くんの方を見ることができない。
ワインとグラスを持って席に戻り、いつもより時間をかけて夕食の時間となった。最後にケーキを切り分けて、すべてを平らげた数分後に順番にお風呂へ向かう。
果たして私は、いつも通りに恭弥くんと話せていたのだろうか。
何をしている時も、ずっと彼女の姿が頭の中をチラついていた。
明日は恭弥くんのお休みの日で、予約しているお店に二人で食事に行く予定となっている。
今日も明日も恭弥くんの時間は私がもらってしまい、一人で過ごすしかなかった本命の彼女は別の男性と過ごしているのだ。
誰から見てもおかしくな関係であろう現状に、一人で大きく溜息をつく。
――明日になったら余計なことが頭から抜けていたらいいのに。
そんなことを思いながらベッドに入り、恭弥くんの隣で微睡の中に落ちていった。
***
久しぶりに働いて身体的にも疲れていたし、余計なことばかり考えて、脳もかなり疲れてしまっていたのだろう。
その日の私は横になった瞬間に睡魔に負けて、すぐに意識を手放したらしい。
いつの間に寝てしまったのだろうと、そんなことを思いながらも、慣れない感覚によって一度起こされる。
私の顎に添えられた手や、僅かに聞こえる吐息混じりの低い声。
そこまでを把握したところで、私の口の中にあるものが、恭弥くんの舌だと気付く。
「ふ……っん、はぁ」
「……は、ごめん。起こしたね」
触れていた唇が離れ、繋がっていた唾液の糸が目の前でぷつりと切れる。
それだけで随分と激しいキスをしていたのだと分かり、身体が一気に熱くなった。
眠っていて何も覚えていないはずなのに、触れていた感触がまだ唇に残っている気がする。
「えっと、あ、え……? っあ、私すぐ寝ちゃって……」
「ああ、うん。寝てるなって思ったのに、一度キスしたら止まらなくなった。三十分くらいしか眠れてないね、ごめん」
「……っそんな、私こそほんと、ごめんなさい。恭弥くんがそういうことしたい日だって、ちゃんと分かってなくて……」
恋人がいる人にとって、こういうイベントの日はやはり特別なのだろう。
それなのに彼女と過ごすことが出来ず、恭弥くんも欲求不満だったのだろうか。
危うく、恭弥くんの欲に気付かずに、朝までぐっすり眠ってしまうところだった。
妻としての務めを果たさないなんて、そんなの私がここにいる意味がない。寝ている間に唇を合わせるだけで我慢させるなんて、そんなことは論外だ。
慌てて自分のパジャマに手を掛け、上から順番にボタンを外していく。
完全に前が開いた状態で袖を抜き、上は下着だけになった状態で恭弥くんへと視線を戻す。
「し、しよう……?」
「は?」
「……きょ、恭弥くんは、もう私とエッチしないの?」
キスはセックスのためにする前戯だ。
その後に続く行為があるからする行動であり、今のはそういうアピールだったのだろう。
恭弥くんがしたいなら、いくらでも付き合う。そこまで含めて、私の務めだ。
「服着なよ。いきなり何」
冷めた声に、指先が震えそうになる。
しかし、久しぶりに恭弥くんの妻らしいことができるのだ。その程度で引くわけにはいかない。
「あの、こんな……キスするなら、最後まで恭弥くんが気持ちいいことした方が」
「はは、本当に何? キスなんて君が寝てる間に毎日してるし、そこまで求めてないよ」
「え……」
「今日、様子おかしかったね。そんな顔してセックス誘うのも変。本当に何があった?」
僅かに眉間に皺が寄り、嘲笑するように恭弥くんが表情を歪ませる。
私の浅ましい気持ちは、いったいどこまでバレているのだろう。私の邪な気持ちがすべて気付かれているとしたら、本当に幻滅されかねない。
「……何も。本当に、大したことではないし」
「そうやって隠そうとするから凄く不安になった。気まずそうに顔逸らされるばっかりで、仕事中に誰かに会ったのかなとか、そのせいでまた心動いたのかなとか、考えておかしくなりそうだったよ」
「なにが……」
「あー……なんだろうね。不意打ちで好きな奴にでも会ったのかと思った」
まるで、私に好きな人がいるような言い方をする。
恭弥くん自身がそうだから、私のこともそう見えてしまうのだろうか。
私は恭弥くん以外に、恋なんてしたことがないのに。
「好きな人なんて、そんな……恭弥くんと結婚してるのに、私はそういうの考えたことないよ」
「僕が諦めろって言ったから、そうやって下手な誤魔化ししてくれるのかな。奥さんとしての模範解答だよね。無理して笑って、本当のこと何も言わない」
「本当のことって……」
本当に、こんな話をしても大丈夫なのだろうか。
言いたくて、しかし口を噤むしかないと思っていた話題を伝えたくて、期待するように恭弥くんを見てしまう。
迷いはあるけれど誤魔化す台詞も思いつかず、おずおずと口を開いた。
「きょ、恭弥くんの彼女に、今日会った……」
「彼女……?」
「あの、高校生の時に私がデート目撃して、泣いちゃった時の……」
「ああ、あの子。なんでそんな昔の話持ち出してくるのか分からないけど、会って何か思い出した? あの時もすごく気にしてたよね。妬いてくれただけってこと?」
「妬くとかそんな、可愛い感情じゃないの。もう、私すごい汚いこと考えちゃうんだって、自分で思って……」
「……何? ちゃんと教えて」
教えてと言われたことで、今なら話しても許されるのだと、胸につっかえていたものがようやく外れる。
聞いてくれるのなら、やっぱり私はどうしても言いたくなってしまうのだ。恭弥くんが裏切られたと傷付くのなら、傷心している隙に付け入ることができないかと、そんなことを思ってしまう。
「お店まで予約のケーキを取りに来てたの。その、男の人と二人で食べる用の」
「うん?」
「あの、男の人とデートしてて、恭弥くんが私と離婚するのを待ってるって言うのに、他にも相手作ってるから……そういう浮気みたいなこと、恭弥くんが知ったらどう思うんだろう、とか……」
わざわざ「浮気」なんて言葉で話してしまうあたり、自分の性格の悪さが滲み出ているような気がした。
「あの……」
「別にどうも思わないけど、若菜は僕にそれを言って何をして欲しいの?」
「え……?」
「もう何年も会ってないし、どうでもいいよ。君と離婚するの待ってるって何? 絶対にしないけど」
「え、え……?」
「はっ、何その反応。離婚してもらえると思ってたの?」
吐き捨てるように笑われ、ぐしゃりと歪んだ恭弥くんの顔に心臓が止まりそうになった。
私が思っていた反応と全く違う反応を、目の前の恭弥くんが返してくれる。
「早く服着てよ。いつまでもそんな格好でいられると、そろそろ手を出したくなる」
手を出されるのは全然構わない。構わないから、もっと、ちゃんと話をしたい。
私達は、しっかりとお互いの話をする必要があるのではないだろうか。
分かり合えていないことが、なんだかたくさんある気がする。
しばらくしてから「今日はどうだったの?」と恭弥くんに訊かれてしまい、彼女のことは伏せて話をしようと口を開く。
「あ、うん、あのね……」
そこまで声にした後で、一瞬、何を言えばいいのか分からなくなり言葉を止めてしまう。
いろいろと話せることがあったはずなのに、ぱっと思い浮かんだのは彼女のことばっかりだった。
手を繋いでクリスマスイブにデートをする人がいて、でも私が離婚したと勘違いすると嬉しそうに喜んで……と、口を滑らせてそんなことを言いそうになってしまう。
「えっと、凄く並んでて忙しくて……でも、それも楽しかったよ」
なんてつまらなくて、ありきたりな返事なんだろう。言ってすぐに思ったけれど、間違ったことを言ったわけでもないのに、訂正するのもおかしな話だ。
「……ああ、そう? よかったね」
こんなつまらない感想を言われても、恭弥くんの方だって返事に困るだろう。
ただ一言返ってきた言葉に曖昧に笑って、「あとは、帰りにケーキも買ってきたよ」と付け加えて報告をする。
このまま話を続けていたら、浅ましい期待と汚い嫉妬が表情から漏れてしまいそうだ。
恭弥くんの視線から逃げるようにして、卓上の料理に向くように自分の目線を逸らした。
クリスマスらしく、見た目も華やかになるようにと考えて用意した食事を、こんなに複雑な気持ちで食べることになるとは思わなかった。
お店で会ってから、私はずっと彼女のことばかり考えている。そのことだけで脳の容量がいっぱいなのか、恭弥くんと何を話せばいいのかも、だんだん分からなくなってしまった。
一番話したい話題ばかりが脳内を占めて、普通の会話が迷子になる。
本当に、どうなるのだろう。
もし彼女に恋人らしき人がいると言ったら、恭弥くんは少しくらい私の方を見てくれるのだろうか。
それとなくでいいから伝えたいと口を開くが、ふと思い出して押し黙ってしまう。
――そういう話聞きたくないから
――もう馬鹿みたいな話で止めないで
大泣きしてしまった結婚二日目の夜。あの時に恭弥くんから言われたことが、今の私をギリギリのところでとどめた。
恭弥くんは私の口から彼女の話題なんて聞きたくないし、馬鹿みたいな話をするのは駄目なことなのだ。
私が口を出していい話ではなく、彼女のことについては
、恭弥くんが気付いてくれるまで待たなければいけない。
「若菜?」
「……っあの、ワイン買ったのに出すの忘れてて……すぐ持ってくるね」
へらっと笑って席を立つと「ああ、そう」という冷めた声が後ろから聞こえた。
私が余計な口を出そうとしていたことが勘付かれていたらどうしよう。ただ一方的に気まずくて、恭弥くんの方を見ることができない。
ワインとグラスを持って席に戻り、いつもより時間をかけて夕食の時間となった。最後にケーキを切り分けて、すべてを平らげた数分後に順番にお風呂へ向かう。
果たして私は、いつも通りに恭弥くんと話せていたのだろうか。
何をしている時も、ずっと彼女の姿が頭の中をチラついていた。
明日は恭弥くんのお休みの日で、予約しているお店に二人で食事に行く予定となっている。
今日も明日も恭弥くんの時間は私がもらってしまい、一人で過ごすしかなかった本命の彼女は別の男性と過ごしているのだ。
誰から見てもおかしくな関係であろう現状に、一人で大きく溜息をつく。
――明日になったら余計なことが頭から抜けていたらいいのに。
そんなことを思いながらベッドに入り、恭弥くんの隣で微睡の中に落ちていった。
***
久しぶりに働いて身体的にも疲れていたし、余計なことばかり考えて、脳もかなり疲れてしまっていたのだろう。
その日の私は横になった瞬間に睡魔に負けて、すぐに意識を手放したらしい。
いつの間に寝てしまったのだろうと、そんなことを思いながらも、慣れない感覚によって一度起こされる。
私の顎に添えられた手や、僅かに聞こえる吐息混じりの低い声。
そこまでを把握したところで、私の口の中にあるものが、恭弥くんの舌だと気付く。
「ふ……っん、はぁ」
「……は、ごめん。起こしたね」
触れていた唇が離れ、繋がっていた唾液の糸が目の前でぷつりと切れる。
それだけで随分と激しいキスをしていたのだと分かり、身体が一気に熱くなった。
眠っていて何も覚えていないはずなのに、触れていた感触がまだ唇に残っている気がする。
「えっと、あ、え……? っあ、私すぐ寝ちゃって……」
「ああ、うん。寝てるなって思ったのに、一度キスしたら止まらなくなった。三十分くらいしか眠れてないね、ごめん」
「……っそんな、私こそほんと、ごめんなさい。恭弥くんがそういうことしたい日だって、ちゃんと分かってなくて……」
恋人がいる人にとって、こういうイベントの日はやはり特別なのだろう。
それなのに彼女と過ごすことが出来ず、恭弥くんも欲求不満だったのだろうか。
危うく、恭弥くんの欲に気付かずに、朝までぐっすり眠ってしまうところだった。
妻としての務めを果たさないなんて、そんなの私がここにいる意味がない。寝ている間に唇を合わせるだけで我慢させるなんて、そんなことは論外だ。
慌てて自分のパジャマに手を掛け、上から順番にボタンを外していく。
完全に前が開いた状態で袖を抜き、上は下着だけになった状態で恭弥くんへと視線を戻す。
「し、しよう……?」
「は?」
「……きょ、恭弥くんは、もう私とエッチしないの?」
キスはセックスのためにする前戯だ。
その後に続く行為があるからする行動であり、今のはそういうアピールだったのだろう。
恭弥くんがしたいなら、いくらでも付き合う。そこまで含めて、私の務めだ。
「服着なよ。いきなり何」
冷めた声に、指先が震えそうになる。
しかし、久しぶりに恭弥くんの妻らしいことができるのだ。その程度で引くわけにはいかない。
「あの、こんな……キスするなら、最後まで恭弥くんが気持ちいいことした方が」
「はは、本当に何? キスなんて君が寝てる間に毎日してるし、そこまで求めてないよ」
「え……」
「今日、様子おかしかったね。そんな顔してセックス誘うのも変。本当に何があった?」
僅かに眉間に皺が寄り、嘲笑するように恭弥くんが表情を歪ませる。
私の浅ましい気持ちは、いったいどこまでバレているのだろう。私の邪な気持ちがすべて気付かれているとしたら、本当に幻滅されかねない。
「……何も。本当に、大したことではないし」
「そうやって隠そうとするから凄く不安になった。気まずそうに顔逸らされるばっかりで、仕事中に誰かに会ったのかなとか、そのせいでまた心動いたのかなとか、考えておかしくなりそうだったよ」
「なにが……」
「あー……なんだろうね。不意打ちで好きな奴にでも会ったのかと思った」
まるで、私に好きな人がいるような言い方をする。
恭弥くん自身がそうだから、私のこともそう見えてしまうのだろうか。
私は恭弥くん以外に、恋なんてしたことがないのに。
「好きな人なんて、そんな……恭弥くんと結婚してるのに、私はそういうの考えたことないよ」
「僕が諦めろって言ったから、そうやって下手な誤魔化ししてくれるのかな。奥さんとしての模範解答だよね。無理して笑って、本当のこと何も言わない」
「本当のことって……」
本当に、こんな話をしても大丈夫なのだろうか。
言いたくて、しかし口を噤むしかないと思っていた話題を伝えたくて、期待するように恭弥くんを見てしまう。
迷いはあるけれど誤魔化す台詞も思いつかず、おずおずと口を開いた。
「きょ、恭弥くんの彼女に、今日会った……」
「彼女……?」
「あの、高校生の時に私がデート目撃して、泣いちゃった時の……」
「ああ、あの子。なんでそんな昔の話持ち出してくるのか分からないけど、会って何か思い出した? あの時もすごく気にしてたよね。妬いてくれただけってこと?」
「妬くとかそんな、可愛い感情じゃないの。もう、私すごい汚いこと考えちゃうんだって、自分で思って……」
「……何? ちゃんと教えて」
教えてと言われたことで、今なら話しても許されるのだと、胸につっかえていたものがようやく外れる。
聞いてくれるのなら、やっぱり私はどうしても言いたくなってしまうのだ。恭弥くんが裏切られたと傷付くのなら、傷心している隙に付け入ることができないかと、そんなことを思ってしまう。
「お店まで予約のケーキを取りに来てたの。その、男の人と二人で食べる用の」
「うん?」
「あの、男の人とデートしてて、恭弥くんが私と離婚するのを待ってるって言うのに、他にも相手作ってるから……そういう浮気みたいなこと、恭弥くんが知ったらどう思うんだろう、とか……」
わざわざ「浮気」なんて言葉で話してしまうあたり、自分の性格の悪さが滲み出ているような気がした。
「あの……」
「別にどうも思わないけど、若菜は僕にそれを言って何をして欲しいの?」
「え……?」
「もう何年も会ってないし、どうでもいいよ。君と離婚するの待ってるって何? 絶対にしないけど」
「え、え……?」
「はっ、何その反応。離婚してもらえると思ってたの?」
吐き捨てるように笑われ、ぐしゃりと歪んだ恭弥くんの顔に心臓が止まりそうになった。
私が思っていた反応と全く違う反応を、目の前の恭弥くんが返してくれる。
「早く服着てよ。いつまでもそんな格好でいられると、そろそろ手を出したくなる」
手を出されるのは全然構わない。構わないから、もっと、ちゃんと話をしたい。
私達は、しっかりとお互いの話をする必要があるのではないだろうか。
分かり合えていないことが、なんだかたくさんある気がする。
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