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第一章
16.危機回避②
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「お元気でしたか?」
「俺はこの通り元気です!」
私の質問に対して元気アピールをするフリップ様はまだまだ幼くて可愛い……この笑顔を守りたい。
「フリップ、どうしたんだ?」
「あ、母上がそろそろご飯にするから二人を呼んできてほしいと言われたのです」
「そっか。すぐ向かうって、母上たちに伝えておいてくれる?」
てっきり一緒に向かうのかと思っていたが、フリップ様は先に行ってしまう。
少しはフリップ様との関わりが増え、認知はされているけれど、恋愛関係になるまでは程遠い。
フリップ様に一目惚れされている気配もないし……このままではいけない。
「メアリー? フリップが気になるの?」
私が名残惜しそうにしていたのか、カシスに指摘されてハッと我に返る。
「ううん、なんでもない。私たちも行こう」
カシスと二人で家族のいる場所へと向かう。
「あらメアリー、その耳飾りはどうしたの?」
「カシスがプレゼントしてくれたんです。どうですか?」
「とても可愛いわ」
お母様は私を見るなりすぐ耳飾りの変化に気づいた。
お母様だけでなく、周りも絶賛してくれて嬉しい。
あとやけにニコニコしていたけれど、何かあったのだろうか。
気になったけれど、今はそれよりカシスの成人祝いを楽しむことにした。
「フリップ様」
「あ、メアリー嬢」
最初はカシスと一緒にいたが、彼がヴィクシム公爵夫妻と私の両親に捕まってしまい、一人になった私はどさくさに紛れてフリップ様の元へと向かう。
フリップ様はバルコニーで外の空気を浴びており、格好つけているような姿がとても愛らしかった。
本編の姿に近づいているとはいえ、まだまだ幼い子供。
これから成人までの四年間で、私の好きな推しの姿へと変わるのだ。
「どうされたのですか?」
格好つけているのかと思いきや、フリップ様の表情が少し暗いのが気になった。
「……兄上がすごいなと思っていたんです」
「え……」
「俺の自慢の兄上だし、尊敬しているけど……たまに、兄上と比べてちっぽけな自分が嫌になります」
それは完璧なカシスに対する劣等感と少しばかりの嫉妬だった。
フリップ様はカシスを心から慕う一方で、負の感情と闘っている……なんて尊いのだろう。
人間味があってますます好きになる。
「そんなことありません。フリップ様には素敵なところがたくさんあります」
推していたからこそわかる。
「本当に?」
「はい。フリップ様はとても家族想いでいらっしゃいます」
それこそ家族を殺されて復讐し、乗っ取られた家を取り戻そうとするくらいに。
大切に想っていなければ、あそこまで行動できない。
「ご家族に対する気持ちが私にまで伝わってきます」
「そう……かな」
「あっ、カシスが好きっていうのも、しっかり伝わっていますよ」
「なっ……そう、ですが」
少し恥ずかしそうにしているフリップ様、とても可愛い。
今すぐ「可愛い!」と言って抱きしめたいところだが、変態認定されそうで我慢する。
「それから親交深く、ご友人がたくさんいらっしゃるところも素敵です」
それこそ、友人がたくさんいすぎて中々会えないぐらいに。
「友人が多いところが素敵なのですか?」
「それは簡単にできることではありませんよ。実際、私も今たくさん貴族の方と交流していますが、中々気の許せる友人ができません。なので私は、相手を惹きつける魅力がたくさんあるフリップ様が羨ましいです」
私も女友達が欲しいのに、これがまあ難しい。
腹の探り合いだったり嫉妬のし合いだったり……クラスタ以外に心の許せる友人は正直いない。
「それもフリップ様の素晴らしいところですよ」
「言われないと案外気づかないものなんだ……」
新たな発見をした様子のフリップ様を見て頬が緩む。
私の言葉を聞いて元気をもらったフリップ様……まさにヒロインの言葉に救われたようなもの。小説の展開と同じである。
「俺はこの通り元気です!」
私の質問に対して元気アピールをするフリップ様はまだまだ幼くて可愛い……この笑顔を守りたい。
「フリップ、どうしたんだ?」
「あ、母上がそろそろご飯にするから二人を呼んできてほしいと言われたのです」
「そっか。すぐ向かうって、母上たちに伝えておいてくれる?」
てっきり一緒に向かうのかと思っていたが、フリップ様は先に行ってしまう。
少しはフリップ様との関わりが増え、認知はされているけれど、恋愛関係になるまでは程遠い。
フリップ様に一目惚れされている気配もないし……このままではいけない。
「メアリー? フリップが気になるの?」
私が名残惜しそうにしていたのか、カシスに指摘されてハッと我に返る。
「ううん、なんでもない。私たちも行こう」
カシスと二人で家族のいる場所へと向かう。
「あらメアリー、その耳飾りはどうしたの?」
「カシスがプレゼントしてくれたんです。どうですか?」
「とても可愛いわ」
お母様は私を見るなりすぐ耳飾りの変化に気づいた。
お母様だけでなく、周りも絶賛してくれて嬉しい。
あとやけにニコニコしていたけれど、何かあったのだろうか。
気になったけれど、今はそれよりカシスの成人祝いを楽しむことにした。
「フリップ様」
「あ、メアリー嬢」
最初はカシスと一緒にいたが、彼がヴィクシム公爵夫妻と私の両親に捕まってしまい、一人になった私はどさくさに紛れてフリップ様の元へと向かう。
フリップ様はバルコニーで外の空気を浴びており、格好つけているような姿がとても愛らしかった。
本編の姿に近づいているとはいえ、まだまだ幼い子供。
これから成人までの四年間で、私の好きな推しの姿へと変わるのだ。
「どうされたのですか?」
格好つけているのかと思いきや、フリップ様の表情が少し暗いのが気になった。
「……兄上がすごいなと思っていたんです」
「え……」
「俺の自慢の兄上だし、尊敬しているけど……たまに、兄上と比べてちっぽけな自分が嫌になります」
それは完璧なカシスに対する劣等感と少しばかりの嫉妬だった。
フリップ様はカシスを心から慕う一方で、負の感情と闘っている……なんて尊いのだろう。
人間味があってますます好きになる。
「そんなことありません。フリップ様には素敵なところがたくさんあります」
推していたからこそわかる。
「本当に?」
「はい。フリップ様はとても家族想いでいらっしゃいます」
それこそ家族を殺されて復讐し、乗っ取られた家を取り戻そうとするくらいに。
大切に想っていなければ、あそこまで行動できない。
「ご家族に対する気持ちが私にまで伝わってきます」
「そう……かな」
「あっ、カシスが好きっていうのも、しっかり伝わっていますよ」
「なっ……そう、ですが」
少し恥ずかしそうにしているフリップ様、とても可愛い。
今すぐ「可愛い!」と言って抱きしめたいところだが、変態認定されそうで我慢する。
「それから親交深く、ご友人がたくさんいらっしゃるところも素敵です」
それこそ、友人がたくさんいすぎて中々会えないぐらいに。
「友人が多いところが素敵なのですか?」
「それは簡単にできることではありませんよ。実際、私も今たくさん貴族の方と交流していますが、中々気の許せる友人ができません。なので私は、相手を惹きつける魅力がたくさんあるフリップ様が羨ましいです」
私も女友達が欲しいのに、これがまあ難しい。
腹の探り合いだったり嫉妬のし合いだったり……クラスタ以外に心の許せる友人は正直いない。
「それもフリップ様の素晴らしいところですよ」
「言われないと案外気づかないものなんだ……」
新たな発見をした様子のフリップ様を見て頬が緩む。
私の言葉を聞いて元気をもらったフリップ様……まさにヒロインの言葉に救われたようなもの。小説の展開と同じである。
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