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第3章 迷いと試練の森
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午後の陽射しは、曇り空とはいえ肌を突き刺すようだ。
「少し休もうか?」と先頭を歩くロコが提案すると、モコが「そうね」とすぐに答えた。
「この世界の季節は、今は夏?秋?」とツカサが聞く。ツカサのような老体には体に応える暑さだ。
「この世界ではもう夏真っ盛り。だけど、数十年前からヘルトゥ・ルースに現れた魔界王ティスコフのせいで、この世界は暗闇とまではいかないけど、太陽の陽射しが隠れるような曇り空の天気が続いている。ほら、見える?」とロコが指を指す。はるか西には渦巻く暗闇が立ち込めている。
「あれが魔界王と、ゲームマスターと呼ばれる訳のわからない奴のせいで、作られた暗黒世界だよ。あの世界、ヘルトゥ・ルースから流れて来る闇のせいで、普段は晴天のこっちの世界でも、ずっと暗闇らしい」
「ずっと・・・?」とうたが聞き返す。
「そう・・・。ずっと。私達がこの世界に送られて来た時には、すでにこんな状態だった」とモコが言った。
「なんだか・・・。本当にロールプレイングゲームみたいだな・・・。その内、俺達がその魔界王と戦って、奴を倒すとかって話になるんじゃ・・・?」とツカサが冗談めいたことを言うと、ロコが「実はそうなんだ」と真剣な表情で答えた。
一瞬、その場が凍った。誰もが信じられない事をロコが簡単に口にしたのだ。
その場の雰囲気を察したロコがすぐに、「嘘!嘘だよ」と否定した。その言葉を聞いて三人からは安堵のため息が口から出た。
「ちょっと・・・、驚かせないでよ」とモコが少し怒り気味に言うと、ロコが「悪い悪い」と謝った。
とその時、ツカサは武器を買う際、店主のチップスに何かを頼まれていたことを思い出して、ロコに尋ねた。
「そういえば、武器屋の店主に何か頼まれていたようだけど・・・?」というと、ロコは苦笑いをしながら、「あぁ・・・、あれね。実は、大魔導士ガンダルの屋敷に行くという話しを聞きつけて、ガンダルの屋敷から魔法のアイテムをもらって来てくれというお願いだよ。俺はさ、そんなのは無理だと言ったけど、二人とも良い物を安くしてもらったからさ・・・。半分、断れなくて引き受けた」と言うと、モコが「また、そんな勝手な!大魔導士がそんな高価なアイテムをくれる訳無いし!それに、こっちは弟子を案内しているだけだよ」と言った。
「まぁね・・・。でも、もう一つ、実は依頼を受けていたんだ・・・」とロコが言うと、モコが「はぁ?!」と苦い表情を見せた。
「こっちは本当の依頼で、報酬もそれなりに出る」と少し自信を見せながら言う。
「アンタね・・・。こっちは二人じゃないんだよ!レベル1以下の魔法使いと僧侶を連れているんだよ。それなのに、依頼を受けたって!何考えているの?!」と、モコはかなりお怒りモードで言った。
「話は最後まで聞けよ!」とロコが怒鳴る。
そんな二人の会話から少し離れようとするうたとツカサ。
それでも、ツカサはこの4人の中では一番の年上だという認識はあるので、ロコモコの二人の間に割って入った。
「ちょっと、ちょっと二人とも落ち着いて。落ち着いて」といって、二人を引き離した。
「まずは、ロコさんの依頼というのを聞きましょう。それから、この後受け入れるかどうかを考えましょう」とツカサがいうと、モコは「おっさんはわかっているの?知らないでしょう。一度引き受けた依頼は達成できないと違約金を払うんだよ。だから、ちゃんと出来るか、達成できる依頼しか受けたくないんだよ」といった。
たしかにそれは正論だなと、ツカサは思ったが、ここはもう一つ大人になって、「ロコさんが受けた依頼って、なんですか?」と聞いた。
「依頼?あぁ・・・、それは君達二人をガンダルの所へ連れて行くという依頼だよ。最初は、新しい魔法使いと僧侶が誕生するが、その二人を大魔導士ガンダルの所へ案内してくれという話しの内容だった。なぜかと理由を聞くと、ガンダルからの直接の依頼で、君達二人は予言書に書かれている重要な人物らしい・・・」と説明した。
「なにそれ・・・?って、じゃあ、うたちゃんとツカサのおっさんがガンダルの所へ連れて行く相手だという事を、アンタは知っていたの?呆れた・・・。なに、じゃあ、アンタはこの旅は親切にガンダルの所まで案内してあげる旅じゃなくて、依頼を受けての旅だったの?」とモコが激高している。
「つぅか、何でお前がそこまで怒っているんだ?」とロコが聞いた。
「私はね・・・。もういいよ!なんでもない」と不貞腐れた。
うたがモコに近づいて行き、「大丈夫?」と声を掛けた。モコは気持ちを落ち着かせるために大きく息を吸い込んでから吐くと、「大丈夫、ありがとう。みっともないとこ見せちゃったね」と言って、バックパックから水筒を取り出すと、青汁を飲んだ。
4人は木陰を利用して休憩した。まだ二人にはしこりがあるようで、モコはうたと何か楽しそうに話をしている。楽しそうに話しているように見えているだけかも知れない。ロコはと言うと、少し離れた所で歩哨に立っている。彼が進んで見張りに立つと言ったのだ。
のどかな田園風景という訳にはいかないが、それでも、街からかなり離れたこの場所でも数軒は家が建っている。農家の住民が街から離れて住んでいるのだろう。いわば、村のような存在である。
「あそこに家が見えるけど、あそこには住人が住んでいるのかい?」とツカサがロコに聞いた。
「えっ?あぁ・・・。あの家には子供を含めて6人の家族が住んでいる。旦那と奥さんと二人が頑張って畑と豚を飼っている。子供は男の子が二人と女の子が一人。あとは雇われの戦士がいる」と教えてくれた。
「なぁ・・・。何で、昨日のうちに話してくれなかったんだ」とツカサがロコに聞いた。
「何を・・・?おっさん達をガンダルの所へ案内するという話しか?」と逆に聞いてきた。
「そうだよ・・・。昨日、話してくれていたら、彼女だって気持ちの入れようが違っただろうに・・・」
「そうなのかな。いや・・・、こんな奇跡のような偶然が起こるとは思わなかったからさ。偶然、枯れた大河に倒れていたおっさん達を見つけ。コボルド達を倒して、おっさん達を街に連れて行った。それだけだと思った。それで縁が切れると思った。俺たちの昨日解決した依頼は、東のコウボクの街の途中に魔物が出没するという噂から、あの辺りの農家を助ける為に派遣された依頼だった。簡単に解決した。俺はそれだけで、次の依頼は宝さがしみたいな依頼を期待していたら、新規で住民登録をした魔法使いと僧侶がいる。二人を我が屋敷まで案内してくれという依頼。ただ二人を案内するだけなら簡単だと思ったから引き受けたけど、歩きながら考えていたら、まさか、おっさん達ノの事じゃないかと・・・。実際、おっさん達を案内するというの結果になった。じゃあ、何故おっさん達を?」と、そこでロコは言葉を切った。
ツカサは次の言葉が出てくるまで静かに待った。
「今までにも、こういった依頼が無かった訳じゃない。けど、自分達がここまで連れて来たおっさん達をこの先も案内するというのは無かった。何か、運命的な物を感じられずにいる・・・。そこに、俺は恐怖を感じるんだ。それを、モコやおっさん達に感じ取られるのが嫌で・・・」
「もし・・・、それが運命なら・・・。その運命と戦わなきゃ。その恐怖と戦わなきゃ。運命を運命のままで考えていたら、良い結果は生まれない。その運命と戦ってこそ。道は開けるんじゃないかな・・・」とツカサが言うと、ロコは笑顔を見せながら、「年の功かな・・・?おっさん、良い事言うな」と誉め言葉を言った。
ロコはツカサの肩を軽く叩くと、女性陣の方へ歩いて行き、出発する事を伝えた。
一行は西への道を、再び歩き出した。
西に続く街道はひたすら草原や林の間をぬって、西へと向かっている。
ロコが手書きの地図を確認しながら進んで行く。低い丘を越えた辺りでロコが立ち止った。地図を確認してから、右の小山を見上げる。
「この山の上で・・・」と一言呟いた。
「この山の上って・・・。ここって確か、キャッスルマウンテンだよね・・・」とモコが聞く。
「あぁ・・・、失われた城があるという噂の・・・、キャッスルマウンテンだ・・・」と言った。
ツカサがロコに近づき、「何だい、そのキャッスルマウンテンって・・・・?」と尋ねた。
「キャッスルマウンテンっていうのは、かつて、この山の上にあったと噂される城の事で、もう百年以上前に廃墟となった城は呪われ、幽霊やゾンビ―の住処だと聞く・・・。そうか・・・。ここもまた、迷いの森だったのか」と、ロコが何かを思い出したかのような口調で言った。
「えっ・・・、最初は違ったのか」とツカサは何かを察して聞いた。
「あぁ・・・。もっと先にも迷いの森がある。けど、そこはヘルトゥ・ルースに近い場所で、そこに巨大な城があったと記憶しているんだ・・・。けど、あそこの城じゃ無かった・・・。この山の上・・・。この山の上は《試練と迷いの森》がある場所だ・・・。そこに、ガンダルの屋敷が・・・」
「試練と迷いの森・・・?」
ツカサは目の前に大きく聳え立つ山を見上げて呟いた。
山のふもとからは一本の道が山肌に沿って伸びている。あれがこの森への入り口なのだろう。
「ぼちぼち、行くかい?」と、ツカサがロコに声を掛けた。
「あぁ・・・、おっさん達を連れて行かなきゃいけないからな・・・。大魔導士ガンダルの屋敷へ・・・」とロコが言う。ロコには決心がついたのだろう。
再び、ロコは先頭を切って歩き出した。山道は土と岩の険しい道となっているが、それでも、一行はゆっくりと昇っていく。
どれくらい山を登ったのだろうか。眼下にさっきまでいた草原や林がミニチェアのように広がっている。この先の山道に視線を向けると、森の木々が覆い茂っていて、その光景がさながら森のトンネルに見えた。
「森の中に入ったようだな・・・」とロコが言う。
「頂上に向かう道と、右にも道があるよ・・・。どっちに行けば良いの・・・」とモコが少し不安そうな思いで聞いてきた。
「わからない・・・。もう、この先は地図には道が書かれていないんだ・・・」とロコが落ち着いた口調で言う。
「つまり・・・、これは本当に迷いの森に入ったと・・・。もしくは試練の森・・・」とツカサが言う。
「あぁ・・・。もしかしたら、どっちかは迷いの森への道で、もう一つは試練の森への道なのかも・・・」とロコが言う。
「どっちにしても、どっちかを選ぶしかない・・・、という事だよね」とモコが言った。
「そうだ・・・。どっちを選ぶか・・・」
一行は二つの道の選択で悩んでいた。
「少し休もうか?」と先頭を歩くロコが提案すると、モコが「そうね」とすぐに答えた。
「この世界の季節は、今は夏?秋?」とツカサが聞く。ツカサのような老体には体に応える暑さだ。
「この世界ではもう夏真っ盛り。だけど、数十年前からヘルトゥ・ルースに現れた魔界王ティスコフのせいで、この世界は暗闇とまではいかないけど、太陽の陽射しが隠れるような曇り空の天気が続いている。ほら、見える?」とロコが指を指す。はるか西には渦巻く暗闇が立ち込めている。
「あれが魔界王と、ゲームマスターと呼ばれる訳のわからない奴のせいで、作られた暗黒世界だよ。あの世界、ヘルトゥ・ルースから流れて来る闇のせいで、普段は晴天のこっちの世界でも、ずっと暗闇らしい」
「ずっと・・・?」とうたが聞き返す。
「そう・・・。ずっと。私達がこの世界に送られて来た時には、すでにこんな状態だった」とモコが言った。
「なんだか・・・。本当にロールプレイングゲームみたいだな・・・。その内、俺達がその魔界王と戦って、奴を倒すとかって話になるんじゃ・・・?」とツカサが冗談めいたことを言うと、ロコが「実はそうなんだ」と真剣な表情で答えた。
一瞬、その場が凍った。誰もが信じられない事をロコが簡単に口にしたのだ。
その場の雰囲気を察したロコがすぐに、「嘘!嘘だよ」と否定した。その言葉を聞いて三人からは安堵のため息が口から出た。
「ちょっと・・・、驚かせないでよ」とモコが少し怒り気味に言うと、ロコが「悪い悪い」と謝った。
とその時、ツカサは武器を買う際、店主のチップスに何かを頼まれていたことを思い出して、ロコに尋ねた。
「そういえば、武器屋の店主に何か頼まれていたようだけど・・・?」というと、ロコは苦笑いをしながら、「あぁ・・・、あれね。実は、大魔導士ガンダルの屋敷に行くという話しを聞きつけて、ガンダルの屋敷から魔法のアイテムをもらって来てくれというお願いだよ。俺はさ、そんなのは無理だと言ったけど、二人とも良い物を安くしてもらったからさ・・・。半分、断れなくて引き受けた」と言うと、モコが「また、そんな勝手な!大魔導士がそんな高価なアイテムをくれる訳無いし!それに、こっちは弟子を案内しているだけだよ」と言った。
「まぁね・・・。でも、もう一つ、実は依頼を受けていたんだ・・・」とロコが言うと、モコが「はぁ?!」と苦い表情を見せた。
「こっちは本当の依頼で、報酬もそれなりに出る」と少し自信を見せながら言う。
「アンタね・・・。こっちは二人じゃないんだよ!レベル1以下の魔法使いと僧侶を連れているんだよ。それなのに、依頼を受けたって!何考えているの?!」と、モコはかなりお怒りモードで言った。
「話は最後まで聞けよ!」とロコが怒鳴る。
そんな二人の会話から少し離れようとするうたとツカサ。
それでも、ツカサはこの4人の中では一番の年上だという認識はあるので、ロコモコの二人の間に割って入った。
「ちょっと、ちょっと二人とも落ち着いて。落ち着いて」といって、二人を引き離した。
「まずは、ロコさんの依頼というのを聞きましょう。それから、この後受け入れるかどうかを考えましょう」とツカサがいうと、モコは「おっさんはわかっているの?知らないでしょう。一度引き受けた依頼は達成できないと違約金を払うんだよ。だから、ちゃんと出来るか、達成できる依頼しか受けたくないんだよ」といった。
たしかにそれは正論だなと、ツカサは思ったが、ここはもう一つ大人になって、「ロコさんが受けた依頼って、なんですか?」と聞いた。
「依頼?あぁ・・・、それは君達二人をガンダルの所へ連れて行くという依頼だよ。最初は、新しい魔法使いと僧侶が誕生するが、その二人を大魔導士ガンダルの所へ案内してくれという話しの内容だった。なぜかと理由を聞くと、ガンダルからの直接の依頼で、君達二人は予言書に書かれている重要な人物らしい・・・」と説明した。
「なにそれ・・・?って、じゃあ、うたちゃんとツカサのおっさんがガンダルの所へ連れて行く相手だという事を、アンタは知っていたの?呆れた・・・。なに、じゃあ、アンタはこの旅は親切にガンダルの所まで案内してあげる旅じゃなくて、依頼を受けての旅だったの?」とモコが激高している。
「つぅか、何でお前がそこまで怒っているんだ?」とロコが聞いた。
「私はね・・・。もういいよ!なんでもない」と不貞腐れた。
うたがモコに近づいて行き、「大丈夫?」と声を掛けた。モコは気持ちを落ち着かせるために大きく息を吸い込んでから吐くと、「大丈夫、ありがとう。みっともないとこ見せちゃったね」と言って、バックパックから水筒を取り出すと、青汁を飲んだ。
4人は木陰を利用して休憩した。まだ二人にはしこりがあるようで、モコはうたと何か楽しそうに話をしている。楽しそうに話しているように見えているだけかも知れない。ロコはと言うと、少し離れた所で歩哨に立っている。彼が進んで見張りに立つと言ったのだ。
のどかな田園風景という訳にはいかないが、それでも、街からかなり離れたこの場所でも数軒は家が建っている。農家の住民が街から離れて住んでいるのだろう。いわば、村のような存在である。
「あそこに家が見えるけど、あそこには住人が住んでいるのかい?」とツカサがロコに聞いた。
「えっ?あぁ・・・。あの家には子供を含めて6人の家族が住んでいる。旦那と奥さんと二人が頑張って畑と豚を飼っている。子供は男の子が二人と女の子が一人。あとは雇われの戦士がいる」と教えてくれた。
「なぁ・・・。何で、昨日のうちに話してくれなかったんだ」とツカサがロコに聞いた。
「何を・・・?おっさん達をガンダルの所へ案内するという話しか?」と逆に聞いてきた。
「そうだよ・・・。昨日、話してくれていたら、彼女だって気持ちの入れようが違っただろうに・・・」
「そうなのかな。いや・・・、こんな奇跡のような偶然が起こるとは思わなかったからさ。偶然、枯れた大河に倒れていたおっさん達を見つけ。コボルド達を倒して、おっさん達を街に連れて行った。それだけだと思った。それで縁が切れると思った。俺たちの昨日解決した依頼は、東のコウボクの街の途中に魔物が出没するという噂から、あの辺りの農家を助ける為に派遣された依頼だった。簡単に解決した。俺はそれだけで、次の依頼は宝さがしみたいな依頼を期待していたら、新規で住民登録をした魔法使いと僧侶がいる。二人を我が屋敷まで案内してくれという依頼。ただ二人を案内するだけなら簡単だと思ったから引き受けたけど、歩きながら考えていたら、まさか、おっさん達ノの事じゃないかと・・・。実際、おっさん達を案内するというの結果になった。じゃあ、何故おっさん達を?」と、そこでロコは言葉を切った。
ツカサは次の言葉が出てくるまで静かに待った。
「今までにも、こういった依頼が無かった訳じゃない。けど、自分達がここまで連れて来たおっさん達をこの先も案内するというのは無かった。何か、運命的な物を感じられずにいる・・・。そこに、俺は恐怖を感じるんだ。それを、モコやおっさん達に感じ取られるのが嫌で・・・」
「もし・・・、それが運命なら・・・。その運命と戦わなきゃ。その恐怖と戦わなきゃ。運命を運命のままで考えていたら、良い結果は生まれない。その運命と戦ってこそ。道は開けるんじゃないかな・・・」とツカサが言うと、ロコは笑顔を見せながら、「年の功かな・・・?おっさん、良い事言うな」と誉め言葉を言った。
ロコはツカサの肩を軽く叩くと、女性陣の方へ歩いて行き、出発する事を伝えた。
一行は西への道を、再び歩き出した。
西に続く街道はひたすら草原や林の間をぬって、西へと向かっている。
ロコが手書きの地図を確認しながら進んで行く。低い丘を越えた辺りでロコが立ち止った。地図を確認してから、右の小山を見上げる。
「この山の上で・・・」と一言呟いた。
「この山の上って・・・。ここって確か、キャッスルマウンテンだよね・・・」とモコが聞く。
「あぁ・・・、失われた城があるという噂の・・・、キャッスルマウンテンだ・・・」と言った。
ツカサがロコに近づき、「何だい、そのキャッスルマウンテンって・・・・?」と尋ねた。
「キャッスルマウンテンっていうのは、かつて、この山の上にあったと噂される城の事で、もう百年以上前に廃墟となった城は呪われ、幽霊やゾンビ―の住処だと聞く・・・。そうか・・・。ここもまた、迷いの森だったのか」と、ロコが何かを思い出したかのような口調で言った。
「えっ・・・、最初は違ったのか」とツカサは何かを察して聞いた。
「あぁ・・・。もっと先にも迷いの森がある。けど、そこはヘルトゥ・ルースに近い場所で、そこに巨大な城があったと記憶しているんだ・・・。けど、あそこの城じゃ無かった・・・。この山の上・・・。この山の上は《試練と迷いの森》がある場所だ・・・。そこに、ガンダルの屋敷が・・・」
「試練と迷いの森・・・?」
ツカサは目の前に大きく聳え立つ山を見上げて呟いた。
山のふもとからは一本の道が山肌に沿って伸びている。あれがこの森への入り口なのだろう。
「ぼちぼち、行くかい?」と、ツカサがロコに声を掛けた。
「あぁ・・・、おっさん達を連れて行かなきゃいけないからな・・・。大魔導士ガンダルの屋敷へ・・・」とロコが言う。ロコには決心がついたのだろう。
再び、ロコは先頭を切って歩き出した。山道は土と岩の険しい道となっているが、それでも、一行はゆっくりと昇っていく。
どれくらい山を登ったのだろうか。眼下にさっきまでいた草原や林がミニチェアのように広がっている。この先の山道に視線を向けると、森の木々が覆い茂っていて、その光景がさながら森のトンネルに見えた。
「森の中に入ったようだな・・・」とロコが言う。
「頂上に向かう道と、右にも道があるよ・・・。どっちに行けば良いの・・・」とモコが少し不安そうな思いで聞いてきた。
「わからない・・・。もう、この先は地図には道が書かれていないんだ・・・」とロコが落ち着いた口調で言う。
「つまり・・・、これは本当に迷いの森に入ったと・・・。もしくは試練の森・・・」とツカサが言う。
「あぁ・・・。もしかしたら、どっちかは迷いの森への道で、もう一つは試練の森への道なのかも・・・」とロコが言う。
「どっちにしても、どっちかを選ぶしかない・・・、という事だよね」とモコが言った。
「そうだ・・・。どっちを選ぶか・・・」
一行は二つの道の選択で悩んでいた。
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