雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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8章 呪いは浸食する

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昼まで進んだが、全く辿り着かない。

エレストは沈黙が耐え切れずに会話を始めた。

「和の国って魔物って強かったか?」

「和の国の平和主義から、あんまりイメージ無いけど、上級魔物が魔法国よりも多いって聞いてるわよ。」

「一層気をつけないとな。」

「和の国に問題は今のところ起きて無いし、大丈夫だろ。」

トーラスは雑に言った。

「…和の国では大丈夫そうだが…」

トーラスはふと何かを見つけたようだ。

「どうした?敵か?」

「いや、まあ、合っては…いるか。」

エウルは遠くにいる魔物を見つけた。

「…魔物の動きが…おかしくない?」

「分かったか、エウル。なんか広範囲で一点に魔物が集まっているんだよな。」

「それってどこだ?場所によっては…」

「いや、村とかは無いだろ。ただ…」

トーラスは面倒くさそうに言った。

「四人の魔力が見える。魔物たちはそこに集まってる。」










四人は魔物たちに囲まれていた。

四人の中心の地面には壊れた何かが落ちていた。

「閃撃さん!?本当に何やっとるんですかあ!?」

「俺言ったよな!?それ壊すと魔物が大量に来るって!というか、颯斗!お前知ってるよな!?」

閃撃と呼ばれた彼は悪い顔をしながら言った。

「いやあ、どれくらいなんだろうって…思うじゃん?」

「お馬鹿!怪我したら治すのは私なのよ!」

「どうしますか?団長浅村さん!」

「落ち着いて、全部殺すぞ!橋本さん、俺達にバフを!」

「了解です!」

橋本と呼ばれた者の左手の紋章が光り始める。

「俺と颯斗で潰しに行くぞ!出来る限り橋本さん達に魔物を送るな!」

「当たり前だぜ!」

二人の左手も光り始める。

魔物と戦い始めたあと、一人が何かに気付く。

「…団長!来てます!」

突然、橋本さんと呼ばれた者が叫ぶ。

「見れば分かるよ!」

「え、あ、魔物じゃなくて人です!人!」

「人…え、人!?」

「観光客が助けに来てくれるパターンは珍しいな!」

閃撃は笑いながら言う。

「笑い事じゃないですからね!?本当に!」








「どうする?」

トーラスは嫌そうな顔をしていた。

「そりゃあ、助けに行くだろ。」

「だろうな。はぁ…」

「トーラス、そろそろ諦めなさいよ。というか、言いはじめは全部トーラスなんだから。」

「……言わなかったら問題だろ…」

「行くぞー」

エレスト達は魔物達の中心へ向かった。

魔物はエレスト達に興味が無いであろう位に、一点目掛けて移動している。

「これ、何でだ?」

「魔法具とかその類でしょ。」

「まあ、そうだろうな。実際のところ、それらしき魔力が流れてる。」

エレスト達は近くに到着した。

「ほら、あれです!あれ!」

魔物に埋もれて、どこから声を出しているか分からないが、女の声が聞こえた。

「大丈夫か!?」

エレストは叫ぶ。

「助けに来てくれたのか!」

「ああ!」

「すまない、魔物を呼び寄せる、魔法具を破壊してしまったんだ。」

「はぁ!?何でそんな分かりやすい物を!?」

トーラスは叫びながら魔法を放つ。

「俺が興味本位で壊した★」

「はあああああ!!!?」

トーラスは思わずにそう叫んだ。

双剣の男は楽しそうにしているが、それ以外の三人は双剣の男を睨むようにして見ている。

「あとで覚えとけよ…」

不思議なグローブを着けた男は呆れたように言う。

「兎も角、魔物を倒すのを手伝ってくれ、頼む!」

「分かった!」

幸い、この大漁の魔物は全て中級以下だ。

「流石にこの量は魔法具を使わないと間に合わないな。」

トーラスは本を開く。

「…エレスト、これ作戦とか考えれないわよ!」

エウルは杖で下級魔物を殴りながら魔導を撃ち込んで喋っている。

凡そ大貴族がやることでは無い。

「取り敢えず片っ端から殺せ!」

(『雷撃』…!!)

雷が魔物達を穿ち祓う。

「…わぉ。」

太刀を構えている女性がエレストの攻撃を見てふと言う。

「やっば…派手派手ですね、療先輩!」

「そうね、でも、私達も負けてられないわよ。」

「はい!」

太刀を構え、数体の魔物を睨みつける。

「…初歩の型〇一いち式…『一閃』。」

一瞬の内に鞘から刃が抜かれ、魔物を両断させた。

「…刀初めて見たわ!サムライね!」

エウルは楽しそうに見る。

「もうサムライは居ないけどな。」

トーラスは呆れたように言いながら、ナイフ形の魔法具を投擲している。

襲ってきた魔物を蹴りながら、ナイフ形の魔法具で刺しながらで対処している。

トーラスもトーラスで、凡そ魔法使いがやることでは無い荒々しさで戦っている。

「それにしても、あの子支援者サポーターだろ。なんで太刀なんか使ってんだ?」

「そんなのどうだっていいのよ。ロマンがあれば。」

「貴族サマがロマンを求めるなよ…」

それにしても、一人以外全員が紋章を使っている。

しかし、残りの人も紋章を宿しているようだ。

乱戦から十五分。漸く魔物との戦いに終わりが見えてきた。

「おーい、橋本さん。切れてきてるぞー」

紋章の光がチカチカと点滅している。

「浅村さん、キツイです!」

「橋本さんが率先して魔物を倒しに行くから…」

太刀の女は大分息切れをしている。

「あーあ。」

「あーあ。て言ってますけど、全部先輩のせいですからね!?」

「それはそうだな!」

最後の魔物も危機的状況も特になく倒すことが出来た。

「ぜー…ぜー…!」

「お疲れさま。…そちらの皆さん、魔物討伐ありがとうございました。」

「いいよ。別に。」

エレストはそっけなく言った。

「特に怪我が無いならよかった。」

「ああ。なんとか。皆さんは観光客ですか?」

「あー…まあそうだな。」

「温泉入りたいって思ってるの!」

「楽しみにしてるのに、魔物で邪魔させてしまって…」

「構ないわよ。そんなにかしこまらなくても良いし。」

「そういう君達は、なんなんだ?」

「冒険者っぽいが…和の国出身か?」

「ああ。全員がそうだよ。」

「俺たちは『紋章の旅団』なんだぜ。」

「紋章の旅団?じゃあ、紋章使いしかいないってことか?」

「ああ。今はそうだな。」

今は…という事は他に人はいたがいなくなったという事だろう。

(まあ、それを知ったところで…だけどな。)

「で?魔法具を壊したお前は、なんで興味本位で壊せるんだよ。」

「ヤバいのは知ってたからな。どれだけヤバいのか体験してみたいと思うのは、人間の性だろ?」

「それで壊す阿保がどこにいるんだよ…」

「まあ、この人は前々からそういう人なので……それにもう慣れました!」

「慣れたら駄目だろ…」

「そっちはどうしてこんなところに来たんだ?」

「俺たちは和の国に戻ろうとしてたんだ。」

「そうだったんだな。」

「この子はまだだけど、残りの俺達は就職活動しなきゃならないから。」

「…??」

エレストは知らないようだったので、トーラスが説明に入る。

「お前らのいる王国と違って、完全平等だから、与えられた労働じゃなくて、自分から労働をしに行くんだよ。」

「へー…」

「私達には理解しにくい部分よね。」

「王国から来たの?随分遠いとこから来てくれてどうもありがとう。」

「和の国の皆は丁寧ね。そう言ってくれて嬉しいわ。」

「和の国に行こうと思ってるんだったら、私達と一緒に行ったらどうですか?初めてなんでしょう?」

「俺は一度も言ったことが無い。」

「私は歩いてここまで来たことが無いから…」

「俺は観光しに行ったことは無い。」

「…らしいですよ、浅村さん!」

「あ、俺に振るの?…まあ、一緒に行くのは、俺達はむしろ歓迎しますけど。」

「こっちも嬉しいよ。よろしく頼むよ。」

エレスト達は紋章の旅団と共に行動することになった。

変わった旅の幕開けだ。
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