ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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序章・対の戦い編

1-2 2 緋色視点 開眼した夏希

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何か騒いでいる。

どうやらブレインダイブを得た人がいるらしい。

「誰?…面倒い能力持ってんの…」

そうぼやきながら、教室を出ると誰かすぐに分かった。

(よりにもよって…同じ部活の人…)

香露音が夏希に対して話しかけているのが見えた。

「嘘じゃないみたい…開眼…私って何時するんだよ…」

夏希にアナライズをかける。間違い無い。

悟られないように一瞬で消した。

(精神世界って、心の中みたいなものだよね。ちょっと違うみたいだけどさ。まあ、似てるし…私が思ってる事バレそうだなぁ。)

しかし、本人はそんな事は言ってない。何だったら遠回しに否定している。

だから、あまり気にしていなかった。

しかし、一週間経ったあとに緋色の精神世界に入りたいと言われたときは、他人事では済まされなかった。

思い切り否定してやろうと思ったが、それはそれで好奇心をそそってしまいそうだ。

「緋色の世界、覗いてもいい?」

「ん~?何で…?」

急にどうかしたのか…と思いつつ聞いてみる。

「えっとね…見てみたいの!部活の皆見てて、緋色はどんな世界なんだろうって!」

と言った。ついでに試してみる。

「やめときなよ~頭おかしい世界だろうから夏希がおかしくなっちゃうよ。」

緋色はケラケラと笑う。

そしてこう思う。

(絶対に頭おかしい世界だろうけど。ね。見せたくないんだよなぁ。どうする?強制的に入られたら。ん~…殺すか。)

すると今までの夏希の笑顔が嘘のように消えて引き攣っている。

緋色は確信し、

「どうしたの~?じゃ、後でね~!」(やっぱり覗いてるんだね。勝手かワザとか知らないけど…入ってこないでね。)

と念入りに言った。

これで入ってこない訳では無いと思うが。

絶対に入って来る。

緋色は家に帰って練習している。もっと早く能力を使える為だ。

「今日部活を休んでるんだから。今が入る好機なんだろうな。電光石火(小)。」

音を置き去りにして、一撃で小さな物を吹き飛ばす。

「壊れてない…良かった。いちいち壊してたらキリがない。」

すると、急に悪寒が走った。体の奥底から恐怖の感情が湧く。

「来た…!教えられなくても分かってるっつうの!」

しかし一瞬だけだった。今出たのか、まだ居るか分からない。

「どうせ、見ても分かんないって。私の気持ちなんてさ。」

緋色は得れる全ての能力を得ているが(小)と呼べない程の威力しかない。

やはり、能力者と無能力者の弊害が見て取れる。

「ん~~~~…頑張って、資格取る…?あいつもいる事だし。」

あと1ヶ月で、試験がある。

そこで良い成績が取れば、資格が取れずとも次が有利に進む。

資格というのは、武器の武装が認められる物だ。

これさえあれば、外に出れる。

あのうじゃうじゃいる気持ち悪い化物がいるらしい場所に。

それらの素材を回収すれば、ある物は武器の素材に、ある物は薬草に、ある物は燃料になる。

これを売って金にすれば、そこらの職業より貰える。

それを学費に回したい。

危ない世界だとは、分かっていてもやはり背に腹は替えられない。

「買いたい物があり過ぎて困るね!縮地(小)!」

一瞬の内に移動した。

縮地と電光石火は似ている。

縮地は突進するだけだが、電光石火は横に移動する。

Z字のように動く感じだろうか。

「はぁ………休憩しよ。散歩、散歩~」

と、家を出ていった。

10分程歩いていても、全く代わり映えの無い田舎だ。

帰ろうか…と緋色が引き返そうとすると、

「やぁ…そこのネーチャン。」

と見るからに怪しいおっちゃんに出くわしてしまった。

「何ですか?」

「一緒に美味しいやつ食べようぜ~!奢るからな!な!」

「俺ら暇なんだよ~!」

「拒否します。」

緋色は帰ろうとしたが、引き留められる。

(うっわーーーーーー)

既に嫌な予感がする。

「どうしても嫌なら…決闘するかぁ?」

(うっわーーーーーー…)

今現在嫌だ。

「弱者虐めて楽しいですか?」

「勿論だ。」

(うっわーーーーーー…!サイテー)

緋色はドン引きしている。

「決闘するか誘いを引き受けるか。」

緋色は舌打ちをする。

「決闘で。」

どうしても嫌なので、決闘を選ぶ。

「ブレインコネクト!」

決闘…ある一定のライフを削り取る事で勝敗が決まる。

大体アナライズで防御数値と体力数値でライフは分かる。

緋色は1200。人と比べても大分少ない。

普通にブレインダイブ持ちの夏希に負けている。

(あんまり体力増えない能力何だけどなぁ…それでも負ける…)

それに比べ、相手は4000程。

あまり勝てると思えない程の強さだ。

そして、これは精神世界に似た世界で戦うので、終わった後の怪我が無い。

ついでに決闘を申し込める時点でまあまあ強い。

それだけで、資格を取るのに有利になる。

「始めるか。」

「どうぞ。」

コングがなる。今回の決闘は1on1スタイル。

ついでに三人版や多くて百人もある。

緋色は弱いので種類によって戦い方を変えなければ全く勝てない。

「こちらからいかせてもらう。縮地(小)!」

おっちゃんの方に一瞬で突っ込んで行った…と思いきや、実際は電光石火だ。

「なっ…!グフッ!」

一撃入ったが削れたのは100程。

「チッ…簡単には削れんか…面倒…」

緋色は作戦を変える。

「武器生成(小)…!行くぞ…隼(小)!」

剣を生成し、素早く切り込む。

「武器生成が出来るのは褒めてやるが、その程度じゃすぐ壊れるぜ!斬鉄剣(中)!」

(ヤベッ!)

緋色は体勢を無理に変え受け流す。

(こいつ!武器を壊す事が得意な能力者…!)

「ブレイカーだったんだな!初めて知ったよ!」

緋色は横に移動して、何回も攻撃に転じる。

「隼(小)!縮地(小)!輪廻(小)!閃律(小)!」

輪廻は回転斬り、閃律は突き攻撃。この2つはマイナーであまり使う人がいない。

「鬱陶しいの!閃律(中)!」

「ガハッ…!」

(こいつ…普通槍でするやつを拳でやんのかよ!しかもこの威力…!)

自身が残り800。相手が残り3300。

(大体能力使って当たってる割合が今の所五割…無理がある。)

既に緋色は息切れをしている。

「もう降参か?ハッハッハ!」

「ついていくのは反吐が出るので諦めません。」

「あ゙?」

ブチ切れているようだ。

(さて…どうしたものか…)

「てめぇ…調子乗り過ぎだな…舐めると痛い目あうぜ!五月雨式金剛之旋律!」

(こいつ資格持ってるレベルだ!ブースト使いやがった!)

ブースト…簡単に言えば必殺技の様な物。

このブーストさえ使えば、ブースト持ちでない能力者は七割は倒せると言われている。

あまりの速さの連撃で大量の槍が降っているように見える。

かするだけで100程削られた。

「チッ…!電光石火(小)!」外側に逃げるがすぐに追いつく。

何回も電光石火と縮地を使いながら必死に逃げる。

ギリギリ受け流せるが、本当に危ないときにしなければせっかく作った剣が壊れてしまう。

ちゃんと防御の能力を使っている状態で。

バリン!

ガラスのように剣が割れ、粉々に砕け散った。

「ウグゥ!」

お腹に刺され、抉られる。

残りのライフは100。

「終わりだな!フハハハハ!」

「フゥ…ゴブッ…!ゲホ…やっと終わった…」

「そうだな。あれを耐えたのは褒めてやるが…」

「五月蝿ぇよクソジジイ。何でお前みたいなやつと行かなきゃなんねんだよ。」

緋色は必死に手を敵に向ける。

「死ね。」

「鎌鼬(小)…!」

最後の力を振り絞り両肩を斬りつける。

しかし、全く効いてない様子で減速すらしない。

(負ける………!)

「そこまでです。」

声が聞こえると、世界が割れ、元の世界に戻った。

「強制…終了…?そんな事出来る人って…!」

「朱い流星…」

朱い流星と呼ばれる人…この二つ名を持つ事が出来る人だけが決闘を強制中止できる。

勿論、二つ名を持つなど決して簡単ではない。

「貴方がナンパしているところから全部見てましたし、録音録画もしてます。…まだ続けるならどうぞ。」

「調子乗んなよ小娘が!」

手を出すが、いつの間にか倒れている。

「お~…一瞬で投げ飛ばした…多分。」

「見逃そうと思いましたが止めですね。で。そこの貴女。気持ちは分かりますがちょっと馬鹿だと思います。」

「でも嫌だし~…」

「気持ちは分かりますが!」

「すいません…」

「しかし、珍しいですね。無能力者で誰でも使える能力が片っ端から使える人。」

「それしか出来ること無いんで。」

「だからあそこまで戦えたんでしょうし。ま、そこは褒めときます。自分を認めれる人間が能力者になれますよ~」

「あ、ありがとう御座います…」

そうして朱い流星は去っていった。ゴミのようにおっちゃんを引き摺りながら。

「ちょっと痛そう…まぁ、いいか。結果オーライか…」

大分時間が経ったようだが、もう出ていってくれただろうか。

精神世界の緋色は夏希を追い出してくれただろうか。

(ねぇ…夏希。私を見ないで…本当に見ないで…これが本心なの気付いて…)
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