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参章・昇りし太陽編
3‐34 91 緋色視点 呼ばれし英雄
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「あーもう!全ッ然!動かないー!」
「本当にやばいよ…!あと10分もあるか如何か…!」
「メーデー、メーデーーーー!何でテレパシーが使い物にならないのー!」
奇跡的に見つけた扉の鍵を壊す為に色々やっているが壊れない。
「斬鉄剣(小)…!」
鍵ではなく生成した剣がいとも簡単に壊れる。
「もう…上手くいかない…!」
「どうしよう…!最悪、私達の能力全部駆使して防御すればいいけど…」
「まあ、無意味だと思う。それで防げるんだったらこんな頑丈な部屋と厳重な鍵は付いてない。」
緋色は小さい声でデスヨネーと呟く。
本当にヤバイ。
もう一度武器を生成する。
「閃律(小)!……いってえーーー!!!!!!」
反動で手首がキーン…と響く。
「緋色…馬鹿なの?」
「……塵積も式で壊れるかもしんないじゃん!」
「基礎能力系は全部試したでしょ!」
「私は執行者の能力は全部試した!」
「私も夜の騎士の能力は全部試した!」
「じゃあ、詰みじゃん!」
「本当にそれよ!」
「思い出せ…!緋色、思い出せー…あっ…」
「何か思い出したの!?」
「6³=216。」
「こんな時に関係あるの!?」
「無い。」
「緋色の馬鹿!」
「構ってくれないツンデレの捨て台詞みたいな言葉久し振りに聞いた…」
「煩い!しかも何その例え!もっと違う事に頭使わないと私達死ぬんだけど!?」
「そうだけどー!あ…!」
「今度は何!?」
「………アルミ缶の上にあるみかん…」
「ップ…じゃなくて!」
「笑ったじゃん!」
「笑わせたんでしょ!」
「銃でやってみる!」
思いっきりぶっ放す。その鍵は無傷だ。
は?ふざけんな。と緋色は心の中で叫ぶ。
「意味分からん!」
「精神感応がつかないとなると…白い建物の大地の涙は私達をここで殺す気だったって事…」
「何で…私達を殺そうとするの!…無意味じゃん!」
「でも…何となく、今の大地の涙は理由が分かってそうだったけど…」
葵里さんはこちらに来ない。
何回も此処に来るのを当てにしているのに。
何故来てくれないの…!
「開けよ…!開いてよ!」
死線誘導・折損を使う。するとたまたま同時に香露音と攻撃した。
「………!?」
「もしかして…」
二人は顔を見合わせて二人で攻撃する。
「死線誘導・折損(中)…!」
「隼(中)…!」
すると、鍵が共鳴するように音が変わった。
さっきまで拒む様な冷たい音だったのに。
「おっふ…死神みたいなタイプかー…」
「でも、二人じゃ壊れそうにないよ?」
「攻撃する感じじゃなくて、鍵を開ける感じでやってみる?」
「オッケー!」
二人で更に試みる。
さっきよりも開きそうだ。
「もう一回!せーの!」
カチャリ。
「やった!よし行こ…」
「どうしたの?」
「あ…開かねえ…」
「あ!嘘でしょ!?」
確かに開いたが、更に鍵が増えている。
「同時にしよう!」
「了解っと!せーの!」
カチャリ。
これで開いたと思ったが、そんな事は無かった。
3つに増えている。
しかし、一番鍵が鍵の形をしている。
大地の涙は、あと一つで野垂れ死にをする緋色達を見たいのだろうか。
悪趣味過ぎる。
「3つじゃ…私等だけじゃ…!」
緋色は絶望した。
あと時間は3分を切っているのに。
「…さん……!…樫妻さん!?」
後輩は練習場で横たわっている緋色に言う。
「…ん…何…?」
「何でここで寝てるんですか?」
「…………ああ…」
私は激痛のあまり気絶していたなんて事は後輩に言えなかった。
だから、嘘を吐いた。
虐めをされているなど恥でしかない。
「自主練してて…疲れて寝てた………」
「授業をサボってまでですか?」
分かってる。
嘘を吐くにはあまりにも下手くそで無理矢理だという事は。
でも…聞かないで欲しいんだ。
私に優しくしないで。
どうせ…君も変に優しくして面倒になれば見捨てる人なんだから。
「………それを言われてもねぇ…」
「どうしたんです?」
「どうもこうも無いよ……」
こんな事はいつもの事だ。
出席抜けたのが少々痛いけど…まあ、いつもの事だからいっか。
「……先輩…泣いてました?」
「ん?」
目を擦ると何か地味に濡れていた。
確かに目が腫れている気がしなくもない。
何で…?
「…ほんとだね…欠伸で涙の出過ぎ?」
「そんな腫れぼったくならないでしょ…目も赤いですし。」
彼は、私の前髪を捲りあげて私の目をじっくりと鑑賞する。
寝ぼけていたけど、何かじっくりと目を見られていたのが気恥ずかしくて私は目を逸らした。
「樫妻さんでも…恥ずかしがる事あるんですねー」
「恥ずかしがってないし。」
「耳赤いですよ?」
と言う言葉を聞き、急いで両耳を両手で隠す。
「プッ…!アハハハハ…!嘘ですよ。冗談です。アハハハハ!」
物凄く絶妙に嫌なやり方で嫌がらせを受けた…気がする。
騙された悔しさと恥ずかしさで徐々に目が覚め始める。
「まあ、近距離で見られたら目の行き場所無いですよね。」
彼はそう言いながらクスクスと笑う。
「…そういえばさ♯&。」
「なんですか?樫妻さん。」
「なんて言えば…その…さん付け止めてくんない?」
さん付けをされたら、柊にそう呼ばれながらボコられる絵面が思い出してしまう。
「…ちょっと…さん付けあんまり好きじゃなくて…」
詳しくは言わないけど、まあ、これくらいなら良いと思う。
「…んー…まあ良いですけど。あ、じゃあ…どうします?緋色ちゃんでもしときます?」
「距離感ぶっとんでない?あとキモくない?」
「確かにそうですね。」
「…普通に、樫妻先輩で良いんじゃないの?」
「じゃあ、それにしますね。それで、樫妻さ…先輩。」
さ…って言ってるけど、まあ先輩になってるからいっか。
「どしたの?」
「何か…あったんですか?」
「え?」
「………もし良かったら…僕が話を聞きますよ?」
「…………………」
駄目だ。
此奴に…私の気持ちを吐き出す訳にはいかない。
後輩に弱い所を見せる訳には…
「少し位喋った方がスッキリしますよ?」
「………」
声を出せない。
そんな事をしたら泣いてしまう。
「………………………先輩。…苦しい時は苦しいって言っても良いんですよ?」
私の目から一滴の涙が頬を伝った。
もう止まらない。
家族にも友達(居ないけど)にも先生にも言えなかったこの苦しさが全て流れてきてもう止まらない。
「待ちますよ。」
彼は、私を泣き止むまで待ってくれた。人前で泣いたのは殆ど無かったのに。
「何で…舐められるんだろう…無能力者である事がそんなにいけないことなの?」
私はその言葉を独り言の様に言った。
その言葉は私の心全てだった。
「だったら、能力者を倒せる位強くなりましょう!学園に行くまでの三年間。強くなれば、きっと何かが変わってくれます!」
最初は無責任な言葉だなって思った。
それでも、私を救ってくれる唯一の言葉だった。
その1ヶ月後…
「自分が一番大変なのに、また人の事考えてるんですか?」
呆れた様に言う彼の声。
「仕方無いだろ?心配しちゃうんだから。」
ぶっきらぼうに私は返事をした。
「いつか身を滅ぼしますよ?というか、既に滅びかけてるじゃないですか!」
私は至る所に傷ができてボロボロだった。
私はその時、無能力者で虐められていたある後輩を助け、何とか自分も生還した。
正直、クッソ痛い。
あと数分でも彼が、更にその数分後に(糞)教師が来なかったら、大変な目にあっていそうだ。
珍しく運が良かった。
「女の子が怪我をして…家族には何て説明するんですか………」
「フン。私が女の子?女子をほぼ捨ててるよ。私なんかさ。どうせまたやらかしたのかって言われるだけだよ。」
私なんてもう、諦めている。可愛い女の子になるのも、優しい人になるのも。
もう如何でもいい。
「そうですかね………でも樫妻先輩がオシャレに目覚めたら、可愛くなれるんじゃないですか。知りませんけど。」
責任逃れをする為の知りませんけど。という言葉を使いながら彼は言う。
上げて下げるのやめてくれ。
「私も知らないわ。もしかしたらあるかもしれないけど……私がオシャレに…ねぇ…」
私にセンスがあるとは思えない。
「正直、私自身あり得ないと思うなぁ。」
「ありえませんねぇ…」
「殺すぞ。」
「いやーん。」
思っているからと言ってこいつに言われたら言われたらで腹が立つ。
「ねぇ……」
ふと思ったことを言う。
「なんですか?」
「もし私が、能力者になって…もし君が能力者になったら…私達は如何するのかな?」
「先輩は外の世界に行く為に資格取るんじゃないですか?」
「そうだけどさ、なんて言うか……あんまり変わんないんじゃないかなって。」
「ああ、そういう事ですか。樫妻先輩はきっと変わらないですよ。どうせ、危機に瀕している誰かが居たら助けちゃうんでしょ?範囲しか変わってませんって。」
「間違い無い。…じゃあ、君は?」
「そうですね…………まぁ、僕も外の資格を取りに行きますかね。」
「どっちも外の資格を取って…外の世界に行ったら……フフ。もしかしたら、君が助けて~って言うかもしれないね!」
「こっちの台詞ですよ。もし樫妻先輩が危機的状況になってたら助けてあげますよ。」
「何で上から目線なんだよ……………先輩が後輩を守るんだから、素直に守られとけよって。」
それでも言われて嬉しかった。
「そんな事言ったって後悔しますよ~?…助けて欲しい時は僕の名前を呼ぶんですよ。樫妻先輩。どーせ、無茶するんですから。」
「分かったよ。その代わり、私の助けが要るなら言いなよ。」
私は…彼に何をしてあげられただろうか。
助けてあげたいと思う今…私は助けてあげられなさそうだ。
彼は…優しい人だ。
…私にとって輝いてさえも見える。
君がいないと嫌だよ…
私は…君がいたからここに居るんだ。戦えるんだ。
…だから…戻って来て。
私達を助ける…ヒーローとして戻って…私達と共に帰ろう。
魂の叫びを今…!
思い出せ!
彼からのメッセージを…!
私を忘れないで
彼がそう言っていたんだから!
緋色は叫ぶ。
「助けて………と…」
もっと息を吸い込んで叫ぶ。
「助けて!春斗ーー!!!!」
ほんと、仕方ないなあ。先輩は。
その言葉に反応するように彼が来る。
「樫妻先輩。今度はどんな危機的状況ですか?」
「マジで来やがった!?」
「呼んだのは先輩ですよ!?」
「棚見君!時間が惜しい!あと、30秒も切ってる!」
「え!?えええ!?」
残り20秒。
「さあ、春斗!三人でやるよ!」
「え、ええ!?何を!?」
「時間が無い!行くよ!」
残り10秒。
「ああ、もう!なんとでもなれ!」
「せーの!」
残り0秒。
ドカーーーーーン!
「…何で…こんなに…危機的状況なんですか…どうしたら爆発する状況になれるんですか…」
あーかわいそうーごめーんはるとー!
という棒読みな言葉を緋色は叫ぶ。
「…危機的状況から抜け出したから…次の危機的状況の方へ急ごうか。」
「ええ…今度はなんですか……」
「夏希達が危ない。急ごう。」
「ああ、もう分かりましたよ!」
三人で扉の先に走る。
「本当にやばいよ…!あと10分もあるか如何か…!」
「メーデー、メーデーーーー!何でテレパシーが使い物にならないのー!」
奇跡的に見つけた扉の鍵を壊す為に色々やっているが壊れない。
「斬鉄剣(小)…!」
鍵ではなく生成した剣がいとも簡単に壊れる。
「もう…上手くいかない…!」
「どうしよう…!最悪、私達の能力全部駆使して防御すればいいけど…」
「まあ、無意味だと思う。それで防げるんだったらこんな頑丈な部屋と厳重な鍵は付いてない。」
緋色は小さい声でデスヨネーと呟く。
本当にヤバイ。
もう一度武器を生成する。
「閃律(小)!……いってえーーー!!!!!!」
反動で手首がキーン…と響く。
「緋色…馬鹿なの?」
「……塵積も式で壊れるかもしんないじゃん!」
「基礎能力系は全部試したでしょ!」
「私は執行者の能力は全部試した!」
「私も夜の騎士の能力は全部試した!」
「じゃあ、詰みじゃん!」
「本当にそれよ!」
「思い出せ…!緋色、思い出せー…あっ…」
「何か思い出したの!?」
「6³=216。」
「こんな時に関係あるの!?」
「無い。」
「緋色の馬鹿!」
「構ってくれないツンデレの捨て台詞みたいな言葉久し振りに聞いた…」
「煩い!しかも何その例え!もっと違う事に頭使わないと私達死ぬんだけど!?」
「そうだけどー!あ…!」
「今度は何!?」
「………アルミ缶の上にあるみかん…」
「ップ…じゃなくて!」
「笑ったじゃん!」
「笑わせたんでしょ!」
「銃でやってみる!」
思いっきりぶっ放す。その鍵は無傷だ。
は?ふざけんな。と緋色は心の中で叫ぶ。
「意味分からん!」
「精神感応がつかないとなると…白い建物の大地の涙は私達をここで殺す気だったって事…」
「何で…私達を殺そうとするの!…無意味じゃん!」
「でも…何となく、今の大地の涙は理由が分かってそうだったけど…」
葵里さんはこちらに来ない。
何回も此処に来るのを当てにしているのに。
何故来てくれないの…!
「開けよ…!開いてよ!」
死線誘導・折損を使う。するとたまたま同時に香露音と攻撃した。
「………!?」
「もしかして…」
二人は顔を見合わせて二人で攻撃する。
「死線誘導・折損(中)…!」
「隼(中)…!」
すると、鍵が共鳴するように音が変わった。
さっきまで拒む様な冷たい音だったのに。
「おっふ…死神みたいなタイプかー…」
「でも、二人じゃ壊れそうにないよ?」
「攻撃する感じじゃなくて、鍵を開ける感じでやってみる?」
「オッケー!」
二人で更に試みる。
さっきよりも開きそうだ。
「もう一回!せーの!」
カチャリ。
「やった!よし行こ…」
「どうしたの?」
「あ…開かねえ…」
「あ!嘘でしょ!?」
確かに開いたが、更に鍵が増えている。
「同時にしよう!」
「了解っと!せーの!」
カチャリ。
これで開いたと思ったが、そんな事は無かった。
3つに増えている。
しかし、一番鍵が鍵の形をしている。
大地の涙は、あと一つで野垂れ死にをする緋色達を見たいのだろうか。
悪趣味過ぎる。
「3つじゃ…私等だけじゃ…!」
緋色は絶望した。
あと時間は3分を切っているのに。
「…さん……!…樫妻さん!?」
後輩は練習場で横たわっている緋色に言う。
「…ん…何…?」
「何でここで寝てるんですか?」
「…………ああ…」
私は激痛のあまり気絶していたなんて事は後輩に言えなかった。
だから、嘘を吐いた。
虐めをされているなど恥でしかない。
「自主練してて…疲れて寝てた………」
「授業をサボってまでですか?」
分かってる。
嘘を吐くにはあまりにも下手くそで無理矢理だという事は。
でも…聞かないで欲しいんだ。
私に優しくしないで。
どうせ…君も変に優しくして面倒になれば見捨てる人なんだから。
「………それを言われてもねぇ…」
「どうしたんです?」
「どうもこうも無いよ……」
こんな事はいつもの事だ。
出席抜けたのが少々痛いけど…まあ、いつもの事だからいっか。
「……先輩…泣いてました?」
「ん?」
目を擦ると何か地味に濡れていた。
確かに目が腫れている気がしなくもない。
何で…?
「…ほんとだね…欠伸で涙の出過ぎ?」
「そんな腫れぼったくならないでしょ…目も赤いですし。」
彼は、私の前髪を捲りあげて私の目をじっくりと鑑賞する。
寝ぼけていたけど、何かじっくりと目を見られていたのが気恥ずかしくて私は目を逸らした。
「樫妻さんでも…恥ずかしがる事あるんですねー」
「恥ずかしがってないし。」
「耳赤いですよ?」
と言う言葉を聞き、急いで両耳を両手で隠す。
「プッ…!アハハハハ…!嘘ですよ。冗談です。アハハハハ!」
物凄く絶妙に嫌なやり方で嫌がらせを受けた…気がする。
騙された悔しさと恥ずかしさで徐々に目が覚め始める。
「まあ、近距離で見られたら目の行き場所無いですよね。」
彼はそう言いながらクスクスと笑う。
「…そういえばさ♯&。」
「なんですか?樫妻さん。」
「なんて言えば…その…さん付け止めてくんない?」
さん付けをされたら、柊にそう呼ばれながらボコられる絵面が思い出してしまう。
「…ちょっと…さん付けあんまり好きじゃなくて…」
詳しくは言わないけど、まあ、これくらいなら良いと思う。
「…んー…まあ良いですけど。あ、じゃあ…どうします?緋色ちゃんでもしときます?」
「距離感ぶっとんでない?あとキモくない?」
「確かにそうですね。」
「…普通に、樫妻先輩で良いんじゃないの?」
「じゃあ、それにしますね。それで、樫妻さ…先輩。」
さ…って言ってるけど、まあ先輩になってるからいっか。
「どしたの?」
「何か…あったんですか?」
「え?」
「………もし良かったら…僕が話を聞きますよ?」
「…………………」
駄目だ。
此奴に…私の気持ちを吐き出す訳にはいかない。
後輩に弱い所を見せる訳には…
「少し位喋った方がスッキリしますよ?」
「………」
声を出せない。
そんな事をしたら泣いてしまう。
「………………………先輩。…苦しい時は苦しいって言っても良いんですよ?」
私の目から一滴の涙が頬を伝った。
もう止まらない。
家族にも友達(居ないけど)にも先生にも言えなかったこの苦しさが全て流れてきてもう止まらない。
「待ちますよ。」
彼は、私を泣き止むまで待ってくれた。人前で泣いたのは殆ど無かったのに。
「何で…舐められるんだろう…無能力者である事がそんなにいけないことなの?」
私はその言葉を独り言の様に言った。
その言葉は私の心全てだった。
「だったら、能力者を倒せる位強くなりましょう!学園に行くまでの三年間。強くなれば、きっと何かが変わってくれます!」
最初は無責任な言葉だなって思った。
それでも、私を救ってくれる唯一の言葉だった。
その1ヶ月後…
「自分が一番大変なのに、また人の事考えてるんですか?」
呆れた様に言う彼の声。
「仕方無いだろ?心配しちゃうんだから。」
ぶっきらぼうに私は返事をした。
「いつか身を滅ぼしますよ?というか、既に滅びかけてるじゃないですか!」
私は至る所に傷ができてボロボロだった。
私はその時、無能力者で虐められていたある後輩を助け、何とか自分も生還した。
正直、クッソ痛い。
あと数分でも彼が、更にその数分後に(糞)教師が来なかったら、大変な目にあっていそうだ。
珍しく運が良かった。
「女の子が怪我をして…家族には何て説明するんですか………」
「フン。私が女の子?女子をほぼ捨ててるよ。私なんかさ。どうせまたやらかしたのかって言われるだけだよ。」
私なんてもう、諦めている。可愛い女の子になるのも、優しい人になるのも。
もう如何でもいい。
「そうですかね………でも樫妻先輩がオシャレに目覚めたら、可愛くなれるんじゃないですか。知りませんけど。」
責任逃れをする為の知りませんけど。という言葉を使いながら彼は言う。
上げて下げるのやめてくれ。
「私も知らないわ。もしかしたらあるかもしれないけど……私がオシャレに…ねぇ…」
私にセンスがあるとは思えない。
「正直、私自身あり得ないと思うなぁ。」
「ありえませんねぇ…」
「殺すぞ。」
「いやーん。」
思っているからと言ってこいつに言われたら言われたらで腹が立つ。
「ねぇ……」
ふと思ったことを言う。
「なんですか?」
「もし私が、能力者になって…もし君が能力者になったら…私達は如何するのかな?」
「先輩は外の世界に行く為に資格取るんじゃないですか?」
「そうだけどさ、なんて言うか……あんまり変わんないんじゃないかなって。」
「ああ、そういう事ですか。樫妻先輩はきっと変わらないですよ。どうせ、危機に瀕している誰かが居たら助けちゃうんでしょ?範囲しか変わってませんって。」
「間違い無い。…じゃあ、君は?」
「そうですね…………まぁ、僕も外の資格を取りに行きますかね。」
「どっちも外の資格を取って…外の世界に行ったら……フフ。もしかしたら、君が助けて~って言うかもしれないね!」
「こっちの台詞ですよ。もし樫妻先輩が危機的状況になってたら助けてあげますよ。」
「何で上から目線なんだよ……………先輩が後輩を守るんだから、素直に守られとけよって。」
それでも言われて嬉しかった。
「そんな事言ったって後悔しますよ~?…助けて欲しい時は僕の名前を呼ぶんですよ。樫妻先輩。どーせ、無茶するんですから。」
「分かったよ。その代わり、私の助けが要るなら言いなよ。」
私は…彼に何をしてあげられただろうか。
助けてあげたいと思う今…私は助けてあげられなさそうだ。
彼は…優しい人だ。
…私にとって輝いてさえも見える。
君がいないと嫌だよ…
私は…君がいたからここに居るんだ。戦えるんだ。
…だから…戻って来て。
私達を助ける…ヒーローとして戻って…私達と共に帰ろう。
魂の叫びを今…!
思い出せ!
彼からのメッセージを…!
私を忘れないで
彼がそう言っていたんだから!
緋色は叫ぶ。
「助けて………と…」
もっと息を吸い込んで叫ぶ。
「助けて!春斗ーー!!!!」
ほんと、仕方ないなあ。先輩は。
その言葉に反応するように彼が来る。
「樫妻先輩。今度はどんな危機的状況ですか?」
「マジで来やがった!?」
「呼んだのは先輩ですよ!?」
「棚見君!時間が惜しい!あと、30秒も切ってる!」
「え!?えええ!?」
残り20秒。
「さあ、春斗!三人でやるよ!」
「え、ええ!?何を!?」
「時間が無い!行くよ!」
残り10秒。
「ああ、もう!なんとでもなれ!」
「せーの!」
残り0秒。
ドカーーーーーン!
「…何で…こんなに…危機的状況なんですか…どうしたら爆発する状況になれるんですか…」
あーかわいそうーごめーんはるとー!
という棒読みな言葉を緋色は叫ぶ。
「…危機的状況から抜け出したから…次の危機的状況の方へ急ごうか。」
「ええ…今度はなんですか……」
「夏希達が危ない。急ごう。」
「ああ、もう分かりましたよ!」
三人で扉の先に走る。
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