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預かり保育
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辺りがポカポカと温かくなった頃。
ママは忙しそうに朝の支度をしている。
“まあや”はキッチンの椅子に座りながらその様子を見ていた。
まあやの目の前にはママの手作りおにぎりが2つ並んでいて、どちらもすごく美味しい。
…でも、“これから”のことを考えると、どうしても憂鬱な気分になってしまう。
「まあや、今日も“お姉さんのところ”でいい子にしててね。」
……やっぱり。
予想通りの言葉をママにかけられ、さらに気分が落ち込んでしまった。
「ママ、…まあや、もう“あそこ”いやなの。…だって、あのおねえちゃん、いつもまあやにひどいことするんだよ?」
「まあや、……ごめんなさい。…他にお願いできる場所がないの。」
ママはまあやの横に屈んで、悲しい顔で見つめてくる。
「ママ、まあやひとりでおるすばんできるよ。…だから、おねえちゃんのところいきたくない。」
「本当にごめんなさい。……国の“決まり”があって、まあやの年だと長い時間1人にすることができないの。」
「……うぅ。」
まあやがぐずると、ママは申し訳なさそうな顔する。
…もう“行くしかない”流れとなり、まあやの目からは涙がひとしずく溢れ出した。
ギュウ
そんなまあやを、ママは優しく抱きしめる。
「グスッ…まあや、……ごめんね。」
……そんな“優しい”ママを、まあやは責めることができなかった。
・
「おはようございます。今日も、……どうか“お手柔らかに”よろしくお願いします。」
「……グスッ。」
おねえちゃんはお隣の部屋に住んでいる。
その玄関ドア前で、ママとまあやは2人並んで立っていた。
正直、ここが“嫌”という気持ちが隠しきれないまあやは、半泣きで俯いている。
「ほらまあや、お姉さんにご挨拶は?」
「……グスッおねえちゃん、…おはようございます。」
「…おはよう。」
その目の前には、まあやが“ぐずる原因”であるおねえちゃんが立っている。
…なんだか今日は少し不機嫌そうな様子だ。
「じゃあまあや、ママはお仕事に行ってくるから、…いい子にしててね?」
「ママァ…。」
まあやは離れたくないとでもいうように、ママにギュウッと抱きつく。
「大丈夫。…すぐ帰ってくるからね。」
「うぅぅ…。」
ママは優しくまあやから離れると、そのまま何度も振り返りながら、エルベーターの方へ向かっていった。
・
ガチャンッ
ママの姿が見えなくなり、まあやはおねえちゃんの部屋に入った。
相変わらず、薄暗いお部屋はまあやに恐怖感を与えてくる。
…同じアパートのお部屋なのに、なんでこんなに違うんだろう。
「まあや、さっきちゃんと挨拶できなかったよね?」
ビクンッ
そんなことを考えていると、こちらへ振り返ったおねえちゃんが、怖い顔で睨みつけてくる。
「お、おねえちゃん、…ちがうのっ!あれは……」
「…はぁ、……まあや、お尻。」
「は、はいぃっ!?」
“お尻”
その命令が聞こえた瞬間、まあやの身体は自然に動き出す。
急ぐように靴下とズボンを脱いで、クマさんの絵が描かれたパンツもズボンの上に脱ぎ捨てた。
今のまあやは下に何も履かず、気をつけの姿勢になっている状況だ。
少なくない時間をここで過ごして、逆らえば“どうなる”か、身体がわかっているから。
…そして、おねえちゃんは“いつものように”まあやを小脇に抱えると手にハァッと息をかけた。
バッヂィィンッ!!
「いっだぁぁいっ!?」
突然、まあやのお尻に突き刺さるような痛みが走る。
その痛みはだんだんとジンジンするものに変わっていった。
…これが、おねえちゃんを嫌いな理由だった。
いつもいつも、ちょっとしたことでまあやに“おせっかん”をする、このおねえちゃんのことが…
「…きらい。」
ギュッ
「いい゛っ!?」
「…いまなんか言った?」
まあやのお尻の今叩かれた部分がつねられる。
その鈍い痛みはまあやの目から涙を溢れさせるには十分だった。
「い、いっでないっ!!」
「そう、ならいいんだけど。」
パッ
ようやく、おねえちゃんの指がまあやのお尻から離れる。
「ハァッ…ハァッ。」
バッヂィィンッ!!
「ぎゃぁぁあっ!!」
まあやが肩で息をしていると、お尻を覆う大きさの平手が打ち付けられる。
1発目とは比べ物にならない痛みに、まあやはガクガクと震え出した。
「じゃあ、挨拶がちゃんと出来なかった“お折檻”、…続きしよっか。」
逃げたくても、がっちり掴まれた状態で動くことができない。
「とりあえず100回、打ち込むからね?」
100回…。
想像したくもない数字だけが頭に浮かぶ。
『ママ…、たすけてぇ……。』
お仕事に行くママの後ろ姿を思い浮かべる頃。
まあやのお尻には、無情な平手が振り下ろされた。
・
「グスッ…うぇぇんっ。おじりいだいぃぃっ。」
「…いつまで泣いてんの?」
あれから宣言通り、まあやのお尻には100回分の平手が振り下ろされた。
…いまは真っ赤に腫れ上がったお尻を押さえて、床の上にうずくまっている状態だ。
「聞いてるの?」
「だ、だってっ!?おじりいっだいんだもんっ!!」
こんなに真っ赤にされて、泣くなという方が無理な話だと思う。
ムカつく気持ちが押されられないまあやは、そのまま覗き込むようにおねえちゃんのことを睨みつけた。
「…まあや、今から泣き止まないことへの“お折檻”するから、こっち来なさい。」
「っ!?なんでそんなことでおせっかんなのっ!!」
「いつまでもグズグズとうるさいからよ。…ほら、はやく来なさい。今度は痣だらけになるまで叩いてあげるから。」
“うるさい”
…いい子でいるようにママに言われたまあやが頑張っておせっかんを受けたのに。
……その言葉がきっかけで、まあやの中にあった“何か”が爆発した気がする。
「もういやだっ!まあやもう“おせっかん”うけないっ!!」
気がついたら、まあやはお尻を庇っておねえちゃんに反抗していた。
でもおねえちゃんは、そんなまあやを悲しい顔で見つめる。
「…そう、じゃあもうあんたの面倒見るのやめるわ。……そしたら、あんたのママが逮捕されることになるわよ。」
「………え?…たいほ?」
「そうよ。ここら辺の保育園は空きがないし、一般の預かり保育は高額だから、あんたのママには頼む余裕がないはずよ。……だから、“無料”で面倒を見てあげるわたしに頼んでいるわけよ。」
「…なんで、ママが逮捕されるの?」
「だから、わたしがあんたの面倒を断れば、ママはあんたをどこにも預けられなくなるわ。…そうすれば、あんたを捨てるか、周りに隠してあんたを一人で留守番させるくらいしか出来なくなるのよ。」
「……。」
「この国には“3時間以上”子供を1人にしてはいけないって法律があるの。……わたしが、あんたが1人で留守番してるのを伝えたら、後は逮捕されて終わりよ。」
「………そんな。」
「……で、どうするの?…“お折檻はもう受けない”なんて生意気なこといってたけど、今すぐお家帰る?」
ママが“たいほ”される。
そう聞かされた瞬間、まあやの中にあった“ムカつく”気持ちが、どんどん薄まっていくのを感じた。
「…グスッ、……おせっかん」
「なに?」
「……おせっかん、うけます。……だから、…ママを、…ママをたいほするのはやめてください。」
まあやは気をつけの姿勢になり、両手を強く握る。
そして顔を上げ、おねえちゃんにお願いした。
ここに来てからずっと出ている涙は、頬を伝ってこれまでの道をなぞるように落ちていく。
「…仕方ないわね。そこまで言うならお折檻してあげる。…そのままテーブルの上に上がって四つん這いになりなさい。」
「…はい。」
まあやは言われた通りテーブルによじ登ると、お尻を高く突き上げた。
ふとおねえちゃんの方を見ると、部屋の中に干している洗濯物のところから“木ハンガー”を取っていた。
『…まさか、…あれで、……たたかれるの?』
…。
嫌な予想通り、おねえちゃんは木ハンガーをまあやのお尻にペチペチと当てる。
その事実がわかった瞬間、身体はまた小刻みに震え出す。
グッと手を握って次に来るだろう“痛み”に備えた。
「じゃあ反抗的だったし、とりあえず“血が滲む”まで。……いっとくけど、もしお折檻後に泣いてたらまた初めからだからね。」
「…マ、ママァ。」
ビッヂィィンッ!!
「ああ゛ぁぁっ!!ママァッ!!」
ビッヂィィンッ!!
「だずげでっ、ママァァだずげでぇぇっ!!」
「うるさいわよっ!!」
ビヂンッ!ビッヂィィンッ!!
……。
・
ガチャ
「こんばんはっ!すみませんっ!遅くなってしまってっ!!」
「いいえ、いいんですよ。まあやちゃんもちゃんと“いい子”でお留守番してましたし。…帰ったらいっぱい褒めてあげてくださいね。」
「そうだったんですね。…ありがとうございます。」
「いえいえ、ほんとうに……“偉かった”んですよ。」
「ママ、…おうち、いこ?」
「そうね、もうこんな時間だし、…本当に遅くまでありがとうございました。」
「“こちらこそ”、またいつでもお預かりいたしますよ。」
「おねえちゃん、バイバイ。」
「今度はちゃんと“ご挨拶”できて偉いね、まあやちゃん。」
「では、今日はありがとうございました。またいつかお礼させていただきますね。」
・
ガチャンッ
「…う、…う、うわぁぁぁんっ!!!」
「ま、まあやっ!?また“ひどいこと”されたのっ!?」
「ああ゛ぁぁんっ!!……なぐなっでいわれだぁっ!ママがだいぼざれるっでいわれだぁっ!ずっどずっど、おじりただがれでだぁっ!!」
「お尻っ!?…見せてみなさいっ!!」
「いだぁいぃっ!?」
勢いよくまあやのズボンとパンツが下ろされる。
「ご、ごめんなさいまあや…、ってなにこれっ!?」
ママは青い顔になりながらまあやのお尻を見つめていた。
……この、“血だらけ”になったお尻を。
「…もういやだぁぁぁっ!?」
……。
・・・
「はあ、今日はずいぶんとやりすぎちゃったわね。」
わたしはテーブルと床に飛び散った血の跡を拭きながら、今日のことを振り返る。
これまで何度か“痣”にしたことはあったが、あそこまでしたことはなかったから。
あれは治るまでしばらくかかるだろう、…たぶん、完治はせず、傷跡が残り続けるだろうけど。
…まあ、どうせ“問題ない”だろう。
……だって、あの母親は“明日も”娘を預けに来るだろうから。
「完」
ママは忙しそうに朝の支度をしている。
“まあや”はキッチンの椅子に座りながらその様子を見ていた。
まあやの目の前にはママの手作りおにぎりが2つ並んでいて、どちらもすごく美味しい。
…でも、“これから”のことを考えると、どうしても憂鬱な気分になってしまう。
「まあや、今日も“お姉さんのところ”でいい子にしててね。」
……やっぱり。
予想通りの言葉をママにかけられ、さらに気分が落ち込んでしまった。
「ママ、…まあや、もう“あそこ”いやなの。…だって、あのおねえちゃん、いつもまあやにひどいことするんだよ?」
「まあや、……ごめんなさい。…他にお願いできる場所がないの。」
ママはまあやの横に屈んで、悲しい顔で見つめてくる。
「ママ、まあやひとりでおるすばんできるよ。…だから、おねえちゃんのところいきたくない。」
「本当にごめんなさい。……国の“決まり”があって、まあやの年だと長い時間1人にすることができないの。」
「……うぅ。」
まあやがぐずると、ママは申し訳なさそうな顔する。
…もう“行くしかない”流れとなり、まあやの目からは涙がひとしずく溢れ出した。
ギュウ
そんなまあやを、ママは優しく抱きしめる。
「グスッ…まあや、……ごめんね。」
……そんな“優しい”ママを、まあやは責めることができなかった。
・
「おはようございます。今日も、……どうか“お手柔らかに”よろしくお願いします。」
「……グスッ。」
おねえちゃんはお隣の部屋に住んでいる。
その玄関ドア前で、ママとまあやは2人並んで立っていた。
正直、ここが“嫌”という気持ちが隠しきれないまあやは、半泣きで俯いている。
「ほらまあや、お姉さんにご挨拶は?」
「……グスッおねえちゃん、…おはようございます。」
「…おはよう。」
その目の前には、まあやが“ぐずる原因”であるおねえちゃんが立っている。
…なんだか今日は少し不機嫌そうな様子だ。
「じゃあまあや、ママはお仕事に行ってくるから、…いい子にしててね?」
「ママァ…。」
まあやは離れたくないとでもいうように、ママにギュウッと抱きつく。
「大丈夫。…すぐ帰ってくるからね。」
「うぅぅ…。」
ママは優しくまあやから離れると、そのまま何度も振り返りながら、エルベーターの方へ向かっていった。
・
ガチャンッ
ママの姿が見えなくなり、まあやはおねえちゃんの部屋に入った。
相変わらず、薄暗いお部屋はまあやに恐怖感を与えてくる。
…同じアパートのお部屋なのに、なんでこんなに違うんだろう。
「まあや、さっきちゃんと挨拶できなかったよね?」
ビクンッ
そんなことを考えていると、こちらへ振り返ったおねえちゃんが、怖い顔で睨みつけてくる。
「お、おねえちゃん、…ちがうのっ!あれは……」
「…はぁ、……まあや、お尻。」
「は、はいぃっ!?」
“お尻”
その命令が聞こえた瞬間、まあやの身体は自然に動き出す。
急ぐように靴下とズボンを脱いで、クマさんの絵が描かれたパンツもズボンの上に脱ぎ捨てた。
今のまあやは下に何も履かず、気をつけの姿勢になっている状況だ。
少なくない時間をここで過ごして、逆らえば“どうなる”か、身体がわかっているから。
…そして、おねえちゃんは“いつものように”まあやを小脇に抱えると手にハァッと息をかけた。
バッヂィィンッ!!
「いっだぁぁいっ!?」
突然、まあやのお尻に突き刺さるような痛みが走る。
その痛みはだんだんとジンジンするものに変わっていった。
…これが、おねえちゃんを嫌いな理由だった。
いつもいつも、ちょっとしたことでまあやに“おせっかん”をする、このおねえちゃんのことが…
「…きらい。」
ギュッ
「いい゛っ!?」
「…いまなんか言った?」
まあやのお尻の今叩かれた部分がつねられる。
その鈍い痛みはまあやの目から涙を溢れさせるには十分だった。
「い、いっでないっ!!」
「そう、ならいいんだけど。」
パッ
ようやく、おねえちゃんの指がまあやのお尻から離れる。
「ハァッ…ハァッ。」
バッヂィィンッ!!
「ぎゃぁぁあっ!!」
まあやが肩で息をしていると、お尻を覆う大きさの平手が打ち付けられる。
1発目とは比べ物にならない痛みに、まあやはガクガクと震え出した。
「じゃあ、挨拶がちゃんと出来なかった“お折檻”、…続きしよっか。」
逃げたくても、がっちり掴まれた状態で動くことができない。
「とりあえず100回、打ち込むからね?」
100回…。
想像したくもない数字だけが頭に浮かぶ。
『ママ…、たすけてぇ……。』
お仕事に行くママの後ろ姿を思い浮かべる頃。
まあやのお尻には、無情な平手が振り下ろされた。
・
「グスッ…うぇぇんっ。おじりいだいぃぃっ。」
「…いつまで泣いてんの?」
あれから宣言通り、まあやのお尻には100回分の平手が振り下ろされた。
…いまは真っ赤に腫れ上がったお尻を押さえて、床の上にうずくまっている状態だ。
「聞いてるの?」
「だ、だってっ!?おじりいっだいんだもんっ!!」
こんなに真っ赤にされて、泣くなという方が無理な話だと思う。
ムカつく気持ちが押されられないまあやは、そのまま覗き込むようにおねえちゃんのことを睨みつけた。
「…まあや、今から泣き止まないことへの“お折檻”するから、こっち来なさい。」
「っ!?なんでそんなことでおせっかんなのっ!!」
「いつまでもグズグズとうるさいからよ。…ほら、はやく来なさい。今度は痣だらけになるまで叩いてあげるから。」
“うるさい”
…いい子でいるようにママに言われたまあやが頑張っておせっかんを受けたのに。
……その言葉がきっかけで、まあやの中にあった“何か”が爆発した気がする。
「もういやだっ!まあやもう“おせっかん”うけないっ!!」
気がついたら、まあやはお尻を庇っておねえちゃんに反抗していた。
でもおねえちゃんは、そんなまあやを悲しい顔で見つめる。
「…そう、じゃあもうあんたの面倒見るのやめるわ。……そしたら、あんたのママが逮捕されることになるわよ。」
「………え?…たいほ?」
「そうよ。ここら辺の保育園は空きがないし、一般の預かり保育は高額だから、あんたのママには頼む余裕がないはずよ。……だから、“無料”で面倒を見てあげるわたしに頼んでいるわけよ。」
「…なんで、ママが逮捕されるの?」
「だから、わたしがあんたの面倒を断れば、ママはあんたをどこにも預けられなくなるわ。…そうすれば、あんたを捨てるか、周りに隠してあんたを一人で留守番させるくらいしか出来なくなるのよ。」
「……。」
「この国には“3時間以上”子供を1人にしてはいけないって法律があるの。……わたしが、あんたが1人で留守番してるのを伝えたら、後は逮捕されて終わりよ。」
「………そんな。」
「……で、どうするの?…“お折檻はもう受けない”なんて生意気なこといってたけど、今すぐお家帰る?」
ママが“たいほ”される。
そう聞かされた瞬間、まあやの中にあった“ムカつく”気持ちが、どんどん薄まっていくのを感じた。
「…グスッ、……おせっかん」
「なに?」
「……おせっかん、うけます。……だから、…ママを、…ママをたいほするのはやめてください。」
まあやは気をつけの姿勢になり、両手を強く握る。
そして顔を上げ、おねえちゃんにお願いした。
ここに来てからずっと出ている涙は、頬を伝ってこれまでの道をなぞるように落ちていく。
「…仕方ないわね。そこまで言うならお折檻してあげる。…そのままテーブルの上に上がって四つん這いになりなさい。」
「…はい。」
まあやは言われた通りテーブルによじ登ると、お尻を高く突き上げた。
ふとおねえちゃんの方を見ると、部屋の中に干している洗濯物のところから“木ハンガー”を取っていた。
『…まさか、…あれで、……たたかれるの?』
…。
嫌な予想通り、おねえちゃんは木ハンガーをまあやのお尻にペチペチと当てる。
その事実がわかった瞬間、身体はまた小刻みに震え出す。
グッと手を握って次に来るだろう“痛み”に備えた。
「じゃあ反抗的だったし、とりあえず“血が滲む”まで。……いっとくけど、もしお折檻後に泣いてたらまた初めからだからね。」
「…マ、ママァ。」
ビッヂィィンッ!!
「ああ゛ぁぁっ!!ママァッ!!」
ビッヂィィンッ!!
「だずげでっ、ママァァだずげでぇぇっ!!」
「うるさいわよっ!!」
ビヂンッ!ビッヂィィンッ!!
……。
・
ガチャ
「こんばんはっ!すみませんっ!遅くなってしまってっ!!」
「いいえ、いいんですよ。まあやちゃんもちゃんと“いい子”でお留守番してましたし。…帰ったらいっぱい褒めてあげてくださいね。」
「そうだったんですね。…ありがとうございます。」
「いえいえ、ほんとうに……“偉かった”んですよ。」
「ママ、…おうち、いこ?」
「そうね、もうこんな時間だし、…本当に遅くまでありがとうございました。」
「“こちらこそ”、またいつでもお預かりいたしますよ。」
「おねえちゃん、バイバイ。」
「今度はちゃんと“ご挨拶”できて偉いね、まあやちゃん。」
「では、今日はありがとうございました。またいつかお礼させていただきますね。」
・
ガチャンッ
「…う、…う、うわぁぁぁんっ!!!」
「ま、まあやっ!?また“ひどいこと”されたのっ!?」
「ああ゛ぁぁんっ!!……なぐなっでいわれだぁっ!ママがだいぼざれるっでいわれだぁっ!ずっどずっど、おじりただがれでだぁっ!!」
「お尻っ!?…見せてみなさいっ!!」
「いだぁいぃっ!?」
勢いよくまあやのズボンとパンツが下ろされる。
「ご、ごめんなさいまあや…、ってなにこれっ!?」
ママは青い顔になりながらまあやのお尻を見つめていた。
……この、“血だらけ”になったお尻を。
「…もういやだぁぁぁっ!?」
……。
・・・
「はあ、今日はずいぶんとやりすぎちゃったわね。」
わたしはテーブルと床に飛び散った血の跡を拭きながら、今日のことを振り返る。
これまで何度か“痣”にしたことはあったが、あそこまでしたことはなかったから。
あれは治るまでしばらくかかるだろう、…たぶん、完治はせず、傷跡が残り続けるだろうけど。
…まあ、どうせ“問題ない”だろう。
……だって、あの母親は“明日も”娘を預けに来るだろうから。
「完」
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