“やさしい”お仕置き

ロアケーキ

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ある夏の“日常”

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「はぁ、あつい…。」

今日は“猛暑”と呼ばれる日だ。

わたしは仕事が終わり汗を流しながら、駅からの道のりを歩いている。

『あぁ…。帰ったらシャワー浴びて、ビール飲んで寝たい。…あと、“あれ”もしなきゃね。』

最近増えた“楽しみ”に想いを馳せ、目的地に行くためにハイヒールを鳴らすのだった。



「…ただいま。」

「おかえりなさいっ、お母さまっ!」

玄関のドアを開けると、“娘”がトコトコと出迎えに来てくれた。

そして、わたしに“満面の笑み”をくれる。

…だが、わたしはその笑顔に応えることなく、その横を“素通り”した。

その足でリビングに着くと、“ドサッ”とソファになだれ込む。

湿って窮屈なストッキングを脱ぎ捨てると、“帰ってきた”という開放感に包まれるのだ。

そのストッキングは“娘”が拾い、洗濯かごに持っていくところだった。

「お母さま、おしごと疲れたでしょ?…ねえ、あやかにお仕置きして?」

洗面所から戻って早々、わたしにそんなことをお願いしてくる。

きっと一般家庭ではまず聞くことがない会話であろう。

…だが、“うち”は違う。

「いいよ。じゃあお尻出してこっちきて?」

「うんっ!」

“お仕置き”だというのに表情を崩さず、むしろ嬉しそうな返事が返ってくる。

そしてスカートとパンツを脱ぐと、そのまま 畳んで置いた。

「“お母さん”のお膝の上、好きぃ。」

「どうして?」

「だって、お母さんといっぱい“お話し”できるからっ!」

“あやか”はわたしの膝の上に腹ばいになると、スカートを掴んで“笑顔”を見せてくれる。

そう。…この時間は唯一、わたしとあやかが“会話”をする時間だ。

わたしは基本的に、お仕置きの時以外であやかと会話することがない。

…だって、興味がないから。

そして、それを理解しているあやかは、特に悪いことをしていなくても、お仕置きを“おねだり”しに来る。

お仕置きという形でも、“わたしの愛”をもらうため、毎日必死にお願いするのだ。

「…じゃあ、はじめるわよ?」

「うんっ!」



パンッ!

「いたっ!…ねえ、お母さんっ!」

「なに?」

バヂンッ!

「い゛っ!今日は給食で好きなの出たんだよ。」

「そう。何が出たの?」

パァンッ!

「んっ!…えーとね、ハンバーグッ!」

「よかったわね。じゃあ、今度うちでも作ってあげるわ。」

バヂッ!

「あんっ!…やったぁっ!お母さん大好きぃっ!!」

バヂンッ!

あやかの白かったお尻が赤く染まっていく。

『あぁ、…楽しい。』

この染め上げていく様子が、普段感じるストレスを薄めていく感覚だった。

「あとねっ!あとねっ!」

パァンッ!

「んっ!今日お風呂一緒にはいろぅ?」

「嫌よ。」

バッヂィィンッ!!

「ああ゛ぁっ!!…グスッ、そ、そんなぁ。」

ピタッ

「……お仕置きもやめる?」

「や、やめないっ!?…わがままいってごめんなさいっ!」

「そう、じゃあ次は“ここ”叩くからね。」

そう言ってわたしは、“ピタピタ”と右太ももに手を当てる。

「は、はいっ!続き、お願いしますっ!」

バッヂィィンッ!!

「きゃぁぁっ!!」

…そして、“警告”として少し強めに、太ももを叩きつけるのだった。



「ほら、もういいよ。」

わたしの“気”がすみ、だいぶ染め上がったころ、あやかに声をかける。

「…グスッ、お母さん。次はお道具も使って。」

だが、あやかはまだ“話し足りない”のか、お仕置きの続行をねだってくる。

「今日はもうおしまいでいいよ。」

「お願いっ!使ってもっとお仕置きしてっ!」

「…はぁ。じゃあ、どのお道具がいいの?」

「いろんなお道具がいい。いっぱいペンペンしてもらえるから。」

「…疲れたから、一種類だけにしなさい。」

「うぅ…。……じゃあ、靴べらがいい。出来るだけいっぱいペンペンしてっ!」

「なら、玄関から持ってきて、テーブルへ腹這いになりなさい。」

「はいっ!」

そういうと、あやかは起き上がり、“ぎこちなく”玄関へ走り出す。

…お尻の赤みがその“歩み”を邪魔するように。

そして戻ってくると、“満面の笑み”で手に持った靴べらをわたしへ差し出した。

「はいっ、お母さん。持ってきたよ。」

「ありがと。じゃあ、腹這いになりなさい。」

「うんっ!」

素直な“この子”は、言われた通りの姿勢となる。

…すでにお尻は真っ赤の状態だ。所々に青紫色の痣まである。
痛くないわけがない。

それでもこの子は、わたしに“精一杯の笑顔”をくれるのだ。

……こんなお尻にしてしまったわたしへ。

「叩くのは“お尻だけ”でいいの?」

「ううん。太ももとふくろはぎも叩いて。その方が時間長くなるしっ!」

「いいけど。…後悔するわよ?」

「大丈夫っ!」

「…そう。」

わたしは鋭い視線であやかのお尻を睨み、靴べらを振り上げる。

ビッヂィィンッ!!

「いっだぁぁいっ!?」

そして、1発で青痣が浮かぶ勢いで、そのお尻へ叩きつけた。

その痛みの中でもあやかは姿勢を崩さず、身体を震わせながら必死に耐えている。

「はぁ、はあ…。」

「やっぱりもうやめる?…次からもずっとこの痛さよ。」

正直、わたしのストレスは平手のみで発散できてしまっていた。

…だから、わたしにとってここからは、ただ“痛めつけるだけ”の時間だ。

まあ、その中でも話しかけてこれるなら、“会話”をしようと思うが。

「うぅ…。いっだいぃ…。」

ペンッペンッ

「どうするの?…やめるんならわたし、もうお風呂入るけど?」

あえて“痛がっている”部分に靴べらを当て、催促をする。

「…グスッ。……続けて。」

「…え?」

「まだ、続けてほしいの。…お母さんともっとお話ししたいから。」

ジトッと汗がしたたる顔で“笑顔”を作り、わたしへ答える。

予想外の回答にわたしの手が止まる。

『どうして、そこまでして…?』

到底理解できない現状に、少し戸惑いを覚えていた。

「お母さん、お願い。」

「……わかったわ。早く前を向きなさい。」

「やったぁっ!ありがとうっ!!」

あやかは嬉しそうに顔を戻し、手をグッと握りしめていた。

わたしはその下、“ふくろはぎ”へ狙いを定める。

ビッヂィィンッ!!

「ああ゛ぁぁぁぁっ!!」

部屋中に鳴り響く“痛々しい”悲鳴が、現状の惨さを伝えていた。

左足のふくろはぎには、“靴べら型”の青黒い痣が浮かび上がっている。

「はぁ…はあ。おがあさんっ!あやか、今日体育で先生に褒められたんだよっ!」

ビッヂィィンッ!!

「いぎゃぁぁぁっ!!」

「どうして?」

「ヒック…グスッ、あのね、100メートルぞうでね、いぢいとったの。…あやかちゃんは足がはやいねっで。」

ビッヂィィンッ!!

「いっだぁぁいっ!!」

「すごいじゃない。確かそろそろ運動会だったわよね?」

「う゛ん。」

ビッヂィィンッ!!

「ぎいぃぃぃっ!!」

「…じゃあ、今年はわたし見に行こうかしら。」

「ほ、ほんとうっ!?」

「えぇ、ほんとうよ。」

ビッヂィィンッ!!

「ああ゛ぁぁぁぁっ!!……グスッ、やったぁ。」

わたしはその褒められた足を“痛みつけ”ながら、運動会に行く約束をする。

そんな中でも、あやかは“笑顔”を浮かべ、涙を流していた。



そんな“会話”が10分くらい続き、わたしの腕は疲れてしまった。

あやかの下半身も、腫れや内出血、痣が覆い尽くし、目を当てられないほどになっている。

「そろそろいいかしらね。」

「…もっとお仕置きしてください。お話しもっとしたいのっ!お願いしますっ!!」

「もう、今日はおしまいよ。…また明日ね。」

わたしはそういうと、靴べらをテーブルに置き、服を脱ぎ始める。

それは、“お仕置き終了”の合図で、暑いからお風呂に行く流れだ。

まあ、服は脱衣所で脱いでもいいのだが、特に気にならないので、いつもここで脱いでいる。

「…うん。やさしい“お母さま”、大好きっ!……また、明日。」

お仕置きが終わり、あやかは自分の部屋に戻ろうとする。

「…ねえ、あやか。……今日一緒にお風呂入らない?」

「…えっ!?いいのっ!!」

一瞬キョトンとした表情が、花が咲き開くような“笑顔”に変わる。

「いいわよ。わたしもお風呂で“お話し”したいし。」

「うんっ!いっぱいお話ししよっ!!」

「じゃあ先に行って服を脱いでて。」

「わかったっ!!」

あやかはわたしの脱いだ服を持って脱衣所へと向かう。

その“痛々しい”後ろ姿を見ながら、わたしもその後に続いた。

…まあ、わたしの気持ちが変わったのは単純な話だ。

……だって、お風呂場でもっと、走る“足”を痛めつけられるから。


「完」
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