17 / 86
第一章
17.危機回避③
しおりを挟む「そうだ。メアリー嬢は友人でなくても、気の許せる相手はいますよ」
「気の許せる相手、ですか?」
「兄上のことです」
フリップ様は『自分が気づかせてあげた!』とでも言いたげで誇らしげだった。可愛い。
確かに気の許せる一番の相手はカシスだけれど、彼は友人である。
え、フリップ様の目には私とカシスが友人と見えていない? 私の一方通行だと思われているのだろうか。
もしかして、お前に兄はやらないぞという牽制かもしれない。
「違うのですか? メアリー嬢は兄上のこと、好きじゃない……?」
「も、もちろん好きです!」
「やっぱり! 両想いだ!」
嬉しそうに話すフリップ様が可愛くて眩しくて、話の内容が頭に入ってこない。
「でも私はフリップ様のことも大好きですよ」
「え……え⁉︎」
ついついフリップ様に対する熱い想いをぶつけてしまう。
フリップ様はあまり好きと言われたことがないのか、顔を赤くして照れていた。
「だけどメアリー嬢は兄上と同じ耳飾りをつけて……」
「これですか? これは誰よりも仲の良い証です」
そう。これは一番の友人である証だ。
「ふふ、本当に二人は仲良しよねえ」
その時、背後から声が聞こえてきて振り返ると、キャロル様の姿があった。
(今の言葉って……推しと私に向けてのものよね⁉︎)
あまりの嬉しさに、思わず頬が緩む。
「キャロル様にそう仰っていただけて嬉しいです」
「何を言っているの。私も旦那様も二人の仲を認めているわよ」
「ほ、本当ですか⁉︎」
それって、友人以上になってもいいという解釈でいいのだろうか。
「ええ。いつ一緒になるのか、二人が出会ってからずっと気になって仕方がなかったわ。二人とも奥手なんだから……まあ、本当は私の息子がもっと積極的にならないといけないんだけれどね」
キャロル様はフリップ様に視線を向ける。
フリップ様は目をキラキラ輝かせており、頷いていた。
(もしかしてフリップ様はすでに……私に惹かれている……⁉︎)
これは母親に背中を押されて、私に告白するパターンではないだろうか。
けれどあまりに突然すぎて、まだ心の準備ができていない。
「ですがまだ成人を迎えていません。歳の差もありますし……」
私の方が二年早く成人になってしまうのだ。
カシスが成人になった途端に距離を感じるように、フリップ様とも同じ状況になるかもしれない。
それがきっかけにすれ違いも考えられるため、それならフリップ様が成人になるまで待った方が…‥とも思う。
「二歳差なんてたかがしれているわ。距離を感じるのは今だけよ。大人になればなるほど気にならなくなるものよ」
「そう、なのですが……」
「けれど、そうね。それが不安要素なのだとしたら、成人まで待つのも一つの手かもしれないわね。貴女にとても惚れ込んでいるもの、心変わりなんてするわけないでしょうし」
フリップ様はそこまで私に惚れ込んでくれているの……⁉︎
全く気づかなかった……推しを見極められないなんて、私もまだまだである。
「じゃあ、あの……成人を迎えたら、私たちは一緒になってもいいのですか?」
まずはフリップ様に惚れてもらうことに重きを置いていたため、両親や公爵夫妻の説得は後回しにしていた。
しかしこの様子だとすでに認めてくれているようだ。
「もちろんよ。いつでも待っているわ」
「あ、ありがとうございます!」
公爵夫妻に認められた!
きっと今のやり取りでフリップ様に対する想いも本人に伝わったことだろう。
少し緊張しながらフリップ様に目を向けると、フリップ様は少し頬を赤らめながらも嬉しそうに私と目を合わせてくれた。
まさか私たち両片想いだったなんて!
「あと四年、私も絶対に心変わりなんてしないと誓います! 年齢の壁などすぐに乗り越えてみせますね!」
あとは私の両親に認めてもらうだけだ。
こうして私は中に戻る。
「あの子、あと四年って言わなかった……? きっと聞き間違いよね」
そんな公爵夫人の呟いた言葉は、私の耳に届くことはなかった。
450
お気に入りに追加
1,507
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!
高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
Wヒロインの乙女ゲームの元ライバルキャラに転生したけれど、ヤンデレにタゲられました。
舘野寧依
恋愛
ヤンデレさんにストーカーされていた女子高生の月穂はある日トラックにひかれてしまう。
そんな前世の記憶を思い出したのは、十七歳、女神選定試験が開始されるまさにその時だった。
そこでは月穂は大貴族のお嬢様、クリスティアナ・ド・セレスティアと呼ばれていた。
それは月穂がよくプレイしていた乙女ゲーのライバルキャラ(デフォルト)の名だった。
なぜか魔術師様との親密度と愛情度がグラフで視界に現れるし、どうやらここは『女神育成~魔術師様とご一緒に~』の世界らしい。
まあそれはいいとして、最悪なことにあのヤンデレさんが一緒に転生していて告白されました。
そしてまた、新たに別のヤンデレさんが誕生して見事にタゲられてしまい……。
そんな過剰な愛はいらないので、お願いですから普通に恋愛させてください。
逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
*****ご報告****
「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。
****************
サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました!
なろうでも同じ話を投稿しております。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。
婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。
それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。
そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。
※王子目線です。
※一途で健全?なヤンデレ
※ざまああり。
※なろう、カクヨムにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる