ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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弐章・選ばれし勇者編

2-11 43 香露音視点 怒りの制裁

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5回戦がもう始まった。

なんと早いことだろう。

もう直ぐで10人に絞られる。

世界が変わり木々が生い茂った。森林の世界だ。

さっきから対戦相手が気持ち悪く感じた。

アナライズで分かったが相手はドラゴンスレイヤーのようだ。

(…私を…舐めてる……?)

既に勝っている顔をしている。

物凄く腹がたつ。

香露音は気付いた。

(もしかして…緋色の対戦相手…?)

あの時の緋色は冷静さを失っていたのか、ブチ切れ状態だった。

そう考えると…簡単にはいかなそうだ。

「……お嬢さんからどうぞ。」

黄ばった歯を見せて笑う。

「…遠慮なく。隼(中)…!」

素早く斬り込んで行くが、いとも簡単に防がれる。

「ハハハ!その程度か!閃律(中)!」

「グッ……!」

重い一撃を食らう。

武器生成で盾を作ったが一瞬で壊れた。勿論唐傘も張っていた。

こんな奴に緋色は圧勝していたのか。

しかし、だからといって負ける訳にはいかない。

この人は一体何人、人を弄んだのだろう。

そう思う度に沸々と湧き上がる。

「縮地(中)!」

この一瞬の速さについてくる。

「その眼…良い…!もっと楽しませてくれやぁ!龍神之破(中)!!」

少しでも剣に当たると壊れてしまうだろう。

(これ…!買ったら重装備一式買える位に高い物何だけど!そんなにいい剣なのに…!)

ビリビリと衝撃波に当たり体中が激痛が走っていく。

「……はぁ!電光石火(中)!」

「鎌鼬(中)!」

受けた傷があと数cmずれていたら致命傷になっていただろう。

「おい!もっと頑張れよ!俺は、自分が強いと思っている奴を捻り潰すのが大好きなんだよ!ハハハハハハ!」

(この野郎……!めちゃくちゃ腹がたつ…!)

「…何人、そうやって人を愚弄してきたの…?」

「そいつらはつまんねぇ奴らだったからなぁ…数なんて覚えてねぇよ!ハハハハハハハ!龍神之剛(大)!」

大地が破壊される。

その中に呑まれると絶対に勝てない。

(なんて威力…!)

大地でさえも香露音の味方にはならないようだ。

大地が、木々が…香露音の方に潰しに行っている。

「縮地(小)!」

タイミングを図り、ドラゴンスレイヤーの元に飛ばしていく。

「縮地(中)…!」

もう一度加速させた。

「隼(中)!!」

剣と剣の音が鳴る。火花が飛び散る。

(開始してから30分くらいでやっと刃が届いた…!)

しかし、ダメージは与えられていない。

「こんな温い攻撃で…倒せる訳が無いだろ!もっと足掻いて見せろよ!それとも………俺に無様に殺られるか!?今日のカス共の様にな!グハハハハ!」

物凄く腹がたつ。

これで負ければ笑い物だ。

正義は勝たなければ意味が無い。

だから香露音は勝たなければならない。

「正義の神罰(大)!」

ドラゴンスレイヤーに直撃した。

「…これで、掠り傷って…本当に…!」

「こんなんで制裁出来ると思ってるのか!舐めてんな!龍神之破(大)!」

思い切り吹き飛ばされた。

(このままじゃ…負ける……!)

残りのライフは半分を切っている。

相手は嗤っている。

(ああ………私って……)

第三者から見れば今の香露音は無様な姿を晒していることだろう。

なんとまあ…無様に負けるのか。

(…思い出して……!)

思い出せ。

かつての屈辱を。

思い出せ。

自分の無力さを。

思い出せ。

自分の正義を。

弱者を甚振るのは果たして正義と言えるのか。

そんな訳が無いだろう。

正義が勝つ。

当たり前だ。…何故なら、勝者だけが正義だから。

敗者が正義を謳っても何人も響きやしない。

だから、正義を謳っているのであれば香露音は勝者で居続けなければならない。

助けられなかった。

夏希を助けられなかった。

(私が…!アレと対等に戦える力があれば…!)

世界は戻る必要は無かった。

緋色が夏希の存在を引き換えにする事は無かった。

今…香露音は正義を遂行していない。

悪だと言ってもいい。

「アッハッハハハハ!その程度か!弱いなぁ!その程度の力で、外の世界に通用すると!思ってるのか!…実に滑稽な事だ!」

ああ………今すぐに……

殺意が湧く。

図星を突かれて反論出来ない。

腹が立つ。

許せない。

自分が許せない。

「お嬢。お前はパパとママに姫の様に育てられて引っ込んでいな!」

緋色は…どう戦っていたか。

草刈りの作業の様に殺していた緋色を思い出した。

(初めてね………こんなに怒りが湧いたのは。怒りを通り越して殺意が大量発生してるわ…)

「何だ…?もう直ぐで負けると察して…何も言えないのか?」

ああ………鬱陶しい。

死ねば良いのに。

「…………いい…」

「ああ?」

「もういい。もう…分かった。」

「何処が分かったんだよ!言ってみろ!」

「もう…黙りなさい。こういうのなんて言うんでしたっけ。…ああ…そうそう。虫唾が走るって言うんですよね…」

「ハッ!口だけはご立派だが、それに見合う実力はあるのか?ああん!?」

「燃えたわ。絶対に……勝つ。いや……こういう時は…………殺すって言った方が合ってるわね…!」

殺意を纏い、怒りに身を任せる。



私を否定した人間を、言葉を。

全部否定して戦え。

弱者に我が身を堕とした自分を恨め。

正義は勝つ。

それを、証明してみせろ…!私!



「正義の審判(大)!」

森林が更地になる程の大きな爆発が起きた。

彼は死なない。

どうせ死なないだろう。

爆風の中に自ら突っ込んでいく。

精神世界の自分と繋がる気配は無い。

何故なら、私と精神世界の私は同等だから。

偽った事など一度も無い。

だから…この憤怒の感情さえ隠さない。

「フハハハ!良いぞ!少しは楽しませてくれや…!輪廻(中)!」

笑えない程にズッタズッタにしてしまおう。

輪廻を避ける。

下から上に向けて剣を突き刺す。

「閃律(小)…!」

先ずは右肩を負傷させる。

「ッウ…!龍神之矢(大)!」

銃弾の速さで香露音に向いて発射される。

「縮地(中)…!」

ギリギリで避けた。

もっと速く。もっと強く。

そうしなければ勝てない。

正義を謳えない…!

空中で電光石火を発動させる。

「輪廻(小)!」

「唐傘(小)!」

攻撃が入らない。許せない。悔しい。

後ろに下がり次の攻撃に構える。

「私を………馬鹿にした………罪は…重いわよ…!!!!縮地(中)!」

「斬鉄剣(大)…………なっ…!」

ドラゴンスレイヤーの一歩手前に行き、もう一度縮地を発動させる。

相手は誰を居ない場所で発動させている。

「はああ!!!」

そのまま剣を構え突撃する。

綺麗に心臓に刺さった。

怒りをぶつけてしまえ…!

「この…野郎…………!」

「正義の……!神罰(大)!!!!!」

胸に穴が空いた。

「ガ…………」

倒れると共に世界が元に戻る。

「勝った…!」

嬉しさが湧き上がるが、それよりもやる事がある。

「…ねぇ。」

「…ッチ。なんだよ。」

「…………弱い者虐めは…駄目ですよ。」

すると、首を捕まれ空中に浮いた。

「五月蝿え!何が悪い…?」

「グゥ………それは………弱者が強がっている様が……見るからに滑稽だからです。」

「何だと!」

このまま大地に叩きつけられた。一瞬、意識が飛びかけた。

頭を強打した。

しかし、決して屈した顔にはならない。

「このまま、俺が能力を使ったら……お前は…死ぬぞ?」

要は謝れと言いたいのだろう。言わばだ。

「それは、貴方も。」

武器生成を使い銃を生成した。

緋色に脅しだけでもと練習させられた。

勿論、玩具ほどの威力で、殺傷能力は皆無だ。

ドラゴンスレイヤーは驚いている。

「フフ…脳天ぶち抜かれたい?」

「出来ると思えねぇな!」

躊躇いなく引き金を引いた。

ズガン!

音は立派だ。重低音が響く。

しかし、BB弾よりもしょぼい威力だ。

しかし、脅しには最適だった。

腕を離して尻餅をついている様は滑稽だ。

「て、てめぇ…!」

「勝手に本物だと思って、ビビったのは貴方の方でしょう?だから言ったの。弱者が威張ってるとそれはそれは滑稽だってね。負け犬の遠吠えはおよしなさい。」

髪を払いその場を立ち去った。

もうスッキリした。

言い方は悪いがザマァ見ろと言ったところか。

胸を張って歩く。



私には、この姿勢が。この自信が。この正義が一番似合っている。

私以上に似合わない人など存在させない。
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