56 / 58
55 1年後
しおりを挟む約1年後。
「——あっ、ああんっ!」
真新しいベッドをきしませながらひまりは喘いだ。
足の間を濡らしながら見慣れない天井を見ていると、よく知る顔がひまりの視界を遮り、一心不乱に腰を振る。
「ひまりっ——」
2人は悲しみを抱きながら果てた。
「はあ、はあ……」
涼太は息を荒げながら、ひまりを横から強く抱きしめる。
「ひまり、寂しい……」
「私も寂しいよ……」
ひまりは涼太の腕の中で涙を流していた。
今2人がいる場所は、涼太のマンションだ。
第1志望の大学に合格した涼太は昨日引越したばかりで、ひまりは手伝いを口実に一泊していた。
1時間後にはここを出て帰宅する予定だ。
両親が帰った昨晩から2人はずっと裸のままで、こうしてベッドをきしませている。
「俺、第1志望に受かって嬉しかったのは一瞬だったよ。ひまりと離れて暮らすんだ、と思ったら辛い感情しか生まれなかった」
「りょうちゃん……」
「俺、長期連休のたびに帰るから。ひまりの勉強の邪魔をしない程度に」
「うん」
「帰るまで、ひまりとこうしてていい?」
「うん」
2人はギリギリまでずっと体を合わせていた。
*
夕方、ひまりは1人で暗い表情を浮かべながら家に帰ってきた。
運良く親が出かけていたので、ホッと息を吐く。
悲しすぎて、寂しすぎて……今は話す気分じゃない。
ひまりは2階に上がると涼太の部屋に行き、ベッドに倒れこんだ。
我慢していた涙が勝手に溢れてくる。
涼太の香りが残るシーツを涙で濡らし、ひまりは声を上げて鳴き始めた。
しばらくして、ひまりの携帯が鳴った。
ひまりは重い体を起こし、カバンから携帯を取り出す。
表示された名前を見てすぐ、沈んだ心を弾ませた。
「はい」
ひまりは涙を拭きながら電話に出た。
『ひまり? もう着いた? たぶん今くらいかと思って電話した』
「もう家に着いたよ」
『おかえり』
「ただいま……」
ひまりは再び涼太のベッドの上に寝転がる。
『ひまり、泣いてる?』
「泣いてない……」
『嘘つき』
こらえていた涙が再び溢れてきた。
「泣いてないもん……」
ひまりは泣きながら言った。
『泣いてるじゃん』
「だって……りょうちゃんがいないんだもん! 私、無理だよ! 全部投げ出したい!」
『ひまり……こんなことで夢を諦めるの? 俺と同じ大学に行って2人暮らししたいだろ?』
「うん……でも、今は夢なんてどうでもいい。りょうちゃんとずっと一緒に居られればそれでいいもん!」
『じゃあ、なんで今日は帰ったんだよ。こっちにいればよかっただろ?』
「だって……帰らないといけなかったから……学校あるし、親が怒りそうだし」
『なんのために学校に行くんだ?』
「……」
ひまりは学校なんてどうでもいい、と思ってしまっていたので答えられなかった。
『もし今、高校やめて俺と住んでも、ずっと後悔すると思うぞ? あと1年我慢すれば、誰に文句言われることなく俺と一緒に住めると思わないか? 最悪浪人したとしても、こっちに住めばいい。俺はひまりが選んだことなら受け入れるよ。でも、ひまりには後悔して欲しくない。たとえ1年我慢しても、俺たちの関係はずっとこのままだろ? 俺は一生、ひまりだけだぞ』
涼太の言葉を聞いたひまりは少しずつ冷静になってきた。
「あと1年頑張る……りょうちゃんと同じ大学に行って、一緒に2人で生活したい」
『わかった。俺はひまりを全力で応援するよ』
「うん。りょうちゃんありがとう」
『気にすんなって。俺もひまりを引き止めたかったから』
「りょうちゃん……エッチしたい」
『ひまり、ローターある?』
「あるよ」
ひまりはカバンから取り出した。
『少しでも寂しさが消えるようにひまりを気持ちよくするから』
「うん」
ひまりは携帯をベッドの背もたれに固定し、涼太の顔が見えるようにした。
『ひまり、ゆっくり服を脱いで』
「うん」
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
寡黙な彼は欲望を我慢している
山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。
夜の触れ合いも淡白になった。
彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。
「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」
すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。
水鏡あかり
恋愛
姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。
真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。
しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。
主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
元男爵令嬢ですが、物凄く性欲があってエッチ好きな私は現在、最愛の夫によって毎日可愛がられています
一ノ瀬 彩音
恋愛
元々は男爵家のご令嬢であった私が、幼い頃に父親に連れられて訪れた屋敷で出会ったのは当時まだ8歳だった、
現在の彼であるヴァルディール・フォルティスだった。
当時の私は彼のことを歳の離れた幼馴染のように思っていたのだけれど、
彼が10歳になった時、正式に婚約を結ぶこととなり、
それ以来、ずっと一緒に育ってきた私達はいつしか惹かれ合うようになり、
数年後には誰もが羨むほど仲睦まじい関係となっていた。
そして、やがて大人になった私と彼は結婚することになったのだが、式を挙げた日の夜、
初夜を迎えることになった私は緊張しつつも愛する人と結ばれる喜びに浸っていた。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
天然王妃は国王陛下に溺愛される~甘く淫らに啼く様~
一ノ瀬 彩音
恋愛
クレイアは天然の王妃であった。
無邪気な笑顔で、その豊満過ぎる胸を押し付けてくるクレイアが可愛くて仕方がない国王。
そんな二人の間に二人の側室が邪魔をする!
果たして国王と王妃は結ばれることが出来るのか!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
愛されていない、はずでした~催眠ネックレスが繋ぐ愛~
高遠すばる
恋愛
騎士公爵デューク・ラドクリフの妻であるミリエルは、夫に愛されないことに悩んでいた。
初恋の相手である夫には浮気のうわさもあり、もう愛し合う夫婦になることは諦めていたミリエル。
そんなある日、デュークからネックレスを贈られる。嬉しい気持ちと戸惑う気持ちがミリエルの内を占めるが、それをつけると、夫の様子が豹変して――?
「ミリエル……かわいらしい、私のミリエル」
装着したものを愛してしまうという魔法のネックレスが、こじれた想いを繋ぎなおす溺愛ラブロマンス。お楽しみくだされば幸いです。
【R18】突然すみません。片思い中の騎士様から惚れ薬を頼まれた魔術師令嬢です。良ければ皆さん、誰に使用するか教えていただけないでしょうか?
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※ムーンライトノベルズ様の完結作、日間1位♪
※R18には※
※本編+後日談。3万字数程度。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる