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参章・昇りし太陽編
3‐32 89 夏希・その他視点 夢
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夏希視点
「きゃあ…!?」
黒い霧に包まれ視界が遮られる。
(これは…!?まさか…………!)
まるで魂に纏わり付くような感覚だ。
それに、これは奏恵ちゃんが受けた霧に似ている。
もしかしたら、似ているのではなくそもそも同じかもしれない。
「…皆…!大丈夫…!?」
「…ケホッ…はい。私は大丈夫です…」
「…………私も…………」
「………大丈夫です。」
辺りを見渡すと、奏恵ちゃんが居ない。
「奏恵ちゃん…!何処に…」
というか、ここは何処だろうか。
いつの間にか誰かの家の中にいたが、ここは白い建物の内部だろうか。
「…………………………………取り敢えず…………この家を出ましょう…!」
鶴ちゃんが焦っているように見える。
「……!」
すると、鶴ちゃんは驚いた顔になる。
「なんで…居るの……………?」
小さい声で言う。その声は明らかに震えていた。
「鶴ちゃん!」
夏希は嫌な予感がして叫ぶ。鶴ちゃんの向こうには何も無い。
幻覚か、幻聴か、はたまた洗脳か…
「………何で…居るの!!!!!」
初めて聞くような大声を発した瞬間、視界が歪み始める。
「戻って!鶴ちゃん!」
その声は届かなかった。
いつの間にか、場所が変わる。
「…あれ?…皆がいない…!」
精神感応を使っても誰も反応しない。
恐らく、建物に入ってから使えなくなっているのだろう。
自分がブレインダイブである中で未熟であるにしても、使えなくなるこの白い建物は一体何だろうか。
(此処は…………外の世界の…森林………)
次に起こる事は大体分かる。
鶴ちゃんが明らかに様子が可笑しかったように、夏希もまた…何かが起こる。
すると、やはり知っている人が立っていた。
「有希ちゃん…由夢ちゃん。」
「…ねえ…どうして私を置いていくの?」
「私達を見捨てて、先に行くのね。」
「…昔の親友より今の友達?」
「……………」
「私達の事は一度も助けてくれなかったよね。」
「でも、親友じゃない人達は助けようとするんだね。」
「何?…私達は親友じゃなかったの?」
「……それは…!」
「それは…?何…?」
「……………それは……………違うよ…」
「夏希の嘘付き。」
「私達は如何でも良かったんだ。…無能力者だからっていう理由でいつも逃げてた癖に。」
「……!」
「能力者になった途端にこれ。お調子者にも程がある。」
「…あ~あ…つまんないの。こんな友達持つんじゃなかった。」
「夏希って臆病者なのね。はっきり言って幻滅したわー」
「………幻滅…?私に幻滅したって言った?」
恐らくこの二人は偽物。
私がそれを察すると分かった上でこんな事を言ってくれているのだ。
「幻滅かぁ………勝手に期待して、勝手に幻滅しないでよ。」
「何?」
「そっちが幻滅したのは私のせいじゃない。勝手に期待したそっちが悪いの。」
「自己中な言い草。」
「うん!そうだね。とっても自己中な言い方だと私も思う。でもさ、偽物が本物を語るってさ…あまりにもウザくない?」
「………!!!」
私の親友は死ぬ寸前でも私を嘲笑うことも、悪口を言うこともない。
「きっと、香露音も緋色も、私の後輩達も………皆、きっと大切な人に罵倒されてるのかも。…でもさ、皆気付くよ?それが誰であれ…私自身の魂が違うと言っているのだから。」
魂がこの人達の存在を全否定している。
私の魂の奥底からお前じゃないと叫んでいる。
「だからごめん。二人とも。私は今からやらなきゃいけない事があるの。でも、それは二人がいちゃ駄目なの。そんなこと言ったら…本当の二人に怒られるね。じゃあねー!バイバーイ!」
私は手を振って歩く。
「何で…!私達を頼ってくれないのよ!」
その言葉をそっくり返したい。
…何で…一人で行ってしまったのかって。
その言葉はもう届かない。
「…あ~れぇ…?」
いつの間にか元の場所に戻っていた。
(…急に景色が変わったり…可笑しいなぁ…?)
「…あ、夏希先輩!」
光ちゃんが一番最初に居た。
「…急にバラバラになって吃驚しました。」
とは言うが結構冷静だ。
「……皆、大丈夫ですかね?」
「……さあね…?そう思うしかないよ。」
光ちゃんも同じ目にあったようだ。
「…私は皆なら大丈夫って信じてるから。」
「そうですか?…フフ…じゃあ、私もそうします。」
光ちゃんは静かに笑った。
光視点
「……あ~あ……」
鶴から離れてから一気に蜘蛛の巣の様に私達は散った。
(多分、同じ目に合うだろうなー鶴と同じようにさ。)
だったら、奏恵も同じ目に?智花も?先輩方もそうなんじゃ?
急に不安になってきた。
「光ー!」
私を呼ぶ誰かの声。
後ろを振り返ると、誰もそこには居なかった。
「……ねえねえ!此処ってばー!ひーかーるー!」
見えない。
「何処にいるの?誰?」
すると、声は突如暗くなる。
「忘れたの?…忘れないって言ってくれたのに?」
「え…?」
本当に誰なのだろう。
「………ねえ…光の為に消えたのに…!」
「………!」
ああ…そうか。
やっと分かった。
「……それはそうか。…覚えてないのは当たり前…か。」
「酷い!」
「ごめんね?でもね、私の為に消えた?それすら本当か分からない。」
「最低よ…!こんなにも頑張ったのに!」
そう言うしかない。
きっと偽物で、本物じゃない。
きっと、本物は優しい。だから、本心は話さない。
私を助けてくれた誰かを忘れてしまった罪は消えない。それは忘れない。
でも…出来なかった。
私を…死に行く私を助ける為に、死を肩代わりした誰か。
恐らく、緋色先輩がやった事を自分にした。
緋色先輩が言う魂の干渉。
それを彼女が自分にしたのだろう。
「もう…何も思い出せないの…!唯一、そっちが存在した事を証明できるのは…この抜け落ちた記憶の穴だけなの!」
学園の登校中の記憶も、確かに存在した何かと笑いあった記憶も無い。
ある日からごっそりと抜け落ちていた。
それは恐らく…確かに存在していたただ一つの証明。
「…私は……夏希先輩の事を思い出した時に…夏希先輩だけじゃない、他の誰かも消滅していた…それだけしか思い出す事が出来なかった。」
「……何で…!!!」
「…だから…助け出す事は出来ない。」
私は背を向けて歩く。
「…嫌…!行かないで!私を一人にしないで!」
気持ちは分かる。
孤独は辛い。
「…でも…行かなきゃいけない…!…ここで何もしなかったら!私の生きれた理由は、残された理由は何なの!?」
「………そんなの…知らないよ…!」
「…絶対に忘れない…一人にさせる私を恨むなら勝手に恨んで。」
「…何でよ…私を何で…見捨てるの…何で…優しく棄てるの…!」
「……………さようなら…」
小さく言葉を続ける。
「桜月。」
私は歩く。これ以上止まってはいけない。
「………あ、出た。」
無事に元の場所に戻った。
誰も居ない。
(…待つか…)
人には人の色がある。
緋色先輩は恨みや殺意に染められた色が。
香露音先輩は正義と自信に染められた色が。
夏希先輩は優しさと勇気に染められた色が。
でも…彼女は…何の色も見えなかった。
…………色なんて無いなら…存在してないのと同じだ。
どんな色かも記憶が無い。
彼女をもう分かる事は無い。
だから、二度もそんな事はさせない。
せめて…今だけは…
鶴視点
「なんで…居るの……………?」
私はただ驚きよりも恐怖の方が上回った。
「貴方は…私が殺した…!」
「お前はどっちが悪いと思う?金に目が眩んで、お前を殺して金を盗もうとした俺か、それとも、正当防衛で自らが責められない上で自己満足の為に俺を殺したお前か。」
「……貴方は…偽物………!!」
直ぐに分かった。
「ああ、そうだ。本物じゃない。…その上で聞いているんだ。…お前は…どっちが悪いと思うんだ。」
それだけじゃない。
普通は自身を正当化する。だから答えは決まってる。
でも……私は…正当化出来ない。
だから、聞いているんだこの人は…!
「それにさ、俺が必死に働いて初めて買ったナイフを奪った挙句に簡単に壊しやがって。」
「……………」
「お前は…何度も何度も何度も!自身を偽ってきたな!…俺は!加害者なのか被害者なのかどっちなんだ…!?お前もそうだ!お前は…俺が恨まれる存在なのか…!?恨む存在なのか…!?」
「………」
「どっちなんだよ!お前が責められない為に被害者面をするから、俺は何で死んだのか、何で殺されたのか!もう分からない!」
「…誰も……そんなの分からない……………誰も…私を裁けない…!それは貴方も同じ…………貴方の事を誰も…裁けない。」
これは誰も救われない。
貴方も私も。
「何方も…もうどうしようも無い……悪人だった…金に目を眩んで人を殺す屑と、加害者にされない演技をしてまで人を殺す屑。」
私達は同じタイプの人間。
「じゃあ、どっちも悪いって事に終わらせるつもりか!」
「…じゃあ…!私は如何すればいいの…!もう一人の私は、次いつ出てくるのか分からない…!でも…絶対に出てくる…!その時に一体如何すればいいの!」
私は偽物でこの人を殺した私が本物だという事が、世界をやり直してから何度も痛感してきた。
私は根っからの残虐性のある人間だ。
弱者を虐めるのに何とも言えない快楽を感じてしまう有り得ない程の屑。
弱い者いじめをしてはいけないと言うのは皆が言うからそうなのだろう。
それを小さい頃から分かっていた私は、責められない為の嘘で塗り固め、加害者扱いを避け続けた。
「…私を裁けるのは貴方だけかもしれない…でも…貴方は死んだ。」
「ああ、そうだな。だが、今俺は居る。今お前が死ぬのが良いかもな…死にたくないんだろう?ここで死ぬ訳にはいかないんだろう?」
私の首を掴み壁に押し倒した。
「…う……ぐぅ……………」
苦しい。痛い。
「死んではいけない今、死ぬからお前にやっと罰が与えられるんだ。」
(やっと…私に…罰が……)
そう思えば、反抗する手の力が抜ける。
「でも…守らせて。五十嵐さん。」
言葉を思い出す。
(あ…駄目だ。私は…こんなところで死ぬなんて…できない。)
「…放……………せ……!!!!!!」
思いっ切り蹴り飛ばし、首の束縛から開放された。
「ケホッ…ゴホッ…!」
咳込む。息が苦しい。
…駄目だ…今は駄目なんだ…
ここで死ねば、彼に顔向け出来ない。
「…私は…死にたくないんじゃない…!死んではいけないだけ…!」
それを履き違えてはいけない。
「許されなくても良い…私に必要無い…!」
「自己中を極めたらそんな事を言い始めるのか!…許されなくても良い?…それは俺が決める事だ!」
果たして、自己中はどっち?
「…全ての始まりはそっちから…文句を言われる筋合いはない…もう一度死ね…!此処にいるべきなのは私だけ……!」
「…ふざけるな!」
あの時のように襲われる。
「鎌鼬(中)。」
手を伸ばし、首を刎ねた。
どっちが悪人?
そんなの知っている訳がない。
だって今の私は偽物。
悪人じゃない。
私は皆と共に戦い、一緒に帰る。
そんなことができる偽物だから。
「きゃあ…!?」
黒い霧に包まれ視界が遮られる。
(これは…!?まさか…………!)
まるで魂に纏わり付くような感覚だ。
それに、これは奏恵ちゃんが受けた霧に似ている。
もしかしたら、似ているのではなくそもそも同じかもしれない。
「…皆…!大丈夫…!?」
「…ケホッ…はい。私は大丈夫です…」
「…………私も…………」
「………大丈夫です。」
辺りを見渡すと、奏恵ちゃんが居ない。
「奏恵ちゃん…!何処に…」
というか、ここは何処だろうか。
いつの間にか誰かの家の中にいたが、ここは白い建物の内部だろうか。
「…………………………………取り敢えず…………この家を出ましょう…!」
鶴ちゃんが焦っているように見える。
「……!」
すると、鶴ちゃんは驚いた顔になる。
「なんで…居るの……………?」
小さい声で言う。その声は明らかに震えていた。
「鶴ちゃん!」
夏希は嫌な予感がして叫ぶ。鶴ちゃんの向こうには何も無い。
幻覚か、幻聴か、はたまた洗脳か…
「………何で…居るの!!!!!」
初めて聞くような大声を発した瞬間、視界が歪み始める。
「戻って!鶴ちゃん!」
その声は届かなかった。
いつの間にか、場所が変わる。
「…あれ?…皆がいない…!」
精神感応を使っても誰も反応しない。
恐らく、建物に入ってから使えなくなっているのだろう。
自分がブレインダイブである中で未熟であるにしても、使えなくなるこの白い建物は一体何だろうか。
(此処は…………外の世界の…森林………)
次に起こる事は大体分かる。
鶴ちゃんが明らかに様子が可笑しかったように、夏希もまた…何かが起こる。
すると、やはり知っている人が立っていた。
「有希ちゃん…由夢ちゃん。」
「…ねえ…どうして私を置いていくの?」
「私達を見捨てて、先に行くのね。」
「…昔の親友より今の友達?」
「……………」
「私達の事は一度も助けてくれなかったよね。」
「でも、親友じゃない人達は助けようとするんだね。」
「何?…私達は親友じゃなかったの?」
「……それは…!」
「それは…?何…?」
「……………それは……………違うよ…」
「夏希の嘘付き。」
「私達は如何でも良かったんだ。…無能力者だからっていう理由でいつも逃げてた癖に。」
「……!」
「能力者になった途端にこれ。お調子者にも程がある。」
「…あ~あ…つまんないの。こんな友達持つんじゃなかった。」
「夏希って臆病者なのね。はっきり言って幻滅したわー」
「………幻滅…?私に幻滅したって言った?」
恐らくこの二人は偽物。
私がそれを察すると分かった上でこんな事を言ってくれているのだ。
「幻滅かぁ………勝手に期待して、勝手に幻滅しないでよ。」
「何?」
「そっちが幻滅したのは私のせいじゃない。勝手に期待したそっちが悪いの。」
「自己中な言い草。」
「うん!そうだね。とっても自己中な言い方だと私も思う。でもさ、偽物が本物を語るってさ…あまりにもウザくない?」
「………!!!」
私の親友は死ぬ寸前でも私を嘲笑うことも、悪口を言うこともない。
「きっと、香露音も緋色も、私の後輩達も………皆、きっと大切な人に罵倒されてるのかも。…でもさ、皆気付くよ?それが誰であれ…私自身の魂が違うと言っているのだから。」
魂がこの人達の存在を全否定している。
私の魂の奥底からお前じゃないと叫んでいる。
「だからごめん。二人とも。私は今からやらなきゃいけない事があるの。でも、それは二人がいちゃ駄目なの。そんなこと言ったら…本当の二人に怒られるね。じゃあねー!バイバーイ!」
私は手を振って歩く。
「何で…!私達を頼ってくれないのよ!」
その言葉をそっくり返したい。
…何で…一人で行ってしまったのかって。
その言葉はもう届かない。
「…あ~れぇ…?」
いつの間にか元の場所に戻っていた。
(…急に景色が変わったり…可笑しいなぁ…?)
「…あ、夏希先輩!」
光ちゃんが一番最初に居た。
「…急にバラバラになって吃驚しました。」
とは言うが結構冷静だ。
「……皆、大丈夫ですかね?」
「……さあね…?そう思うしかないよ。」
光ちゃんも同じ目にあったようだ。
「…私は皆なら大丈夫って信じてるから。」
「そうですか?…フフ…じゃあ、私もそうします。」
光ちゃんは静かに笑った。
光視点
「……あ~あ……」
鶴から離れてから一気に蜘蛛の巣の様に私達は散った。
(多分、同じ目に合うだろうなー鶴と同じようにさ。)
だったら、奏恵も同じ目に?智花も?先輩方もそうなんじゃ?
急に不安になってきた。
「光ー!」
私を呼ぶ誰かの声。
後ろを振り返ると、誰もそこには居なかった。
「……ねえねえ!此処ってばー!ひーかーるー!」
見えない。
「何処にいるの?誰?」
すると、声は突如暗くなる。
「忘れたの?…忘れないって言ってくれたのに?」
「え…?」
本当に誰なのだろう。
「………ねえ…光の為に消えたのに…!」
「………!」
ああ…そうか。
やっと分かった。
「……それはそうか。…覚えてないのは当たり前…か。」
「酷い!」
「ごめんね?でもね、私の為に消えた?それすら本当か分からない。」
「最低よ…!こんなにも頑張ったのに!」
そう言うしかない。
きっと偽物で、本物じゃない。
きっと、本物は優しい。だから、本心は話さない。
私を助けてくれた誰かを忘れてしまった罪は消えない。それは忘れない。
でも…出来なかった。
私を…死に行く私を助ける為に、死を肩代わりした誰か。
恐らく、緋色先輩がやった事を自分にした。
緋色先輩が言う魂の干渉。
それを彼女が自分にしたのだろう。
「もう…何も思い出せないの…!唯一、そっちが存在した事を証明できるのは…この抜け落ちた記憶の穴だけなの!」
学園の登校中の記憶も、確かに存在した何かと笑いあった記憶も無い。
ある日からごっそりと抜け落ちていた。
それは恐らく…確かに存在していたただ一つの証明。
「…私は……夏希先輩の事を思い出した時に…夏希先輩だけじゃない、他の誰かも消滅していた…それだけしか思い出す事が出来なかった。」
「……何で…!!!」
「…だから…助け出す事は出来ない。」
私は背を向けて歩く。
「…嫌…!行かないで!私を一人にしないで!」
気持ちは分かる。
孤独は辛い。
「…でも…行かなきゃいけない…!…ここで何もしなかったら!私の生きれた理由は、残された理由は何なの!?」
「………そんなの…知らないよ…!」
「…絶対に忘れない…一人にさせる私を恨むなら勝手に恨んで。」
「…何でよ…私を何で…見捨てるの…何で…優しく棄てるの…!」
「……………さようなら…」
小さく言葉を続ける。
「桜月。」
私は歩く。これ以上止まってはいけない。
「………あ、出た。」
無事に元の場所に戻った。
誰も居ない。
(…待つか…)
人には人の色がある。
緋色先輩は恨みや殺意に染められた色が。
香露音先輩は正義と自信に染められた色が。
夏希先輩は優しさと勇気に染められた色が。
でも…彼女は…何の色も見えなかった。
…………色なんて無いなら…存在してないのと同じだ。
どんな色かも記憶が無い。
彼女をもう分かる事は無い。
だから、二度もそんな事はさせない。
せめて…今だけは…
鶴視点
「なんで…居るの……………?」
私はただ驚きよりも恐怖の方が上回った。
「貴方は…私が殺した…!」
「お前はどっちが悪いと思う?金に目が眩んで、お前を殺して金を盗もうとした俺か、それとも、正当防衛で自らが責められない上で自己満足の為に俺を殺したお前か。」
「……貴方は…偽物………!!」
直ぐに分かった。
「ああ、そうだ。本物じゃない。…その上で聞いているんだ。…お前は…どっちが悪いと思うんだ。」
それだけじゃない。
普通は自身を正当化する。だから答えは決まってる。
でも……私は…正当化出来ない。
だから、聞いているんだこの人は…!
「それにさ、俺が必死に働いて初めて買ったナイフを奪った挙句に簡単に壊しやがって。」
「……………」
「お前は…何度も何度も何度も!自身を偽ってきたな!…俺は!加害者なのか被害者なのかどっちなんだ…!?お前もそうだ!お前は…俺が恨まれる存在なのか…!?恨む存在なのか…!?」
「………」
「どっちなんだよ!お前が責められない為に被害者面をするから、俺は何で死んだのか、何で殺されたのか!もう分からない!」
「…誰も……そんなの分からない……………誰も…私を裁けない…!それは貴方も同じ…………貴方の事を誰も…裁けない。」
これは誰も救われない。
貴方も私も。
「何方も…もうどうしようも無い……悪人だった…金に目を眩んで人を殺す屑と、加害者にされない演技をしてまで人を殺す屑。」
私達は同じタイプの人間。
「じゃあ、どっちも悪いって事に終わらせるつもりか!」
「…じゃあ…!私は如何すればいいの…!もう一人の私は、次いつ出てくるのか分からない…!でも…絶対に出てくる…!その時に一体如何すればいいの!」
私は偽物でこの人を殺した私が本物だという事が、世界をやり直してから何度も痛感してきた。
私は根っからの残虐性のある人間だ。
弱者を虐めるのに何とも言えない快楽を感じてしまう有り得ない程の屑。
弱い者いじめをしてはいけないと言うのは皆が言うからそうなのだろう。
それを小さい頃から分かっていた私は、責められない為の嘘で塗り固め、加害者扱いを避け続けた。
「…私を裁けるのは貴方だけかもしれない…でも…貴方は死んだ。」
「ああ、そうだな。だが、今俺は居る。今お前が死ぬのが良いかもな…死にたくないんだろう?ここで死ぬ訳にはいかないんだろう?」
私の首を掴み壁に押し倒した。
「…う……ぐぅ……………」
苦しい。痛い。
「死んではいけない今、死ぬからお前にやっと罰が与えられるんだ。」
(やっと…私に…罰が……)
そう思えば、反抗する手の力が抜ける。
「でも…守らせて。五十嵐さん。」
言葉を思い出す。
(あ…駄目だ。私は…こんなところで死ぬなんて…できない。)
「…放……………せ……!!!!!!」
思いっ切り蹴り飛ばし、首の束縛から開放された。
「ケホッ…ゴホッ…!」
咳込む。息が苦しい。
…駄目だ…今は駄目なんだ…
ここで死ねば、彼に顔向け出来ない。
「…私は…死にたくないんじゃない…!死んではいけないだけ…!」
それを履き違えてはいけない。
「許されなくても良い…私に必要無い…!」
「自己中を極めたらそんな事を言い始めるのか!…許されなくても良い?…それは俺が決める事だ!」
果たして、自己中はどっち?
「…全ての始まりはそっちから…文句を言われる筋合いはない…もう一度死ね…!此処にいるべきなのは私だけ……!」
「…ふざけるな!」
あの時のように襲われる。
「鎌鼬(中)。」
手を伸ばし、首を刎ねた。
どっちが悪人?
そんなの知っている訳がない。
だって今の私は偽物。
悪人じゃない。
私は皆と共に戦い、一緒に帰る。
そんなことができる偽物だから。
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