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ユア教 教祖ユア

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肆章・緋の休息地編 

4-1 93 夏希視点 代償の痛み

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全て…簡単だった。

私の行動の代償を思い出すのに。

自身のやった事を思い出すのに。

香露音は何処にいるの?

皆は生きているの?

比較的、思い出すのは簡単だった。

こんなにも思い出すのが簡単なのは、多分だけど香露音を思い出す前から、小学園の頃の記憶が若干覚えていたからだと思う。

今日は、学園に入学して1日目。

世界をやり直してから…3ヶ月も経って思い出した。

世界の再構築の日は、世界が崩壊してから1日後の事だった。

今回は、若木さんや鬼塚君の力は絶対に借りれない。

それに、橋本君も小学園を卒業してから1年以上会わなかったと緋色は言っていたから、殆ど力を借りれないと思う。

大地の涙は知らない。それは分からないけど。

後輩達は…思い出してくれるかな。

緋色は…思い出してくれるかな…?

棚見君は思い出してくれるかな?一番思い出せそうにないから心配。

今回は如何したら香露音が復活するか分からない。

私だけじゃ何も出来ない。…やらなきゃ。

私に出来る事を。

不思議と辛く無かった。

きっと、香露音との約束があるから。








まだ彼の名前が思い出せない頃…

白い建物を目指す為に特訓していた時の事だった。

葵里さんから、直々に教えて貰い、とても成長した気がする。

その休憩時…夏希は香露音と話していた。

「……ねえ…夏希。」

「ん?どうしたの?」

「…私さ…誰も死んで無くて、怪我もせず無事に帰れる事が、この世界を…誰かを失わずに済む唯一の方法だと思う。」

「…うん…そうだね…」

「でもさ…今回がもし…無理だったら…………また…緋色は…」

「……………」

「…私は…きっと………魂に干渉できない。この先も…殆ど有り得ない。だからさ私が消えない事はない。…もし…これが無理だったら…今度消えるのは…多分私。」

「…………」

「…ねえ…夏希。」

「?」

「…もし私が消えたら…頑張って皆を集めて纏めて私を…私を救い出して…ね?」

「うん…分かった。頑張るよ。」






物凄く簡単な話だった。

でも香露音は覚悟を決めていた。

きっと、今度は緋色じゃなくて、夏希がそうするって察していたのかもしれない。

誰も死なせない。

前回は私達の味方は誰も死んでない筈なんだ。

少し前進した筈なんだ。

今度こそ、絶対に負けない。

そう決めた一週間後には後輩達を比較的簡単に見つけれた。

「……せ……んぱ…い?」

光ちゃんは知ってるようで知らない人が目の前に居ることに戸惑いを隠せなかったが、直ぐに世界をやり直してからの事を思い出した。

「…あ…私…忘れてて…」

智花ちゃんも直ぐに思い出した。

「…………私…のせいで…」

「ううん…違うよ。鶴ちゃん。誰のせいでもないんだよ。」

鶴ちゃんも直ぐに見つけれた。

「夏希先輩…!私…!」

奏恵ちゃんは私を見た瞬間思い出した様だ。

そう…後輩達は直ぐに思い出した。

後輩達は…

一番問題なのは緋色だった。

ついでに、棚見君も見つかってない。

緋色が思い出したなら、棚見君を思い出させるのは簡単だ。

鶴ちゃんに聞いてみたが、近寄り難い雰囲気を纏っているらしい。

それに、そろそろ部活を入る頃だから、緋色がそろそろ来るのに来ない。

というかこのままじゃ夏希一人だ。滅茶苦茶嫌。

(緋色ってどこにいるんだろう…?)

話を聞くに、クラスは分かったけど、放課後になった瞬間綺麗さっぱり一瞬で消える。

その先は何処にいるか見当が付かない。

もしかしたら、学校に居ないのかもしれない。

(あー…探そ…)

大地の涙が言った通りに心眼を使ってみる。



ある日の特訓中…

「そんな事してたらいつか脳が焼け切っちゃうわよ~」

「じゃあ、如何したら?」

「そうね~貴方は見過ぎなのよ~」

「見過ぎ…?」

「見る方向に意識を向き過ぎって言い換えた方がいいかしら~?貴方はいつもいつも意識して呼吸しているかしら~?そんな事しなくても、呼吸は出来るわよね~」

「は、はい…」

「貴方は力を入れ過ぎよ~さあ、フニャフニャ~と言いながらやってみて~」

物凄くフニャフニャ~させながら心眼の練習をした…







「ふ、フニャフニャ~………」

小さい声でそう呟きながら心眼を使う。シンプルに恥ずかしい。

でも、大分使える時間が伸びたのは練習の成果だろう。

人には人の色がある。…それを見極めるのは大分難しいけど。

そんな事分かる人近くにいたら楽なんだけど。

「あ…居た…」

緋色の色が一番分かりやすいとは思わなかった。

名前の通りに赤い。

「何でこんな危ない場所に?」

緋色は時計台の所の屋上の縁に座っていた。

心の声を聞いてみる。

(ああー…暇だなあ……何で…こんなに暇なんだろう…)

それは部活に入ってないからだろう。

(でもなー…部活もなぁ…やる気が起きねぇ…なぁ…)

前回は自分から入ったいったのに何故今回は入る気が無いのだろう?

(はぁ…柊も片岡も…全員倒したのに…何で私は……)

そうか。緋色も以前の記憶が若干あるのか。

(私ってあんなに強かったっけ…いや、強いんだろうけど………でもあの時みたいに戦えるかな…?なんであの時は必死だったんだろう…負けたくない癖にそれでも戦う理由がなんであったのかな…)

緋色は立ち上がる。

(私に…一体何が残ってるの…?)

もしかして…と夏希は思う。

もしかして、棚見君と面識無いんじゃないか…って。

(私に味方は…いなかった…いたっけ?居た気がする…でも誰かは思い出せない。何の為に戦ってたのかも何もかも思い出せない。)

何も無い緋色はあまりにも弱い。

彼の居ない緋色はあまりにも弱い。

何も出来ない。

きっと…自分に興味が無いんだ。緋色は。

他人の事を優先してしまう子じゃない。

ただ自分が優先的にならない。

もしかしたら、緋色はそういう人間なんじゃないかって思う。

(あ~あ…私は何の為に戦ってたんだろう?私は…誰の為に戦ってたんだろう…?一回…全部ぶち壊してやろうか。…アハハ…そうしたら何もかも無かったことに…)

え…怖い。

本当に怖い。

危険思考が過ぎる。

先に棚見君を思い出させた方が良い気がしてきた。






「という事で…鶴ちゃん、お願い!」

という事で後日事情を話した。

「…少し…文句言っていいですか…?」

「うん!」

「…あの人達…腹立つ程…似た者同士ですよね……………」(棚見が物凄く閉鎖的になってるって思ってたけど……………緋色先輩もかぁ…)

だから思い出させるのが面倒なのだ。

「どちらか…思い出させたら……確かに簡単ですよね…」(その何方かの難易度が桁違いだけどね…………!早く思い出せよ……)

若干苛ついている。ごめん!鶴ちゃん!

「…やるしか無いですよね………」(棚見の馬鹿をぶん殴れる良い機会かもしれないし…………………あの方法が…一番かなぁ…)

棚見の馬鹿をぶん殴れる機会…というのは置いといて。

あの方法と言っていたから恐らく目星はありそうだ。

それなら安心だ。一部を除いて。

「うん…出来る?」

「はい。」(頼まれたし…一仕事…しよう…………本当に腹立つからぶっ飛ばしてからしよう…)

棚見君は一体何をやらかしたのだろう。

まあ、近寄り難い雰囲気を出しているって鶴ちゃんは言っていたからなんかはあるのだろう。

実は近寄り難い雰囲気…どころじゃなかったりして。

それだった時が一番不安だ。

唯一、精神世界に一度も行っていないのは棚見君だ。

だから、どういう人間か。…どんな彼が本性か知らない。

緋色は知っていたとしても、どんな風なのかは教えてくれないだろうし。

何かの比喩じゃなくてただの雰囲気である事を祈っておく。

とりあえず…緋色ヤバイことしそうだから、当分は監視が必要かもしれない。

香露音の事よりも緋色の監視が優先って一体如何なのか。
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