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弐章・選ばれし勇者編
2-25 57 緋色視点 棄てられし英雄
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「…………え?」
奏恵ちゃんの心臓が鎌で貫かれている。
空中に浮いた鎌は満足するかの様に抜いた。
奏恵ちゃんは膝をつく。
役目を終えた鎌は割れて壊れた。
瘴気が奏恵を包んでいく。
「奏恵、奏恵…!!!!」
光ちゃんは奏恵に近付く。
「駄目!光ちゃん!」
緋色は咄嗟に叫んだ。何故か駄目な気がした。
すると、殆ど無傷だった光ちゃんの身体から大量に血が吹き出た。
「…ゴブっ……………!」
そのまま倒れた。何が起こったか分からない。
理解出来ない。理解したくない。
また…地獄が始まった。そう、理解したくなかった。
「光ちゃん……!」
「これは…まずいんじゃ無いですかね……!」
春斗が奏恵から遠ざけるようにして後退りしている。
何となくだが、緋色も予想できてしまった。
「春斗………ワンチャン光ちゃん、助けられるよね…?」
「そうですね………死んでは無いですね。元橋さんは一応僧侶なので。…これが、戦闘系だったら即死でしたねぇ…」
気配察知で光ちゃんを認知出来る。という事は、死んではいない。
希望はあると言えばある。
奏恵ちゃんは瘴気に苛まれている。
「………ァ…ァ…!」
死んでいる筈なのに、声を発し始めた。
「…先輩。消えてた元橋さんの気配が…また…復活しました………」
「それも…敵として…ね。」
「…嘘でしょ…!?」
香露音は驚いているが、嘘だとは思ってなさそうだ。
今、奏恵ちゃんに何が起きているか。
それは、怪物化。奏恵ちゃんはモンスターになろうとしている。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
その姿は最早人じゃなかった。
「…あれは………兎………!?」
「中の世界よりも…殺意を感じるけど…!」
中の世界でも人間以外の生物は居る。
とっても可愛い見た目の良く分からない生物だが、この兎は血のように赤い。
「樫妻先輩…なんで、綱川さんは…一瞬で…」
「…多分僧侶としての能力によるものだろうね…!簡単に言えば…割合攻撃…的な?」
「…じゃあ、即死は無いけど戦闘不能には一瞬でなりますねぇ…」
「………そうだね…!」
すると、元奏恵ちゃんは鳴き始める。
分裂するように増えていく。
「キュイ…!キャイヤ…!」
「何これ…!嘘でしょ!」
「何体も何十体も!?」
「3桁いくんじゃないかな!」
逃げる暇など与えられず襲い掛かってくる。
「うわぁ…!?」
既に2人もいない。
この状況で、何百体もいて、今尚増え続けている。
「輪廻(中)…!」
「隼(中)…!」
「月面斬り(中)…!」
「洗脳(大)…!」
「霹靂の剣(大)…!」
「死線誘導・乱舞(大)……!」
一匹一匹はサルより少し強い程度だが、サルよりも倍の数がいる。
それに全く減らない。
「噛み付いてくる…!この…!」
「多分、これはあれだね…!最初の1体しか能力使えないんだ…!」
「だから、噛み付くんですね!月影(中)…!」
「正義の神罰(大)…!最初の1体なんて分かるはずないじゃない…!」
こんなにも、戦っているのにも関わらず減らない。
「ッチ…!死線誘導・殺戮(大)…!」
「氷帝の剣(大)…!………終わんないですよ!これ…!」
「黒の一閃(小)……っ!奏恵………!」
「悪夢殺し(中)…!なんで奏恵ちゃんがモンスターになったの…!?」
「分かんないよ…!そんなの…!」
それでも考えられる事は、あの瘴気に侵されたせいだ。
死んだから取り込まれたのか、死ななければ取り込めないのか。
それは分からないが、今、そんな状況じゃないのは確かだろう。
それに、光ちゃんの姿が兎によって見えなくなっている。
「月桂(大)………!はぁ…はぁ………!」
智花ちゃんも予想外の出来事に混乱している。
それでも刃は止めていない。
「黒の一閃(小)…………この…!邪魔しないで………!!」
死線で攻撃してもその間から更に兎が溢れてくる。
「輪廻(小)……終わんない…!」
武器生成でナイフを生成しても、兎が一度でも噛み付けば直ぐに壊れてしまう。
「ううううあああああああ…!」
叫び声が聞こえた。智花ちゃんの方だ。
「智花ちゃん!」
香露音はすかさずに其方に行った。
足を噛み砕かれたようだ。
一度噛み付かれたら、もう…終わりだ。
「正義の審判(大)………!」
香露音はそこに行こうとしても大量の兎により全く進めない。
肉の、骨の断ち切る音が大きく響いていく。
「キュイ…?……キャキャキャキャ…!キュウ…キュウ!!」
緋色は血に濡れた歯を見せるように笑っているように見えた。
「この………!!!!」
「駄目…香露音…!」
しかし、怒りに身を任せた香露音は聞こえていない。
「騎士式・紅楼の鉄槌…!!!!!」
沢山の兎がバラバラになって死んで消えていく。
しかし、ブーストとしては不完全だ。不完全な力は負担が大きい。
「香露音!!!お願い…!!!私の話を聞いて!」
夏希が叫ぶ。
鶴ちゃんと緋色が夏希を守る様にして兎を殺した。
「夏希…まずは自分の身だよ…………!」
「…まだ…何とかなるかも…しれません………香露音先輩を……信じましょう…………」
辛そうに言う。
(そんな事を後輩に言わせるなんて…私は………まだ無力だった…!)
「絶対に!!!何で…!!!!殺すの!」
香露音の声が小さくなっていく。
「何で……!また……殺すの………!!!!」
血が辺り一面に飛び散った。
「香露音!!!」
また一人死んでいく。
幾ら減ったのだろう。
兎をあれ程殺した筈だ。
確かに減った。見た目は減っている。
真っ白から少し地面の色が混ざっている程度に。
少しずつだが、増えていく量が減っていっている。
「………ううううぅ……!!!!!!!」
「鶴ちゃん!!!!!!!!」
また死んでいく。
今度は延命されることも無く、首を噛み切られた。
首の肉を噛みちぎったと言ってもいいだろうか。
「死線誘導・乱舞(大)………!」
一気に兎を殺したが、別の兎に死線を噛み切られて、死線が切れてしまった。
「武器生成(中)……!」
急いで死線を作る。
しかし、耐久性も悪くなっている。
時間が無い。
自身の持久力もこのままじゃ保たない。
「先輩!栄光の剣(中)…!」
徐々に集中力が切れ始め、春斗に助けられてしまった。
「大丈夫ですか…!しっかりしてください!」
「ごめん。………後輩に言われちゃあ…しょうが無いね…!!」
まだ、自分が生きている。
戦わなければ、それこそ全滅だ。
折角、時が戻り世界をやり直した。夏希を取り戻した。
その果てが、誰も生きてないなど…あってはならない。
「ご…め……………」
「………な…つき………!」
緋色の目の前で夏希は食われていった。
今までの苦労は何だったのか。
今までの絶望は何だったのか。
今までの……今までの…
1時間位は簡単に経っている。減らない。全く…減らない。
何で、こうも希望を壊してくるのだろうか。
「はぁ………!はぁ………!クソ!クソ!!!」
緋色は叫ぶ。既に息が絶え絶えだ。
「もう…僕達二人だけですね…!はぁ………はあ…減りませんよ…!全く!」
2人は背中を合わしながら戦っている。春斗も背中を気にしながら戦える気力がない。
「また…守れなかった………!………もう…来ないで!」
死線であまり殺せなくなった。ナイフでチマチマと殺していく。
兎のせいで腕が血に濡れている。
「まさか…こうなるなんてね…!!!英炎の剣(大)…………!」
春斗も息が荒い。2人とも限界になってきている。
「はぁ…!はぁ………!そろそろ…私が限界なんだけど…!?このままでは…終わらせ……!」
すると、春斗が叫ぶ。
「ウワアアアアアア……!」
「春斗…!?」
春斗は腕を食い千切られている。更に、左脚もズタズタだ。
「春斗!!!!!!!この!!!!」
春斗を庇うように兎を殺していく。
「や………やらかしました。アハハハ……………もう…戦えません………」
痛みを我慢しているのか、苦しそうな声で言う。
「そんなの……!!!!」
「…お願いがあります。僕を………」
春斗の声は小さ過ぎて最後の言葉を聞こえなかったが、何を言っていたかすぐに分かった。
「今回みたいにはなる保証なんて…!」
たまたまだった。ほんの偶然で夏希の存在を代償にした。
ほんの偶然で世界をやり直した。
次は?
偶然で同じ事が起きるのか?
夏希を忘れていたように…春斗も忘れなければならないというのか?
「…樫妻先輩には悪いですが………でも…かけるしかありませんよ。樫妻先輩なら…どうせ誰よりも早く思い出してくれるんでしょう…?」
春斗は微笑む。緋色だから言える事だ。
緋色はそれが分かっているから、春斗の言う事を反対出来ない。
「ホント…そういう所嫌い……………」
声が聞こえる…
「あ~あ。また死ぬよ。ハハハッ!コイツをも殺すのか?フン。どちらにせよ…此奴は死ぬさ。何をしても。」
前回とは違い偉そうだ。この声は…きっと…
…いいや、今はそれどころではない。
「………私にまた背負わす気ね…」
それでもやる事は1つだ。
「で?如何するんだ?無様に生きる方法を取るのか?その先にちゃんと未来が存在しているとは限らないぞ?今のようにな。」
ああそうだ。そんな事、知ってる。
それは、声の主であるお前だって分かっているはずだ。
「決まってる!私は…大事な後輩を…!春斗を!殺して力を得る!」
「アハハハハハハ!最高だよ!さぁ、次はもっと上手くやるといい。」
緋色は黄金に輝き始めた。
「来いよ!こんな時にはお前が一番だろう!なぁ声の主よ、第四位の尊大の緋色!」
真名を持った精神世界の緋色と繋がる。
「さぁ…全部殺してやる。…私に殺されるのを…!有難く思え!」
何回も何時間も戦い続けた。
新しい太陽が登ると大地と緋色は真っ赤に染まって緋色だけが生命を唄っていた。
「アハハハ………本当に…私は何でこうも弱いんだろ…」
世界が割れ始める。
「本当にゴミだよ…この世界は…私が…戦い終わってから…世界が崩れるなんてさ…もうこんなにも疲れたのに。…………ごめんね…皆………また…守れなかった…」
緋色はその谷間に落ちていく。
まるで最初から歪んでいたように。
奏恵ちゃんの心臓が鎌で貫かれている。
空中に浮いた鎌は満足するかの様に抜いた。
奏恵ちゃんは膝をつく。
役目を終えた鎌は割れて壊れた。
瘴気が奏恵を包んでいく。
「奏恵、奏恵…!!!!」
光ちゃんは奏恵に近付く。
「駄目!光ちゃん!」
緋色は咄嗟に叫んだ。何故か駄目な気がした。
すると、殆ど無傷だった光ちゃんの身体から大量に血が吹き出た。
「…ゴブっ……………!」
そのまま倒れた。何が起こったか分からない。
理解出来ない。理解したくない。
また…地獄が始まった。そう、理解したくなかった。
「光ちゃん……!」
「これは…まずいんじゃ無いですかね……!」
春斗が奏恵から遠ざけるようにして後退りしている。
何となくだが、緋色も予想できてしまった。
「春斗………ワンチャン光ちゃん、助けられるよね…?」
「そうですね………死んでは無いですね。元橋さんは一応僧侶なので。…これが、戦闘系だったら即死でしたねぇ…」
気配察知で光ちゃんを認知出来る。という事は、死んではいない。
希望はあると言えばある。
奏恵ちゃんは瘴気に苛まれている。
「………ァ…ァ…!」
死んでいる筈なのに、声を発し始めた。
「…先輩。消えてた元橋さんの気配が…また…復活しました………」
「それも…敵として…ね。」
「…嘘でしょ…!?」
香露音は驚いているが、嘘だとは思ってなさそうだ。
今、奏恵ちゃんに何が起きているか。
それは、怪物化。奏恵ちゃんはモンスターになろうとしている。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
その姿は最早人じゃなかった。
「…あれは………兎………!?」
「中の世界よりも…殺意を感じるけど…!」
中の世界でも人間以外の生物は居る。
とっても可愛い見た目の良く分からない生物だが、この兎は血のように赤い。
「樫妻先輩…なんで、綱川さんは…一瞬で…」
「…多分僧侶としての能力によるものだろうね…!簡単に言えば…割合攻撃…的な?」
「…じゃあ、即死は無いけど戦闘不能には一瞬でなりますねぇ…」
「………そうだね…!」
すると、元奏恵ちゃんは鳴き始める。
分裂するように増えていく。
「キュイ…!キャイヤ…!」
「何これ…!嘘でしょ!」
「何体も何十体も!?」
「3桁いくんじゃないかな!」
逃げる暇など与えられず襲い掛かってくる。
「うわぁ…!?」
既に2人もいない。
この状況で、何百体もいて、今尚増え続けている。
「輪廻(中)…!」
「隼(中)…!」
「月面斬り(中)…!」
「洗脳(大)…!」
「霹靂の剣(大)…!」
「死線誘導・乱舞(大)……!」
一匹一匹はサルより少し強い程度だが、サルよりも倍の数がいる。
それに全く減らない。
「噛み付いてくる…!この…!」
「多分、これはあれだね…!最初の1体しか能力使えないんだ…!」
「だから、噛み付くんですね!月影(中)…!」
「正義の神罰(大)…!最初の1体なんて分かるはずないじゃない…!」
こんなにも、戦っているのにも関わらず減らない。
「ッチ…!死線誘導・殺戮(大)…!」
「氷帝の剣(大)…!………終わんないですよ!これ…!」
「黒の一閃(小)……っ!奏恵………!」
「悪夢殺し(中)…!なんで奏恵ちゃんがモンスターになったの…!?」
「分かんないよ…!そんなの…!」
それでも考えられる事は、あの瘴気に侵されたせいだ。
死んだから取り込まれたのか、死ななければ取り込めないのか。
それは分からないが、今、そんな状況じゃないのは確かだろう。
それに、光ちゃんの姿が兎によって見えなくなっている。
「月桂(大)………!はぁ…はぁ………!」
智花ちゃんも予想外の出来事に混乱している。
それでも刃は止めていない。
「黒の一閃(小)…………この…!邪魔しないで………!!」
死線で攻撃してもその間から更に兎が溢れてくる。
「輪廻(小)……終わんない…!」
武器生成でナイフを生成しても、兎が一度でも噛み付けば直ぐに壊れてしまう。
「ううううあああああああ…!」
叫び声が聞こえた。智花ちゃんの方だ。
「智花ちゃん!」
香露音はすかさずに其方に行った。
足を噛み砕かれたようだ。
一度噛み付かれたら、もう…終わりだ。
「正義の審判(大)………!」
香露音はそこに行こうとしても大量の兎により全く進めない。
肉の、骨の断ち切る音が大きく響いていく。
「キュイ…?……キャキャキャキャ…!キュウ…キュウ!!」
緋色は血に濡れた歯を見せるように笑っているように見えた。
「この………!!!!」
「駄目…香露音…!」
しかし、怒りに身を任せた香露音は聞こえていない。
「騎士式・紅楼の鉄槌…!!!!!」
沢山の兎がバラバラになって死んで消えていく。
しかし、ブーストとしては不完全だ。不完全な力は負担が大きい。
「香露音!!!お願い…!!!私の話を聞いて!」
夏希が叫ぶ。
鶴ちゃんと緋色が夏希を守る様にして兎を殺した。
「夏希…まずは自分の身だよ…………!」
「…まだ…何とかなるかも…しれません………香露音先輩を……信じましょう…………」
辛そうに言う。
(そんな事を後輩に言わせるなんて…私は………まだ無力だった…!)
「絶対に!!!何で…!!!!殺すの!」
香露音の声が小さくなっていく。
「何で……!また……殺すの………!!!!」
血が辺り一面に飛び散った。
「香露音!!!」
また一人死んでいく。
幾ら減ったのだろう。
兎をあれ程殺した筈だ。
確かに減った。見た目は減っている。
真っ白から少し地面の色が混ざっている程度に。
少しずつだが、増えていく量が減っていっている。
「………ううううぅ……!!!!!!!」
「鶴ちゃん!!!!!!!!」
また死んでいく。
今度は延命されることも無く、首を噛み切られた。
首の肉を噛みちぎったと言ってもいいだろうか。
「死線誘導・乱舞(大)………!」
一気に兎を殺したが、別の兎に死線を噛み切られて、死線が切れてしまった。
「武器生成(中)……!」
急いで死線を作る。
しかし、耐久性も悪くなっている。
時間が無い。
自身の持久力もこのままじゃ保たない。
「先輩!栄光の剣(中)…!」
徐々に集中力が切れ始め、春斗に助けられてしまった。
「大丈夫ですか…!しっかりしてください!」
「ごめん。………後輩に言われちゃあ…しょうが無いね…!!」
まだ、自分が生きている。
戦わなければ、それこそ全滅だ。
折角、時が戻り世界をやり直した。夏希を取り戻した。
その果てが、誰も生きてないなど…あってはならない。
「ご…め……………」
「………な…つき………!」
緋色の目の前で夏希は食われていった。
今までの苦労は何だったのか。
今までの絶望は何だったのか。
今までの……今までの…
1時間位は簡単に経っている。減らない。全く…減らない。
何で、こうも希望を壊してくるのだろうか。
「はぁ………!はぁ………!クソ!クソ!!!」
緋色は叫ぶ。既に息が絶え絶えだ。
「もう…僕達二人だけですね…!はぁ………はあ…減りませんよ…!全く!」
2人は背中を合わしながら戦っている。春斗も背中を気にしながら戦える気力がない。
「また…守れなかった………!………もう…来ないで!」
死線であまり殺せなくなった。ナイフでチマチマと殺していく。
兎のせいで腕が血に濡れている。
「まさか…こうなるなんてね…!!!英炎の剣(大)…………!」
春斗も息が荒い。2人とも限界になってきている。
「はぁ…!はぁ………!そろそろ…私が限界なんだけど…!?このままでは…終わらせ……!」
すると、春斗が叫ぶ。
「ウワアアアアアア……!」
「春斗…!?」
春斗は腕を食い千切られている。更に、左脚もズタズタだ。
「春斗!!!!!!!この!!!!」
春斗を庇うように兎を殺していく。
「や………やらかしました。アハハハ……………もう…戦えません………」
痛みを我慢しているのか、苦しそうな声で言う。
「そんなの……!!!!」
「…お願いがあります。僕を………」
春斗の声は小さ過ぎて最後の言葉を聞こえなかったが、何を言っていたかすぐに分かった。
「今回みたいにはなる保証なんて…!」
たまたまだった。ほんの偶然で夏希の存在を代償にした。
ほんの偶然で世界をやり直した。
次は?
偶然で同じ事が起きるのか?
夏希を忘れていたように…春斗も忘れなければならないというのか?
「…樫妻先輩には悪いですが………でも…かけるしかありませんよ。樫妻先輩なら…どうせ誰よりも早く思い出してくれるんでしょう…?」
春斗は微笑む。緋色だから言える事だ。
緋色はそれが分かっているから、春斗の言う事を反対出来ない。
「ホント…そういう所嫌い……………」
声が聞こえる…
「あ~あ。また死ぬよ。ハハハッ!コイツをも殺すのか?フン。どちらにせよ…此奴は死ぬさ。何をしても。」
前回とは違い偉そうだ。この声は…きっと…
…いいや、今はそれどころではない。
「………私にまた背負わす気ね…」
それでもやる事は1つだ。
「で?如何するんだ?無様に生きる方法を取るのか?その先にちゃんと未来が存在しているとは限らないぞ?今のようにな。」
ああそうだ。そんな事、知ってる。
それは、声の主であるお前だって分かっているはずだ。
「決まってる!私は…大事な後輩を…!春斗を!殺して力を得る!」
「アハハハハハハ!最高だよ!さぁ、次はもっと上手くやるといい。」
緋色は黄金に輝き始めた。
「来いよ!こんな時にはお前が一番だろう!なぁ声の主よ、第四位の尊大の緋色!」
真名を持った精神世界の緋色と繋がる。
「さぁ…全部殺してやる。…私に殺されるのを…!有難く思え!」
何回も何時間も戦い続けた。
新しい太陽が登ると大地と緋色は真っ赤に染まって緋色だけが生命を唄っていた。
「アハハハ………本当に…私は何でこうも弱いんだろ…」
世界が割れ始める。
「本当にゴミだよ…この世界は…私が…戦い終わってから…世界が崩れるなんてさ…もうこんなにも疲れたのに。…………ごめんね…皆………また…守れなかった…」
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