雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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4章 堕天使の決戦

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「もう……行ってしまうの?」

クレイアは不満そうに言う。

「本来なら、不死人俺たちエルフ守人は本来関わる事のない種族だ。」

グルーは、笑いながらそう言った。

「で、でも…」

アレイも不安そうだ。

「お二人さんはまだしも、他の守人は他の種族に助けられたことを良しとしない筈だ。それに戦闘だけができても、今は復興が出来なかったら意味が無いからな。」

「そう…ほんと、エルフはプライドがこういうところまで影響して…」

「でも、そういう所、嫌いじゃないんだろ?」

「ええ。それが…私達誇り高きエルフだから。」

グルーは笑う。

「俺たちは、きっとここに来ることは無いだろうが…二人は良かったら理由なんて無くても俺たちの町に来てくれ。」

「ええ。約束するわ。」

「エレスト、エウルは…」

「俺たちは行くところがあるから、お前らに会うことは当分ねえよ。だけど、エウルが思ったよりも重症だから、完治したらすぐに里を出る。」

エウルの怪我と言えば肋骨骨折と、大量出血による貧血と、紋章の酷使による、疲労その他諸々である。

「…まあ、という訳で、元気で…」

「一番元気してない嬢ちゃんに言われてもなあ…」

グルーは苦笑いをした。

「まあ、頑張れ。この先死に狂いでやってみたら、案外何とかなるものさ。」

「ああ、ありがとう。不死人の言う事は説得力が違うな。」

不死人は帰っていった。

「さあ…俺達はもう少しゆっくりするか。」

「…次はどこに行くの?」

クレイアは恐る恐る聞いた。

「吸血鬼の根城だ。だから、完全に完治してから行く。」

「…確かに前もそう言ってたけど…本気?」

「ああ。魔法国に直線距離で行くにはそうするしかない。魔法国は貴族の影響はあまり無いらしいからな。追手が来る事はあんまり無いだろ。」

「これこそが冒険の醍醐味よね!」

「とまあ、エウルが一番乗り気だし、別に悪いさ。」

「えぇ…」

クレイアは若干引いている。

「ちょっとついていきたい気持ちもあるけど…私達はこの里を守らないといけないから…応援しとくわ。」

「ああ、それで良いよ。」

エレスト達は出来るだけエルフと関わることの無く、3日が過ぎた。

「…で?エウルは元気か?」

「エルフの治療を受けまくったのだから、当たり前よ。」

ドヤ顔でエレストを見る。

「そんなにドヤられても…」

「もう行くのね。」

「ああ。」

「クスクス…頑張って。私達も頑張るわ。」

「ありがとう。アレイ。お互い頑張りましょ。」

「あ、言っとくけど、私達は決して貴方達に感謝してないとかそういうわけじゃないのよ。ただ…」

「分かってるよ。こっそり、クレイア達が、俺たちのことを訴えてたってのも知ってる。」

「……見てたの?」

どうやら、他のエルフたちは相当直接感謝を述べるのは嫌らしい。

「まあ、カバンの中に魔法の治療薬とかが、沢山入ってたってことにしとくよ。」

「……フフッ。……そうなのね。じゃあ、私たちの贈り物も受け取って。」

「これは?」

「結界を一時的に張れる魔法具よ。殆どの攻撃ははじき返すと思うけど、その代わり、一回しか使えない。私たちしか魔力を込めてないし仕方ないけど。」

「嬉しいよ。ありがとう。」

エレスト達は重くなった荷物を担ぎながら、里を発った。

「それにしたって、夜も寝ずに戦うって大変なのねー」

「これ以上は、流石にしたくねえな。」

流石エルフの森だろうか。

小さな妖精たちが至る所に飛んでいる。

「もう、引っ掻けちゃ、駄目よ。」

エウルは木の枝に引っかかった妖精を助けていた。

「前までは妖精なんていなかったのにな。ま、ここがちょっとは平和になったってことだな。」

「そうね。フフッ…戦った甲斐があったわ。」

エウルは嬉しそうにしている。

「ま、今からが本番みたいなものだぞ。」

「……そうね。今から行くのは…吸血鬼の住まう場所なのだから。」

吸血鬼は夜の間、不老不死になる。

傷も一瞬で塞がり、人間にはるかに凌駕する身体能力を併せ持つ。

しかし、太陽に弱く、一度でも浴びると灰になる。

太陽の光に届かない場所でも、弱体化しており、ほぼ人間と変わらない。

「生活スタイルは完全昼夜逆転するからな。」

夜に寝てしまえば、いつ吸血鬼に襲われるか分からないので一番やってはいけないことだ。

「一番大変かもー…それに、あの場所に法律なんて存在してないし。」

吸血鬼の住処に法律はない。

一応他の国に吸血鬼が行く場合は、その国の法律に従うという事に何とかこぎつけたらしい。

しかし、その代わりにその場所に行く者に、守ってくれる法律はない。

「まあ、あんな場所に好んでいく奴は馬鹿でもいないだろうな。」

「それもそうね。普段いかない場所に行くなんて、これこそが冒険って感じね!」

ここでウキウキしているのは恐らくエウルくらいだろう。

つまりは、クレイジーという事だ。

「……死ぬなよ?」

「死ぬなんてことをしたら、家族のみんなに迷惑が掛かってしまうわ。私が死んで良いのは、貴族としての公務だけよ。」

エウルは相当変わっている。

貴族としての力を使いたがらないくせに、貴族としての誇りを誰よりも持っている。

いや、貴族の体裁を守るために、貴族であることを極力隠したいのだろう。

そんなこんなで、吸血鬼の根城の一歩手前までやって来た。

「睡眠はしっかりとったか?」

「昼に寝るのに苦労したけど大丈夫よ!」

移動の間、睡眠する時間を徐々にずらすことにしていた。

「さあ、行くぞ。真っ暗だし、気を付けないとな。」

二人は、吸血鬼の根城に入っていった。

因みに、今の時刻は夕暮れ時である。

幸いなことに、エルフの里で夜戦にある程度は慣れている。

「入ってから初日だし、戦闘はないと思うが、吸血鬼の相手は本当に厄介だから戦闘は極力避けるぞ。流石に、戦闘0で通り過ぎれるとは思えないけどな。」

「流石にここは端っこだもの。ここで戦闘になったら帰りたくなるわ。」

「確かに。俺もそうおも……」

その瞬間爆発音が聞こえた。

「ごめん。家に帰っていい?」

「奇遇だな。俺も家に帰りたくなってきた。帰る場所無いけど。」

土煙から、長い緑髪の人らしき者が飛んできた。

「吸血鬼!?」

よく見れば本を持っている。

恐らくは魔法書だろう。

「いや違う!人間だ。脳筋の吸血鬼が魔法なんて非効率なことをするわけがない!」

「お前誰だよ、初対面のくせに失礼だな!」

緑髪の人が叫ぶ。

「吸血鬼にも失礼ね…」

「楽しそうだな!俺も混ぜてくれ!」

先ほど戦闘していたであろう吸血鬼が襲ってきた。

「ああもう、滅茶苦茶だよ!あと、血は吸われるなよ!」

エレストは急いで剣を抜いた。

「分かってるわよ!」

吸血鬼に吸われると、血が止まりにくい。

医者がいない今、吸血されることは危険だ。

「俺の邪魔はするなよ、旅人!…美麗なる結晶に魅了されよ。 『斑雪の刃』Lassen Sie sich von Kristallen faszinieren. weißes Schwert!」

白い刃が吸血鬼に突き刺さる。

この魔法は間違いなく神聖魔法だ。

(こいつ神聖魔法使えるのかよ!)

しかし、そんな会話をしている暇はない。

この魔法だけじゃ、吸血鬼は死んでない。

吸血鬼に神聖魔法は確かに効く。

しかし、あくまでもトドメ程度で、その魔法で殺せるという訳じゃない。

夜の吸血鬼は、この程度では死なない。

「やっぱり、その魔法は痛いなあ!」

吸血鬼が緑髪の人に襲い掛かる。

「片眼鏡、後ろに下がれ!」

「誰が片眼鏡だ!」

と言いつつも緑髪の人は後ろに下がる。

エレストは雷撃の紋章を光らせる。

雷撃・閃光を使い、高速で吸血鬼の真横から剣で首を切り落とす。

「人間でもそんな速度が出るのか!」

エレストが刎ねた首から喋っている。

「その状態で喋らないで、気持ち悪い!斬り避け。魔導・鎌鼬ウインドカッター!」

エウルも辛辣である。

吸血鬼の両腕を吹き飛ばす。

「消え失せろ!」

緑髪の人は最後の一つの斑雪の刃を刎ねられた首に突き刺した。

「とても楽しかった!ありがとう!」

吸血鬼はそう言いながら、ボロボロと崩れていった。
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